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覚悟 9
しおりを挟む「独占欲がヤバめであること以外は、何かあるの?」
「その…」悠さんの秘密は、大きな声では言えない。誰にも話した事無いと言っていた。悠さんの極めてプライベートな事を、私が勝手に言っていいとは思えない。
「彼の実家の、家庭事情が…複雑なの」
声を潜めて、何となく頭を低くして話す。
「家庭事情が複雑…まあ、私達の職種だと、割と免疫ついてはいると思うけど。それでもしんどいレベル?」
「うん…。言える範囲で言うとね、彼、とある製薬会社の社長の息子で」
「え、何それ。美咲、玉の輿?えっと、御曹司ってやつ?よく柿山に御曹司が落っこちてたね」
声を小さくしながらも、すみれは今までで一番驚いた顔をしていた。
「うん。山奥なのにね」
山奥と御曹司。思えば、とんでもなくミスマッチだ。
「ってことは。美咲、社長夫人になっちゃうの?」
「そうでも無いの。会社はお兄さんが継ぐから、私が社長夫人になることは無いの。でも、将来的にはそれなりの仕事を任されるかもしれない」
「ふうん。特に悪い話じゃないじゃん」
「複雑なのは、会社絡みもあるんだけど、その、家庭が…」
「社長に愛人がいるとか?」
ジンジャーエールを吹き出す直前で、何とか堪えた。
「えっ、ちょっ…。その、彼の極めてプライベートな事だから、はっきりと言うわけにはいかないんだけど…」
「わかった、察するだけにしておくわ。私ね、今年度担任している子の家庭で似たパターンがあって」
すみれは更に声を落とし、小声で教えてくれた。
「愛人の息子がいるのよ。で、その愛人はとんでもないクレームモンスターで。対応が結構大変なの」
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