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約束 10
しおりを挟む悠さんの車で、実家に向かう。車に乗り込んでから、彼はずっと無口だ。心ここに在らず、という言葉どおりで、だいぶ緊張しているのがよくわかる。思えば、悠さんの緊張している姿は初めて見るかもしれない。
「悠さん…」
「ん?」
「大丈夫、ですか?」
「ん?何が?」
「その…緊張してるみたいだから」
「ああ…」
さっきからずっとこの調子だ。同じ会話を何度もしている。いつも安全運転だけど、緊張のせいか更に安全運転だ。
「あっ…」
「どうしました?」
「菓子折りとか…あった方が良かった?」
「無くていいですよ。父は酒飲みだから甘いものは好まないんです」
「でもお母さんは食べるだろ?どこかで買って行こうか…」
赤信号で停車し、難しい顔をした彼は周りにお菓子屋さんが無いかきょろきょろと周りを見た。
「大丈夫ですって。ほら、信号青ですよ」
落ち着かない表情のまま、車を発進させる。私の目に映る悠さんは、いつも余裕の表情だ。だけど今日は色んな表情が見られる。余裕無く緊張している彼をこんなに愛しく感じるなんて。こんなこと言ったらまたお仕置きされるんだろうな。
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