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番外編集【BL含む】
1 グラとウィルの場合
しおりを挟む【これもBLです】
※ グリグラのグラと、アルさんのお兄さん夫婦、イザベラさんの息子(本編には出てきません)の来世のお話しです。
『ウィル、約束よ、生まれ変わったら、私は必ず貴方を見つけるわ、だから、貴方も必ず私を見つけて……その時は私が貴方を〇〇〇〇〇〇わ、覚悟してね』
『……グラ、生まれ変わったら、僕の方が強いかもしれないよ、そうすれば、今度は僕がグラを護るよ、約束だ』
美しいシルバーブロンドの髪にダークブルーの瞳をした女性、名前はグラエァリア・ヴィオラ・グレンツェン。
俺の前世の記憶に必ずと言っていいほどにどの場面でも登場する女騎士だ。
俺は前世、ウィルフレッド・ジョゼフ・カイン・ドラリトアと言う名前で、ドラリトア竜王国の国王をしていた。
それは、魔法や竜が存在する、ファンタジーな世界。
グラエァリアは、そんな俺を専属近衛騎士として、ずっと側で護ってくれていた。
グラエァリアことグラは、幼い頃からの友人でもあった。
出身はドランファリーナという海底都市だが、グラの母親が前世の俺の叔父の奥さんだった。
記憶の中の前世の世界では、一妻多夫婚が認められていたため、グラの父親は俺の叔父ではない。つまり、俺とグラは一切血の繋がりはないのだ。
そして、それはまさに、一目惚れ。
両親から初めてグラを紹介された時、自分がその瞬間に彼女に恋に落ちた事がハッキリとわかった。その場にはグラの双子の姉もいたのだが、それでも俺の心はグラにだけ捕らえられた。
しかし、俺が何度グラに気持ちを伝えても、一切相手にしてもらえなかった。それどころか、勉強に剣術、魔法、何をやってもグラには敵わない……結局俺は女の子に護られてしまう王太子となる。
グラは竜の血を濃く引いており、特別な存在だったのだ。
魔力量が多く、特殊なチカラを持つ黄金竜の血。
竜の血をひく者は人より長い寿命を持つため、グラは、別れが辛くなるから、という理由で特別な相手を作ろうとしなかった……。
一応、俺もドラリトア竜王国の王族であるため、黒竜の血をひいているのだが、その血は薄まり、自分の父親のように竜化する事は出来なかった。
それは俺だけではなく、弟達も同様だった。
それでも俺は、グラに近い存在である叔父のチカラを借りるなど、ありとあらゆる手を尽くし最後の最後までグラに結婚して欲しいと粘ったが、グラは最後まで俺の気持ちを受け入れてはくれなかった。
そして19歳の時、俺はグラを想いながらも、王族の義務を果たすため、良家の令嬢と結婚し、後に父親から王座を譲り受け、最終的に子供は男児三人もうけたのであった。
俺の結婚と同時に、グラはその類まれなるチカラと武闘センスを活かし、王太子及び王太子妃の専属近衛騎士という形でずっと俺の側にいてくれ、俺達を護りながら良き相談相手にもなってくれていた。
それが、グラの意思だったのか、王族としての義務を果たすと決めた俺への叔父からのはからいだったのかは、俺にはわからない。
だが……自惚れでもいい、グラはきっと俺を嫌ってはいなかったはずだ。
グラは年老いた俺の死に目に、美しく若々しいままの姿で、俺の手を握り、生まれ変わったら、と……約束をしてくれたのだから……。
ただ……意識が朦朧としていたせいで、〇〇〇〇〇〇の部分が聞き取れなかったんだよな……グラはなんて言ったんだろう。
次にグラに会えたら聞いてみないと。
○○●●
俺の名前は伊万里 星、23歳。
大学在学中に予備試験に合格、そのまま司法試験に合格し、司法修習を経て弁護士登録。この春大学を卒業し、父親の経営する伊万里コンサルタント事務所に入社した。
我ながら優秀過ぎると思うが、こんなのはまだまだ序の口だ。
俺はこれから公認会計士も取得する予定だし、順調に行けば医師免許なんかもとろうかと考えている。
それもこれも全ては愛する人のため。
俺が難関の資格を取得する事で、いつかきっと愛する人の役にたつことが出来ると俺は信じている。
○○●●
不思議な事に、俺には前世の記憶がある。
いつからとは意識した事はないが、気付けばその記憶は俺の一部となっていた。
前世の俺はファンタジー世界の王様、そして生涯愛したたった一人の美しい女性がいた。
その人とは結ばれる事なく人生を終えたわけだが、俺の死に目に彼女は約束してくれた。
“生まれ変わったら、私は必ず貴方を見つけるわ、だから、貴方も必ず私を見つけて”
……と……。
ロマンチックだろ? 嘘じゃないよ。
中学一年の春、俺は彼女を見つけた。
中学校の入学式に遅刻してきたその人に、俺は一目でその人が彼女の生まれ変わりだとわかったのだが、向こうは俺に気付いた様子はなかった。
でも、間違いなく彼女だ。
極限まで色を抜いてきれいに染められたシルバーブロンドの髪、そして襟足部分は刈り上げられており、黒髪だった。
そして遠目からでもよくわかるほどに美しいその瞳の色はダークブルー。おそらくはカラーコンタクトなどではなく、本物だろう。
その髪色と瞳は、俺の記憶の中のグラの色を思い出させた。
俺はすぐにでもその彼に話しかけたくて仕方がなかったが、その場は入学式。
はやる気持ちをぐっとこらえ、式典の終わりを待った。
「ねぇ! 君っ!」
「……ああ?」
式典が終わり、それぞれの教室に移動することになったそのタイミングで、俺は彼に声をかけた。
「俺は伊万里 星、君は?」
「……なんでお前に名乗んなきゃなんねぇんだよ、どっか行けよ」
彼は中学一年には見えないその見た目のとおり、少しツンケンしているようだった。まるで俺のことを相手にしてくれない。そんな所までグラに似ている。
でも、俺はめげなかった。ずっと会いたかった、探していたグラに会えたのだから、少しウザがられたとしても平気だ、グラの生まれ変わりであろうこの彼が、俺のことを思い出してさえくれれば、なんの問題ないのだから。
「俺は君と仲良くなりたいんだ、ねぇ、名前教えてよ」
「はぁ? うぜぇなお前……お友達なら他当たれよ、お前、俺の事知らねぇのか? 俺の側にいると、他に友達出来ねぇぞ」
俺の事知らないのか、とは、一体何のことだろうか。もしかすると彼は、この辺では名の知れた不良、とか、そういう感じなのかもしれない。
「知らないから、まずは名前から聞いてるんだよ、ねぇ、教えて」
「ッチ……まじうぜぇ……皇だよ」
スメラギ……かっこいい。
「スメラギって、名前?」
「苗字だよ、皇 那唯斗、もういいか、あっち行けよ」
スメラギ ナイト……顔だけじゃなく、姓も名前もかっこいいなんて、さすがグラの生まれ変わりだ、身体も同じ中学一年とは思えないほどに出来上がっており、背も高く筋肉質で男らしい。
「ナイトって呼んでもいい? 俺の事はセイでいいから」
「……お前と友達ごっこするつもりはない、あっち行けって」
「同じクラスなんだから、一緒に行こうよ」
「……お前、まじでうざい」
口ではキツイことを言うナイトだったが、俺を無視して先に教室へ行くようなこともせずになんだかんだおしゃべりをしながら、一緒に教室まで行ってくれた。さては、ツンデレってやつかな。
教室につくと、あいうえお順の出席番号で座席が決められており、伊万里のい、である俺と、皇のす、であるナイトは、前の方と後ろの方で離れてしまう。
そのせいで、ホームルーム中はもちろん、終わってからも後ろを振り向いた時にはすでにナイトの姿は忽然と消えていた。
(もう帰っちゃったのか、早すぎだろ……)
「ねぇねぇ、伊万里君、だっけ? 君さっき皇くんと一緒にいたけど、大丈夫なの?」
ナイトを見失いガッカリしていた俺に、前の席の井上君が振り向いて話しかけてきた。
「大丈夫って……ナイトがどうかしたの?」
「名前で呼んじゃう仲なの?!」
「さっき自己紹介し合って、俺が勝手にそう呼んでるだけだよ、で、ナイトがなんなの?」
「いや、俺さ、皇くんと同じ小学校なんだけど……皇君の家、ヤクザだからさ」
おお、ヤクザ。
「へぇ、そうなんだ、でもそれがどうかしたの?」
「どうかしたのって……普通ヤクザとは付き合わない方がいいじゃん? 親もそう言ってるし」
「ふーん……別に、たまたまご両親がヤクザなだけで、ナイトはナイトでしょ、ついこの間までランドセル背負ってた俺達と同じ中学一年生じゃんか」
親がヤクザで、大人に囲まれて育ったのかもしれない……だからナイトはあんなにお洒落で大人っぽくてカッコいいのだろう。ツンケンしているのも、本当に俺達みたいなのが子供っぽくて面倒なのかもしれない。
「いや、あいつはランドセル背負ってなかったよ、片方の肩にひっかけてただけだった……それに毎日真っ黒い車で送り迎えされててさ、友達もいなかったんだよ」
肩にひっかけてただけって……でもちゃんとランドセル持って学校来てたんだから俺達と何が違うんだろうか。今日だって、遅刻はしてきたけど、ちゃんと入学式にでて、ホームルームにも参加していた。
「そうなんだ、井上君心配してくれてありがとう、でも俺はナイトと友達になりたいんだ、だから気にしないで」
俺はにっこりと微笑み席を立った。
それからというものの、ナイトはまじめなのか不真面目なのか、授業にはきちんと参加しているが、それ以外の時間は早々にいつもどこかに消えてしまい、話しかけるチャンスもなく、当然仲良くすることもできずに、俺達の中学三年間が終了してしまったのだった。
そして中学卒業後は、都内有数の進学校へと進んだ俺に対して、ナイトは地元の高専へ進んだと聞いた。
高専だなんて、何だかかっこいい。
ちなみに、中学時代のテストの成績だけで言えば、俺は243人中9位、ナイトも19位と、かなり頭はよかったはずだった。
そして何の接点もないままに高校三年間を終え、俺は現役でT大へと進学したのである。
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