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飛湍(ひたん) 1
しおりを挟むあの修羅場を最後に、別れたはずの桜汰は薄ら笑いを浮かべて私に近付いてきた。
「何この男。美咲だって他の男と手、繋いでんじゃん」
強引に私の左腕を掴む。
「桜汰、痛い。離して」
「離さないよ。俺、優しいから許してやるよ。美咲が俺じゃない男と手を繋ぐのは、これで最後。これでおあいこ。戻ろうぜ、俺達」
「戻りません。私は桜汰と別れたの。だから、誰と手を繋いでいたって、桜汰には関係ないでしょう?」
「俺は別れたつもり、無い」
「離せよ。嫌がってるだろ」
悠さんが私と桜汰の間に入る。桜汰が渋々私の腕を離すと吐き捨てるように言った。
「あんた、関係ないだろ。これは美咲と俺の問題なの。間男に出る幕なんか無いの」
「あれだけ美咲を傷つけたくせに、まだ彼氏面するわけ?」
一触即発。今のこの状況は、その言葉がよく似合う。
そんな呑気なこと言ってる場合じゃない。
「悠さん、相手にしなくていいですから…」
私を背に守るように桜汰に対峙する彼と私の手は、まだ繋がれていた。
「浮気相手が思ったより残念だった?それとも二股がバレて逃げられた?美咲がいい女だったって今更気付いて、もう一度付き合えるとか考えるなんて図々しいんだよ」
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