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対面 5
しおりを挟む「美咲ちゃんは小学校の先生だっけ?ゴッホの池に観光にでも行ってたの?」
隼さんはコーヒーに口を付けて私に話題を振った。
「いえ、ゴッホの池の近くの、柿山小で勤務しているんです」
「ふうん…。柿山だなんてど田舎に行くって悠が言い出した時は、こいつよっぽど結婚したくねえんだなって思ってたけど」
「え?」
動揺した私は、悠さんの顔を見た。
「兄貴、喋りすぎだろ」
悠さんが低い声で口を挟んだ。
「まあ、昔の話じゃん。柿山に行く前、悠にはお見合い話が幾つかあったんだ。仕事絡みのご令嬢とね。でも悠はお見合い相手の写真すら見ないで、柿山研究所への異動を志願したんだ」
「その数々のお見合い話には、和佳子さんも絡んでましたわね」
涼しい顔してクッキーを口にするお母さまの言葉に、お父さまの表情が硬くなった。
「色々と騒がしかったんだよ。柿山まで行けば、どんなご令嬢でも田舎過ぎて嫌がってくれるだろ?研究にも集中できて一石二鳥だったんだよ」
あんまり聞かせたくなかったんだけど、と付け加えた悠さんは、ばつが悪そうにしていた。
「和佳子さんの息のかかって無い方なら、私は賛成よ。何より、我が家のことを知らずに、悠自身を見て気に入ってくれたのよ。幸せにならないはずがないわ」
柿山に来る前の悠さんの周りにいた女性は、黒瀬家も含めて悠さんを見ていた人が多かったのだろうか?出会った当初の、あの塩対応にはそんな理由があったのかもしれない。
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