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対面 4
しおりを挟むああ、面接みたい。いや、これは紛うことなく面接だ。それも、人生最大の。
「悠は、その…あれだ。我が家の家庭事情は、聞いたかい?」
「はい、悠さんから伺っております」
視線を真っ直ぐに向けられ、黒目までじっと見つめられている気がする。権力者特有のものかもしれないけど、悠さんと付き合い始める前後にも、彼から同じ視線を受けたことがある。お父さん譲りの仕草なのだろうか。
「それなら話は早い。会社は悠の兄の隼が継ぐことも聞いているかい?」
「はい」
斜向かいのソファに座った、悠さんによく似た方が、お兄さんの隼さんなのだろう。目が合い、会釈をした。
「悠と結婚しても社長夫人にはなれないが、それでも良いのかい?」
「えっと…?社長夫人になる気は全くありませんが…」
私がポカンとしていると、悠さんが会話に割って入った。
「美咲は、この家のことを知らずに俺を好きになってくれたんだ。彼女は地位とか権力とか、気にしない人なんだ」
お父さまが微かに目を見開いた。
「そうなのか?」
「はい。出会った当初、私は悠さんを、お花屋さんだと思ってましたから」
「花屋?」
「ゴッホの池の、イケメン店員ってやつ?」
隼さんがスマホにネット記事を表示させ、お父さまに見せた。いつか白井先生が見せてくれていた、悠さんの顔写真が載っていた、あの記事だ。
「この無愛想な悠がおばさん旅行客相手に花屋に駆り出されてるなんてな」
隼さんは笑いを堪える気は無いようで、くっくっと笑うと、悠さんは不機嫌そうにそっぽを向いた。
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