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東風 12
しおりを挟む視界が反転する。
捕まるところが無い。
全身に来るであろう衝撃に備えて目をぎゅっと瞑った。
…あれ?
いつまで経っても来ない衝撃に疑問を持った。
代わりに、汗と煙草とシトラスの混ざった香りに包まれていることに気付いた。
えっ?私、バランス崩れて倒れたんじゃ…?
「…あっぶねぇな」
耳に心地良い低音が私の鼓膜を揺らす。
「大丈夫か?」
見上げると悠さんの端正な顔が至近距離にあった。
「は…はいっ!ありがとうございます」
逞しい腕に包まれているという事実に気付き、慌てて反対側に体を離す。
更にバランスを崩してまた倒れそうになるのを、また悠さんの腕が阻止した。
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