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物思い 10
しおりを挟む「美咲…」
ん?と顔を上げると、唇が重なった。
「俺、絶対美咲を守るから」
「うん」
「だから、俺の側にいる事を、躊躇わないで欲しい」
脅されるか何か、相当キツいことを言われたのだろうか。私から離れるという考えは抱いたことは無いし、そんな素振りを悠さんに見せたことは無いと思うのだけど。東京での出来事は、あれはしんどかったけど。
「悠さん、私たちはずっと一緒、でしょ?」
「ああ、一緒だ」
私からも唇を重ねると後頭部を大きな手で固定された。彼の舌が侵入し、隅から隅まで咥内をなぞられ、息が荒くなった。
「死ぬまで、いや、死んでも一緒だ。俺と美咲を引き離すなんて、誰にもさせない」
真剣な表情で、眼のずっと奥までもじっくり見つめられている、そんな感覚がした。言葉から察するに、私と別れることを要求されたのだろう。それも、かなり執拗に。
悠さんの独占欲の強さは、こっちのお母さん譲りだろうか。自分の通したい要求が通るまでお母さんは譲らないみたいだ。でも悠さんも譲らない。このままずっと、平行線のままなのだろうか。色々あったとはいえ、悠さんに取ってはお母さんであることは変わらない。そのお母さんと、ずっと意見が合わないということは、辛い事だろう。それを思うと、私が身を引いた方がいいのだろうか。さっき側にいる事を躊躇うなと言われたばかりなのに、私の脳裏には身を引くことが浮かんでしまうなんて。それこそ悠さんは望んでいないのに。
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