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飛湍 12
しおりを挟む悠さんを起こさないように、そっとベッドを出ようとした。
手首を掴まれる。
「どこ行くの?」
暗闇の中で悠さんと目が合った。
「起こして、すみません」
真っ直ぐに見つめられ、目を逸らすことを許されない。逃げるつもりはないのに逃げたくなる。
「どこ行くの?美咲」
私の手首を掴んだまま、彼は離そうとしない。
「服…着ようと思って」
「まだこのままでいいだろ?」
手首を引っ張られ、悠さんの腕の中に戻ってしまった。
「悠さん、私…」
泣きそうなのを我慢して鼻声になってしまう。
「ずっと抱き締めていないと、朝になる前に消えてしまいそうだな」
「あの、私…」
「消えないでくれよ。俺に朝食、作ってくれるんだろ?」
「私、ちょっと、混乱してて」
「後悔してんの?」
腕に力が込められる。振り絞るような声に、胸の奥が苦しくなる。
「俺、謝らないよ。美咲が好きだ。好きなんだよ。大事にするから。だから…」
「後悔は、してません。でも、自分がどうするべきなのか、わからないんです」
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