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草萌え 6
しおりを挟む「悠さん…?」
目を見開いたままの彼に首を傾げて再度問うと、彼はやっと我に返って目を逸らした。
「エプロン…」
「…え?」
「いや…似合うな、と思って…」
エプロン姿を褒めてもらえるとは思っておらず、今度は私が固まってしまう。スカートが皺だらけだったからエプロンで隠したという、それだけの理由で身に付けていたものだった。
「えっと…」
「ご飯、出来たんだろ?早く食べよう」
部屋に入って振り向きざまに爽やかな笑顔を向けられる。朝陽を浴びたイケメンが私に笑いかけているという事実に動揺する。
…私、昨日最悪な別れ方をしたばかりなんだけど。
「朝ごはん、作ってもらえるっていいな」
トーストを齧ってコーヒーを飲んでるだけなのに悠さんは絵になる。
「…簡単なもの、ですけど」
「作ってもらえるっていうのが大事なの。自分で作って一人で食べてるって味気ないじゃん?」
「そう、ですね…」
一人暮らしの経験も無く、美香子叔母さんの家に居候中の身の私には、自分で作って一人で食べるという経験が無い。
柿山小での勤務の話が来た際、「非常勤ではなく、常勤での勤務はどうか」という話があった。その話がまだ生きているなら、常勤を希望して一人暮らしをするのもいいかもしれない。
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