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物思い 5
しおりを挟む『それ、きっつ…。で、家の中入れちゃったの?』
『ううん、彼に電話して、彼からお母さんに電話してもらって何とか事なきを得たんだけど…』
『美咲だけで動かない方がいいと思う。彼の方が彼の実家やそのお母さんについてよく分かってるんだろうし』
『彼にも言われた。でも、じっとしていられなくて』
『そこは我慢よ、美咲。何とかしたい気持ちは分かるけど、丸腰で戦える相手じゃないと思うよ』
『戦うって…』
『一筋縄ではいかないから今こうして悩んでるんでしょ?一般的な彼母よりだいぶ難攻不落じゃん?私だったら様子見かな』
『やっぱり様子見しかできないか。ありがとう。暫く様子見てみる』
『それがいいと思うよ』
仕事とはいえ、現在進行形で愛人さんと対峙しているすみれの言葉は説得力がある。一人で突っ走ってしまいそうだったけど、やはりここは悠さんに任せるしかない。無力だけど、私に出来ることはそれだけなのだから。
「結城先生?なんか難しい顔してんね」
鈴木先生が首を傾げて私の顔を覗き込んでいた。
「わっ…あ、何か、すいません…」
いかんいかん、仕事中だった。子ども達が下校して、職員室で家庭科の練習布を作成していた。どうしても悠さんのお母さんの問題が頭に浮かんで、手を止めてそのまま考え込んでしまっていたらしい。
「何か困ってる?」
「困ってるというか…その…」
「彼氏のこと?」
「彼氏、ではなく…」
「別のこと?仕事で何か困った?」
私が悩みを打ち明けるまでこのやり取りは終わらないみたいだ。隣の席だから席を立ったところで意味が無い。
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