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疼き 7
しおりを挟む「成人直前で親権も何もあったもんじゃないんだけどな。俺との面会を何度も要求してきたらしい。黒瀬の母が何度か断ってたみたいなんだけど、たまたま俺の帰宅と母親の訪問が重なってさ。そこで再会した」
それは、良い再会だったのだろうか…?
「会ってすぐに、黒瀬の母が断ってた理由を悟ったよ。母親は俺に、金の無心に来てたんだ」
痛い。聞いてるだけで心が痛過ぎる。
「その時は黒瀬の兄が何とか追い返してくれた。でも俺は…産みの母親だし、母性みたいなものを期待してしまって、何度か会った。スマホの番号を知ってるのはその当時教えたからだ。でも、何度会っても俺の期待は裏切られた」
辛くて痛い話を紡ぐ彼の顔は、だんだんと無表情になっていた。淡々と語らないと、やってられないのだろう。
「まあ、そんなとこ。もう31だし、割り切って考えないとやっていけない。よくある話…って言えればいいんだけどな。美咲の表情を見るに、そうじゃ無さそうだな」
無理に笑顔を作ろうと試みる彼を、可能な限り強い力で抱き締めた。強くない腕力が口惜しい。
顔を上げて、傷を吐き出したばかりの彼に唇に口付けた。
「…話してくれて、ありがとう。何て言うのが適切なのか…わかんないけど…。でも、話してくれたの、すごく嬉しいです」
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