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約束 12
しおりを挟む「今…一緒に暮らしているらしいな」
悠さんの目を強く見つめ、ついに父が口火を切った。悠さんもその質問は想定内であったようで、姿勢を崩さない。
「本来なら、一緒に暮らす許可を頂いてから、というのが筋だと理解おります。しかし、美咲さんが襲われてすぐであった為、やむを得ないと思っておりました」
「美咲を助けてくれたのは、礼を言う。だが、事件は昨日今日ではないだろう。一言ぐらいあっても良かったんじゃないか?」
目を逸らして煙草に火をつける父。煙草の煙が部屋に広がっても、悠さんの背筋は綺麗なままだった。
「美咲さんがずっと一緒に暮らしてくれるか…願望はありましたが、自信がありませんでした。しかし、事件が解決し、美咲さんが僕の家を出ると決めたと言われた時、僕はもう美咲さん無しでは生きられないと気付きました。それならば、美咲さんに申し込むべきは同棲ではなく結婚だと思いました。ですので、同棲ではなく、結婚のお許しを頂きたく、今日参ったところなのです」
沈黙に包まれる。壁の時計の秒針の音だけが部屋に響いていた。
「…わかった。結婚、すればいい」
聞き取れるかどうか、ぎりぎりの小さな声で父はぼそりと呟いた。
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