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雷声 6
しおりを挟む血相を変えた悠さんが叔母の家にやって来るのに、20分もかからなかった。
「美咲!」
叔母への挨拶もそこそこに、彼は私を抱き締めた。
「ごめんな…俺が部屋の前まで送ってれば…」
苦し気に絞り出すように言葉を紡ぐ彼は、私を抱き締める腕に力を込めた。
「あの…結城さんの恋人の方、でよろしいですか?」
男性の警察官が悠さんに声を掛ける。
「はい。黒瀬悠です」
「状況はご覧の通りです。結城さんの身の安全の為に、住む場所を変えた方が良いという提案をしております。黒瀬さんのお住まいは加害者に知られていますか?」
「知らないはずです」
「確実ですか?結城さん」
「はい」
「では、黒瀬さん、貴方の家に結城さんがしばらく身を隠す、ということは可能でしょうか?」
「可能です。必ず、守ります」
そこにいる一同が安堵の息を零した。
「黒瀬さん、念の為ご住所を教えていただけますか?」
悠さんが警察官のノートに住所を記す。
「こちらのお住まいの近辺のパトロールも強化しますね。では、今日はこれで失礼します。結城美香子さん、貴方にも加害者からの接触があるかもしれない。美咲さんがここからいなくなった場合の唯一の手がかりになるかもしれませんからね。十分な警戒をお願いします。何かありましたら、迷わず通報してくださいね」
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