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小濁り 4
しおりを挟む「んっ…佐川…くん……はあっ…んんっ!」
佐川は桜汰の名字だ。
家を間違えたのだと思いたかった。
でも鍵は開いたし桜汰の靴はあったし桜汰の名字を呼ぶ艶かしい声。
息が、苦しい…。上手く、息が、出来ない…。
逃げたい!すごく、逃げたい…。
でも…逃げちゃダメな気がする。
このまま現場を押さえずに泣きながら帰るのは、惨めだ。それは悔しい。
だったらせめて。
引っ掻き回すのみ!
ガラッ!
出来るだけ大きな音を立ててドアを開けた。
湿気と体臭が混ざった臭いがする。
そこには醜い生き物が裸で絡み合っていた。
そう、醜い。
ただただ、醜い。
この醜い生き物が、私の彼氏だと思ってた人、桜汰だ。
私の、好きだった人だ。…多分。
醜い男がこちらを向いた。
醜い女もこちらを向いた。
「美咲…なんで…?」
桜汰の掠れた声が薄暗い寝室に響いた。
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