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約束 11
しおりを挟む「おかえり」
実家に着くと、母が出迎えてくれた。
「ただいま。こちら、黒瀬悠さん」
「初めまして。黒瀬悠と申します」
さっきまでの緊張は一体どこに行ってしまったのだろうか?いつもの堂々とした、男らしい彼に戻っていた。
「お話は伺ってましたよ。美咲を助けてくださったそうで、ありがとうございます。さ、上がってください」
実物を目の前にして、先日とは態度がすっかり変わった母に苦笑いしながらリビングに向かった。そういえば、悠さんはマダムの扱いはお手の物だということを今思い出した。ほぼ毎日花屋で観光客の相手をしているのだから当然といえば当然だった。
しかし…。父が全く口を開こうとしない。
さっきからずっと、母と私、悠の3人で話している。この場を進行しているのはほとんど母だ。
話の流れが切れたその一瞬を捉えて、悠さんは告げた。
「今日は、美咲さんとの結婚のお許しを頂きたく参りました」
父の視線が悠さんに注がれた。
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