【R18・完結】結婚はしません、お好きにどうぞ

hill&peanutbutter

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43 お前にはやらん

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 (sideギルバート)
 
 
「兄さん、そんなに動いて大丈夫なのか?」
 
「ギル、何度言ったらわかるんだ、私はもう大丈夫だ。女神が健康な身体にしてくださったんだから。」
 
 
 あれから兄さんは、健康な身体をアピールするがごとく、すぐにベッドから出て、ずっと動き回っている。
 
 さらには、何かにつけて“女神” 、“女神”とうるさい。
 
 女神様はどんなだったか、と聞けば、モスグリーンの髪に金色の瞳をした年若い美女だった、と言うではないか。
 
「いいかギル、私は女神に似た女性に出会ったらすぐに結婚を申し込もうと思う。忘れられないんだ、あの美しい瞳と柔らかな唇が……。」
 
「へいへい、金色の瞳の女を連れて来ましょうかね。」
 
「違う! あのモスグリーンの髪も重要だ。あのカラーリングが最高に彼女の魅力を際立たせていた……。」
 
 と、すっかり女神にはまり、崇拝している。
 イヴリンを紹介しよう日には、本当にプロポーズしかねないので、会わせないでおこうと思う。
 
 
 ずっと一人でやってきて思っていたが、大公の仕事は一人でこなすには多すぎる。病み上がりの兄さん一人に任せるわけにはいかないので、
 俺は引き続き兄さんの補佐として国を支えていくことにした。
 
 業務の引継ぎなんかもあり、ここ数日はずっと忙しかったが、一人でやっていた業務が半分以下になったため、かなり時間に余裕が出来てきた。
 そろそろ森に行ってみようか。
 
 あれ以来、バタバタしてイヴリンに礼も言えずにいる。
 
 
 
 俺はずっと、兄さんの代理で大公をやっていただけだったので、結婚も子供も絶対に作らない、と決めていた。
 俺に子供なんかできた日にゃ、代理ではなく正式に大公にしようとする輩が出てくるに決まっていた。実際、兄さんの発作が起きるたびに会議でそんな話が出ていたのも事実だ。
 
 俺は兄さんを絶対に死なせないと決めていたが、バルナバスがこの世を去って以降、兄さんの病状は一気に悪化し、正直、もう駄目かとも思っていたが……。
 
 本当に、あいつは俺達兄弟にとって、女神かもしれないな。
 
 
「アギットにはわりぃが、状況が変わっちまったんだ。しょうがねぇよな。俺も甘酸っぱくキュンキュンする恋なんか、しちゃおっかなぁ~。」
 
 でも、アギット以外にも、めんどくせぇのが、まだいたな。俺の兄さんもしかり、イヴリンの兄貴もしかり……。
 
 だかイヴリンは案外、身体から懐柔していけばチョロいからな。アギットより俺の方が断然、経験値的にも有利だろ。
 
 
 
 俺はさっそく、俺達の女神に会いに行くことにした。
 
 

 
 ○○●●
 
 
 
 
 (sideイヴリン)
 
 
 
「よぉイヴリン。」
 
「あら、ギルバート様、前回とは打って変わって、ご機嫌ですわね。」
 
 
 いつものように前触れもなくフラッと現れたギルバート様だったが、これまでのように疲労感に満ち満ちた様子ではないように見える。
 お兄様の容態が改善して、いい方向に向かっているのかもしれない。
 
 
「イヴリン、こっち。」
 
「はい?」
 
「こっち、いいから、こっち来いよ。」
 
 私はノワールと精霊達と共に、畑で草取りをしているというのに、家の階段に腰掛けたギルバート様が、なぜか私に向かって手招きをしている。
 
 
「なんですの?」
 
 重い腰を上げて、渋々彼の側に行くと、突然手首をつかまれ、抱き寄せられる。
 
 階段に腰掛けたままのギルバート様は、その高低差によって、私の腰元に腕を回し、人のお腹に顔を埋めている。
 
 
 
「……ありがとな、イヴリン。」
 
「……。」
 
 ……なんだ、顔を見てお礼を言うのが気恥ずかしいのね。
 
「とんでもございませんわ、大公代理殿・・・・・。」
 
 私はわざとらしく、からかうように言った。
 
「……おい、それやめろ。」
 
「いえいえ、これまでの度重なる馴れ馴れしい言動をお許しくださいませ、大公代理殿。」
 
 いつも、ガキだなんだと、からかわれているので、これくらい言ったっていいだろう。なんだか楽しくなってきた。
 
「イヴリン~……調子乗んなよ?」
 
「キャッ!」
 
 
 調子に乗っていた私を、ギルバート様は意地悪な顔をして持ち上げ、自分の上に乗せてしまった。
 
 向かい合い跨った、なんとも際どい体勢に、なんとなくギルバート様の顔が見れず、私はつい顔をそむける。
 
「イヴリン、こっち見ろ。」
 
「見てますわ。」
 
「見てないだろ、こっち見ろ。」
 
 いつぞやのように、片手で両頬をつままれ、無理やり顔を向けられてしまう。
 
 そして……。
 
 
 
 
「……っ!?」
 
 ギルバート様は、躊躇なく、私に口付けた。
 
 
「っ……ん……んんっ……!」
 
 私の腰はもう片方の腕でがっちりとホールドされ、身動きが取れない。
 
 
 
「っふん、大人をからかうからだぞ。」
 
 深く長い口付けの後、ようやく唇が解放されたかと思えば、大人げなくも、そんな言葉を吐き捨てるギルバート様。
 
「な、なんて大人げないんですの!」
 
 しかし、相変わらず、体勢はそのまま。
 ギルバート様の膝の上に向かい合うように跨ったままだ。
 
 今では腰に両腕が回され、すごく密着している。
 
 
「イヴリン、これからは今までより仕事も楽になるから、もう少し会いに来れると思うぞ。」
 
「……精霊達が喜びますわ。」
 
「……お前は? イヴリンは嬉しくないのか? アギットとはどうなったんだ?」
 
「アギット様? どうともなっておりませんわ。先日、未遂までいたしてしまいましたけど。結局、何も変わってはおりません。」

 ……嬉しいとか、嬉しくないとか、そんなの時と場合によりますわ。それになぜ、ギルバート様が私とアギット様の関係をを気にするのかしら。



「イヴリン、俺はアギットにお前を譲らない事にしたぞ。俺は抱きたい時にお前を抱く事に決めた。」

「……なんですの、その微妙に最低な宣言は。少し前には“セックスは好いた相手と”なんておっしゃっていた方が……それに、私は誰の物にもなりませんわ。むしろそれは、私のセリフです。」

「……そうだな、好いた相手とのセックスが一番気持ちいいぞ? 早速と言っちゃなんだが……」


 ギルバート様は、私の腰を自分の腰にグッと引き寄せた。

 まさか……。

「何かが……当たっておりますが。」

「あててんだ。」


 その時だった。









「イヴリン! 大家さん! 何してんだよ!」


「アギットじゃねぇか、邪魔すんなよ。いいとこなんだ。」
「アギット様……」


 ネーロに乗り、空からアギット様が現れた。


「ノワールから密告があったから来てみれば! 大家さん、約束が違うじゃないですか!」

「わりぃなアギット、事情が変わったんだ。俺もイヴリンが可愛くてな、お前にはやらん。」

「な! なんでそんな事に?! 事情ってなんですか! 今すぐ納得のいく説明をしてくださいよ!」

「うるせぇな。いいから、あっち行け、俺は今からイヴリンと熱い時間を過ごすんだよ。」

「行きません! イヴリン! どうしてそんな場所に乗っかってんだよ!」

「……。」


 ……うるさいですわ。


「私、草取りの途中ですの。お二人とも、喧嘩するならお帰りくださいませ。」


「イヴリン!」
「ほら、イヴリンが萎えちまったじゃねーか。俺も萎えちまったから、少し寝るかな……。」

 ギルバート様は、勝手に家の中に入っていった。

「大家さんは俺と話しがあるでしょうが!」

 ギルバート様の後を、アギット様が追って行く。




 ……皆、ここを誰の住まいだと思っているのかしら……。


 
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