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第一章 空の世界
第十二話 行ってきます
しおりを挟む数週間後、
結果を聞きに、リナはユリと会場に来ていた、
タケは仕事のため、どうしても来られなかった。
結果発表の様子は
毎年テレビで中継されていたので、知っている。
広い講堂の様な場所に、
椅子がいくつか並べられていて
立候補者は順番に座る、
そして名前を呼ばれるのを待つ。
選ばれた人は
その後テレビや雑誌のインタビューを受けていた。
確か去年は…
立候補者は5人ぐらいだったかな…?
今年は何人ぐらいだろう、
タケに聞いた時点では、まだ立候補者は0だったけど、
あれから増えたのだろうか…。
「じゃあ…リナ、行ってきなさい
お母さんは外で待ってるから」
「うん、行ってくるね」
リナを見送るユリの表情は硬かった
リナが選ばれたらどうしようかと不安なのだろう、
一方でリナは余裕の表情をしている、
選ばれるはず無いだろうと思っていたからだ、
数人の立候補者の中にいる子供のリナを
選ぶ理由が無い、
どう考えたってある程度人生経験のある大人を選ぶだろう、
でも別にリナはそれで良かった、
選ばれなくったっていい、
両親のために何かしている自分に
酔いたかったのかもしれない。
「失礼します……」
リナは、そっと扉を開いた、
今までのテレビ中継で見たように
きっと会場には、椅子がいくつか並んでいて、
立候補者が座っていて………………、
「………えっ……?」
会場の中には椅子が無かった、
代わりに沢山のテレビや雑誌の記者がリナを見ている、
沢山のレンズが一斉にリナの方を向いた。
「あなたが最年少の立候補者ですか!?」
「立候補した気持ちをお聞かせください!」
「参加者に選ばれた、今の心境は!?」
「作戦について、何か考えがあるんですか!?」
リナは頭が真っ白になった、
沢山の記者に囲まれても何も言えない。
というか、何?
参加者に選ばれた…?
どういうこと!?
私に決まったの?
他の人は?
今までの中継で見たような
椅子に座って名前を呼ばれて…みたいなのは無いの?
「え…待ってください
私に決まったんですか?
他の立候補者は……………」
「今年は、あなた1人だったんです、
なので、おめでとうございます、
あなたに決まったんですよ!」
「さ、ここは薄暗いですから
外に出て、取材用の写真を撮りましょう!」
リナは言われるがままに外へ出された、
まだ何も頭がついていっていない、
私が選ばれた?
決定しちゃったの!?
私しかいなかった!?
あれから立候補者増えてなかったの!?
講堂から出て、
リナは廊下に立たされ
写真を沢山撮られた、
ちらっと人混みの方を見ると
泣いてるユリとタケを見つけてしまった、
それを見た瞬間
リナも泣きそうになった。
"やっぱり嫌です!"
"参加したくない!"
"お父さんお母さん!助けて!
行きたくないよ"
そう叫んでしまいたかった、
でももうすでに中継でリナの様子はテレビで放送されてしまっている、
こんな状況でやめますなんて言ったら
どうなるだろう、
もしも許されず
嫌だ嫌だと泣いたまま、人間界に送られる事になったら
きっとユリもタケも悲しむ
なんとしてでも止めればよかったと後悔し続けるだろう。
「絶対に作戦を成功させて、
ここに帰ってきます!
お母さん、お父さん、行ってきます!
待っててね!」
リナは必死に涙をこらえ、
笑顔でカメラに向かってそう言った。
もう行くしかない、
選ばれたからにはやるしかない、
自分の発言に責任を持つんだ、
軽い気持ちで立候補なんてするんじゃなかったと後悔したが、
ちゃんと作戦を成功させて、
こんな後悔無くしてしまおう。
そこから、リナが涙ぐむ事はもう無かった。
取材取材の連続で
時はあっという間に過ぎて行く、
気づけばもう、
リナの出発の日になっていた。
家族や友人の見送りは許されない、
人間界に降りるためのこの空間は、
許された者しか入れない、
リナは、孤独な気持ちで人間界に1人で降りた、
でも泣かなかった、
絶対成功させるんだ、
人間界に降りながら
リナは再び決意を固めた。
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