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飛湍 4
しおりを挟む「冗談ですよ。あと30分ぐらいしたら、タクシー呼びますね」
くすくす笑ってスマホでタクシー会社の電話番号を検索する。
不意にスマホを奪われる。
「悠さん?……んっ!」
悠さんの顔を見上げたら唇が重なった。
後頭部を彼の掌で固定され、逃げられない。何度も角度を変えて、唇の柔らかさを味わうように、食むように口づけが繰り返される。私の口も、自然に動いて応えてしまう。脳の奥が、とけてしまいそうで。このまま続いたら意識を失いそうだ。
彼の胸をそっと押すと、ようやく口づけが止んだ。
「俺じゃ…駄目か?」
肩で息する私を、目の奥まで、心の奥まで覗き込んでいるように感じるのは気のせいではないのかもしれない。
「わかんない、です。まだ別れて日が経っていないので…」
「あいつのこと、まだ好きなのか?」
「もう気持ちはありません。冷めるどころか、今日の桜汰には恐怖さえ感じたし」
「…だったら、俺に守らせてよ」
「守る…?」
「怖いんだろ?アポ無しで家の前で待ち伏せなんて、正気の沙汰じゃない。ストーカー化して、何かあってからじゃ遅いだろ」
ストーカー化…今日の桜汰の様子なら、あり得なくは無い。
「一人で帰らせる訳にはいかない。どうしても、というなら俺がマンションのドアを開けて部屋に入るまで見届ける。じゃないと俺は心配で今夜は眠れそうにない」
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