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第二章
25 嫌な奴ら R18
しおりを挟む「しもしも~? アルノー?」
『姉上、お久しぶりですね、どうされました?』
私はアルドの隣で、アルノーにバードコールを繋いだ。
医師の診断によれば、レイが倒れたのは、極度の緊張と過度のストレスによるものだという事だった。
つまり、レイからしたらあのマリモッコリ? みたいな名前の王太子がストレスの根源だったのだろう。
「アルノー、私の手首に“運命のリス”の魔法かけてくれたの覚えてる?」
『……忘れていましたけど、今思い出しました……きっと、あれのおかげで姉上は義兄上と再会出来たんですね!』
やはりか……アルノーも同じように考えていた。
「アルノー、私だ……聞きたいのだが……」
『義兄上! お久しぶりでございます! はい! 僕でわかる事であれば何でもっ姉上のへそくりの場所まで、何でもお答えいたします!』
何そのテンションの違い……どうにかなりませんかアルノーさん……お姉ちゃん悲しいよ。
それに、へそくりの場所って……え?! 何で知ってんの?! 止めて、言わないで!
「エイミーのへそくりの場所は知っているから大丈夫だ、実に単純で可愛いから、知らぬふりをしている」
えぇ……そうだったのぉ? ……私のへそくり、へそくりじゃなくて公式じゃん……この2人何なの? 私の事からかって楽しいの?
『やはり姉上の知能で義兄上に隠し事など不可能ですね!』
……ぐすん……弟が酷い。
「それでだが、アルノー、お前とエイミーはもしかすると、思いの外、シュドティリア王家の血が濃いのかもしれない……」
『え、それは少なからず父には王家の血が混じってますのでゼロではないとは思いますが……なぜでしょうか』
レイの事情はさておき、今回私に起きた一連の出来事を聞いたアルドが導き出した仮説は、アルノーが私に掛けた魔法“運命のリス”に、本当に神獣ラタトスクのチカラが加わってしまっている、という事だ。
神獣ラタトスクには離れた者同士を様々な不思議なチカラで繫ぐチカラがあったとされており、少なくとも同じチカラがあったとされるシュドティリア王家の血でも同じ事が可能だ。
エイミーの身体とアルノーの身体に流れる僅かな王家の血が、お互いの魔力に反応して、発動してしまったのではないか、という話らしい。
『つまり、姉上には義兄上以外に繋がって……運命で結ばれている相手がいる、と?』
アルノー、凄いな!
ちょっとの説明でそこまで理解できたの?! やっぱり脳みその出来が違うなぁ……。
「そうかもしれない……だがそれは最悪のパターンとしてだ……神獣のチカラで結ばれた相手など、どう足掻こうが離れられなくなるからな……」
えぇ……なにそれ、離れられなくなるって……嫌なんですけど……。
『……姉上……まさか、何かあったのですか? まさか“運命のリス”に反応が?』
「……まだわからないんだけどね……」
私はアルノーにも手首の痛みと胸の痛み、そしてとある人物から手首にキスされたら、嘘みたいに痛みが消えた事を簡潔に話した。
『……その“とある人物”が運命の相手ならば、姉上はこれからも苦しむ事が増えるかもしれないですね……』
「え?! どうして!?」
嫌だよ! 私、あんな痛みが常時あるとか耐えられない!
『実は……姉上が運命の相手から逃げられないように、一定期間離れていると胸が苦しくなる魔法も掛けてあります……すみません……』
「やはりそうだったか」
アルドが何故かアルノーの小細工に納得していたので、どうしてわかったのか聞いてみると、ラタトスクのチカラはあくまでも2人を繫ぐ・引き合わせるものであり、離れているとどうにかなるというのはオカシイ、と考えていたのだそうだ。
「でもでも! あのマリモッコリ王子は、“私の魔力に響鳴して辛かっただろ”って、知ってるような素振りだったよ?!」
『……マリモッコリ王子? ……姉上、まさか相手はどこかの王子なのですか?! ……なんて事だ……』
なんて事だ……バレちまった……。
『相手がどこかの国の王子ならば、その相手もその国の神獣の血かチカラを持つ可能性が強いです、つまりですね……』
アルノーの話しによれば、相手も相手で同じようなタイミングで“運命の相手”を探していたりすると、アルノーの魔法に反応して、プラスとマイナスが引きつけあうように、繋がってしまった可能性も否定できないという事らしい。
『つまり、相手のチカラも絡んでしまうのです……仮に相手のチカラが、運命の相手が自分から逃げないようにするものであれば……姉上の身体が無意識に何らかのかたちで逃げられなくなる事が考えられます……』
それがあの胸の痛みなの? アルノーの小細工とダブルだったせいで、あんなに苦しかったって事だろうか。
『ノルディリアの王子でない事を祈るばかりです……』
「どどどどど……どうして? アルノー!」
『……姉上……動揺が隠せていませんよ? 今、こっちの鳥まで動揺して喋っています……』
アルノーによれば、ノルディリアの神獣はフェンリル……つまり狼で、そのチカラは“捕食者”……。
「ままままさか、狙った獲物は逃さない、的な?」
『そうです、姉上にしては冴えてますね、ノルディリア王家は、何かを得る為には手段を選ばない、と有名です……』
確かに、ノルディリアでは今時珍しい、絶対君主制だと聞いた事がある。
『ノルディリアの何番目の王子ですか? あの国もウェステリアに負けず劣らず、子沢山でしたよね』
何番目の王子……?
「アルド、知ってる? マリモッコリ王子が何番目か……」
『マリモッコリなんていましたか? まさかマウリッツィオ第1王子なワケはないでしょうし……』
「どどどど……どうして、その王子なワケはないの?」
『……っ?!』
またも若干動揺してしまった……アルノーにバレちまっただろうか……。
すると、私の疑問に答えてくれたのはアルノーではなく隣にいるアルドだった。
「マウリッツィオ王子はな……結婚している妻帯者なんだ……ゆえに、今更運命の相手などとは考えがたくてな……」
まじですかぁい!
「じゃ、まさか……アルドのお兄さんタイプ……?」
「いいや、確かすでに王子もいたはずだ……」
それもあるけど、ほら、問23のさ、あれだよアレ……(必要ならば、もう1人見つければいい)的な考えです。
私がその話しをアルドにすると、アルドは自分の兄に対して信じられない、と驚いて軽蔑していた。
『ですが、すでに王子までいるのに、一体何のために姉上が必要なのでしょうか……まさかたった1人の“運命の相手”を夢見ていた、なんてワケはないでしょうし……』
アルノーがそう呟くと、アルドが何故かメラメラと魔力を漏らし始めた。
「エイミーは、私のたった1人の運命の相手だ……エスティリアの君主が“選んだ”相手だ……」
「アルド、落ち着いて! 魔力が漏れてる!」
アルドさんっ! 魔力をお漏らししてますよ!
『……凄いな、義兄上の魔力でこちらの鳥まで色が変わった!』
駄目だ……アルノーはアルノーでおかしな事にテンションを上げている。
アルドが漏らし始めたので、ひとまずはそこまでにして、私はアルノーとの通信を切った。
「アルド……大丈夫だよ、私はアルドの妻だもん……マリモッコリにはなびかないから安心して? ね?」
私はアルドの頭を自分の胸に抱き、ぎゅっとした。
若干落ち着いたのか、アルドの漏れていた魔力は引っ込み、アルドも私の身体にしがみつくように抱きついている。
ん? まさか乳吸ってる? なんという早わざ……。
「んっ……アルドっ……んっぁ……」
「エイミーは私のだ……君のこの柔らな素晴らしい胸を、苦しませたくない……」
「苦しいのは胸の先じゃなくて……んっ! ぁあっ……っ……」
胸への執拗な愛撫に、私の身体もとろけ、アルドの手が下にのびた時にはすでにまたもや下着はお漏らし状態……。
「エイミー、私は魔力だが、君はここが漏れているぞ?」
おっさんの下ネタやめれ!
「うっさい……んっ……ぁ、ぁ、あっ……もっと……もっと触ってアルドっ……お願い……今日はなんか変なの……身体がっ疼いて……んぁっ……」
「エイミーの身体が疼いてるのはいつもだろ? 私がそうなるようにしたんだ」
アルドが私の秘部に舌を這わせ、あまりにも突起部分を舐めて吸ってを繰り返すので、私は何度軽くイッたかわからない。
「……アルド、お願い……もう欲しっ……っんん! っふぁあ! (ビクン)」
すでにぐったりしている私は、チカラ無くアルドを求める。
そしてようやく私の望むアルドのモノが、潤いに満ちた私の中心にあてがわれ、ヌルヌルと突起を擦っている。
「やっ……ぁっぁっ……んっ! アルドォ、お願い……一気に奥へ突いてっ激しくしてっ……」
私はアルドに懇願し、しがみつく。
「エイミー……今日はヤケに素直だな……可愛い……」
嬉しそうなアルドは、そのまま私の中へ一気に入り、そのままガツガツと奥を突いてくれる。
「ぁっぁっあぁっ……ひゃんっ……ぁっんん! 気持ちい……アルドっ凄い……いい……好きっ……大好きアルド……」
「あぁエイミー……本当にどうしたんだ……そんなに私を煽ると、抱き潰してしまうぞ……」
そう言いながら、本当に私を壊してしまいそうなほどに力強く私の身体に出入りするアルド。
肌と肌のぶつかり合う激しい音と溢れる蜜の水音とが、その激しさを物語っている。
アルドは一度果てた後、すぐに私をひっくり返し、私の腰を掴み、お尻を持ち上げ、撫でながらバックの体位で再び挿入すると、容赦なく奥まで突いてきた。
「っぁあ! やっ……深ぃ……」
今までは手加減されていたのか、それとも今日のアルドの子ドラゴンが大きすぎるのかはわからないが、いつもより奥の深い場所に当たり、少し意識が飛びそうになる。
「っ……エイミー? 大丈夫か?」
「んっ……平気……もっと……もっとしてアルド……」
今日の私はやっぱり少し変だ……アルドが欲しくて欲しくて仕方ない。
その理由が何故かもわからないまま、私は愛する夫の愛を全身で感じるのだった。
「おそようございます、レジェンド、エイミー様……昨日は職務中に大変失礼いたしました……」
翌朝、レイが何事もなかったかのように打合せに現れた。
「レイ! もう起きて大丈夫なの?! 熱は?!」
私は額をくっつけ、レイの熱を測る……確かに熱は無いようだが……彼のメンタルは大丈夫なのだろうか……。
「大丈夫なのかレイ、今日くらい休め、特別休暇にしてやる」
「なんとっ! ありがとうございます、ですが、お気持ちだけ頂戴いたします」
今朝のアルドは、かなりスッキリした顔をしており、機嫌が良さそうである。
「……リタの特効薬で、元気になりました、激マズでしたけど……」
あらあら犬猿の仲のリタが薬とは、なかなか優しいじゃないの……チラッとリタを見ると、激マズと言われた事に腹を立ててビルに八つ当たりをしていた。
あ、そうだ、一つ……私はアルドと話し合った事がある。
レイの事情については、無理に聞き出さず、自分から聞いてくれと言うまでは触れずにいようと決めた。
それは昨日のうちにレイ以外の護衛4人にも伝えてあり、皆心配そうにしていたが、きちんと私達との約束を守り、今朝の様子を見る限りでは、いつも通り接しているようだ。
とはいえ、私は大まかには知っている。
レイがマリモッコリから預かっているあの子についても、その正体についても知っている。
ただ、もしかすると、レイの知らない事まで知っている可能性もあるので、下手に話しを振ることが出来ない部分もあったりなかったり……。
「レジェンド、エイミー様、本日のご予定は?」
「今日はサムとロンと街に買い物! 明日いらっしゃる、ウェステリアのお偉方へのちょっとした手土産を見るの」
そう、昨日ノルディリアのお偉方が来たように、明日はウェステリアのお偉方が来る予定なのだ。
ローザ様も毎日毎日大変だな。
「あ、ロン、大丈夫? 貴方も昨日は疲れたでしょ?」
「……平気、エイミー様と街、楽しい、パンケーキ、美味しいから……」
可愛い……パンケーキが食べたいのね、うんうん、食べようねロン!
「そうだサム、明日来るのは、どうやら第6王子と第3王女の2人のようだぞ」
アルドが思い出したようにサムへ伝えた。
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サムの表情を見るに、2人を思い出しているにしては、懐かしんでいるというよりも、なんだか辛そうな……悲しげな顔をしている。
「……あ、エイミー様、笑わないでくださいよ? 本当に俺と同じオレンジの髪ですからね」
突然感情を消して、軽口を叩き出すあたりは、さすが元王子……感情を消すのが上手い。
「笑わないわよ、私の家族だって皆赤い髪だもの(ニコニコ)」
レイにしても、サムにしても、なんだか複雑な事情を抱えてる……きっと、他の3人にも、原作にはない秘話があるのだろう……。
私、本当に小説の世界にいるんだなぁ、としみじみ感じた瞬間だった。
翌日……。
「ようこそリカルド王子、ミレーナ王女、本日は、私エドゥアルドと妻のエイミーがご案内をさせて頂きます」
転移門でやってきたウェステリアの2人に、アルドが挨拶をし、妻のエイミーの部分で私も軽く礼をとる。
「コレはコレは、お噂の“コウノトリご夫妻”ではないですか! お会いできて光栄です、リカルドです、よろしくエイミー妃(ウィンク)」
出た……絶対いつかはイジられる事を覚悟していたが、初っ端の第一声で“コウノトリネタ”でイジられるとは……。
「エドゥアルド王子は“エスティリアの君主”様なのですわよね? こんなにも素敵な方だったなんて……誰かしら、“デブ”だなんて言った方……(チラッ)あ、私はミレーナですわ」
嘘みたいっ! まだそのネタを引っ張る人がいたとは……ちょっとウケる!
とにかく、この2人……クセが強そうだ……今日1日、気を引き締めねば……。
どうやら、アルドとリカルド王子は初対面ではないようで、アルドはそんなにかしこまる事なく、スマートに対応していた。
一方でミレーナ王女だが……。
「貴女、何故エドゥアルド王子を一度振ったの? それなのに、痩せて素敵になったからと復縁するなんて……恥ずかしくなくって?」
「オホホホ……そうですわね、当時はよく言われましたわ(今は誰も言わねぇよ、古いんだよネタが)」
先ほどから、この調子で私に敵意丸出しなのである。
「エイミー妃は確か私と同じ歳と聞いたわ、どうしてそんなにお胸が大きいの? 何か入れてるのかしら?」
「ウフフフ……(貴女はどうして小さいのかしら? )女性の胸は夫に愛されると大きくなる、とも言いますわね」
「っま! 下品だわっ、やっぱりその身体でエドゥアルド王子を誑かしたのね……」
王女は扇子を広げ、顔を隠しブツブツと文句を言っている。
それにしても……ミレーナ王女はきっと、ウェステリアの悪役令嬢ならぬ悪役王女だな。
散々私に文句を言い、ようやく気が済んだのか、それとも飽きたのか、今度はアルドの腕にない胸を押し付け、油汚れのようにこびり付き始めた。
アルドは私をチラッと見て、すまない、とでも言いたげな視線を送ってきたので、私もニコリと返し、気兼ねなくリカルド王子の相手をする事に。
「エイミー妃は、我が国でも有名ですよ、あのエスティリアの王子をデブ呼ばわりし、かと思えばシュドティリアの第2王子と結婚し、かと思えば“エスティリアの君主”に連れ去られ、エスティリアの第2王子と結婚したとんでもなく波乱万丈な女性だ、と」
ありがとう、私の遍歴をわざわざ説明してくれて。
この男、サムの兄らしいけど、サムよりガキっぽいな……確か28くらいでしょ? あり得ない……。
「お恥ずかしい限りですわ」
「ですが、本人にお会いして理解しました……これは男性が放おっておかないわけだ……」
おいリカルド、アルドは私の事となると、後頭部にも目がついているんだぞ、死にたくなければ、今すぐそのイヤらしい目で私の乳を見るのをヤメロ。
その時、本当に後頭部に目がついていたのか、突然リカルド王子の周りに虫が飛び始める。
「うわっ、なんだっこの虫はっ! しっしっ、あっちへ行けっ」
アルドの魔法だろう、窓もないこの回廊に虫がいるはずがない。
チラッとアルドを見れば、私にウィンクを飛ばしていた。
(……全く、カッコかわいいんだから、私の旦那様は)
そうこうしていると、ローザ様のお部屋に到着し、この日はアルドのお兄さんもいたため、私とアルドは別室で待機となる。
「さっきの虫はアルドの虫?」
「ああ、エイミーにふらちな虫が寄っていたから、追い払わせたんだ……(チュッ)」
「大成功だったね(チュッチュッ)」
「それにしても……リカルド王子の奴……私の胸をあんなに凝視するとは……虫くらいでは私の腹の虫がおさまらない……(チューッ)」
アルドはソファで私に覆い被さり、やたらに胸を気にしている。
「駄目だってアルド、跡付けないで!」
「もう遅い、付いてしまった」
先ほどまでなかった場所にキスマークが付いていたら、何をしていたかアピールしているようなものではないか。
「ちょ! アルドっ!」
アルドはゴソゴソと私のドレスのスカートの中へ潜り込むと、私の下着を脱がした。
そしてそのまま私の秘部に舌を這わせ、中をほぐしながら溢れる蜜を吸っている。
「ん……っ」
声の出せない状況に、私も何故か少し興奮してしまう。
時間が惜しいのか、わりとすぐにスカートの中から出てきたアルドは、いつの間にか前をくつろげて取り出していた自身の子ドラゴンを軽くしごき、私のスカートをめくり上げると、そのまま細かく出し入れしながら少しずつ私の中に入ってきた。
「っ……っ!」
いつ呼ばれるかもわからず、廊下に誰かが通るかもしれない、そんな中での秘密の情事は、最高に興奮してしまう。
アルドも同じなのか、いつもより興奮しているようで、少し性急で雑だ……でもそれもワイルドでなんかいい……。
「んんっ……!」
思わず声が出そうになると、アルドはすかさず私の唇を自身の唇で塞いでくれ、そのまま舌を絡ませ私の頭をとろけさせる。
「エイミーっ! ……っ!」
「っ! ……」
2人とも、早めに果ててしまった。
「……ふ、ぁはははっ! ヤダもうアルド! ハラハラしちゃった! 信じられないっ」
「……エイミー……愛してるよ(チュッ)」
「……私も……愛してる、私の旦那様っ」
私達も相当なバカップルならぬバカ夫婦である。
しばらくして、ウェステリアの2人がアルドのお兄さんに見送られ、私達の待機していた部屋へ来た。
予定では私達がお迎えに行くはずだったので、びっくりしてしまったのと、部屋に情事の匂いがしていないかヒヤヒヤしていたが、どうやら大丈夫そうである。
その後、私達はサムから聞いた2人の好物でもてなし、2人の希望も聞きながらエスティリアを案内したのだった。
もちろん、アルドの隣には終始ミレーナ王女がこびり付いており、私の隣には終始セクハラな視線を向けてくるリカルド王子だ。
「そうだ、エイミー妃……先ほどローザ妃から伺ったのですが貴女には面白い護衛が何名もいるとか?」
護衛……ローザ様の言う護衛ならレイとロンの事だろう。
「ええ、おりますわ……皆、とても優秀ですの」
「……我々と同じオレンジ色の髪をした者もいると伺いましたが……」
私はピンときた……これは、ローザ様は関係なく、私からサムの事を聞き出そうとしているのだろう。
何故なら、ローザ様も王太子殿下もサムとは会ったことがない……つまり、2人からオレンジの髪の護衛の話しが出るわけがないのだ。
「ええ、おりますわ……それが何か?」
「……は! ……ふ、はははは! エイミー妃、どこぞの野良犬を拾ったのか存じ上げませんが、趣味が悪い! アレは王子としての義務を果たさず逃げ出した腰抜けですよ? 悪い事は言いません、すぐに元の場所へ捨ててきたほうがいい」
殴っていいかな? こいつの顔面……ムカツク。
「……」
突然大声で笑い出したものだから、アルドとミレーナ王女にも聞かれていただろう。
ミレーナ王女は、見つけたの?! っと、リカルド王子に詰め寄る。
この2人……実はサムを探してたのか?
いいや……違うな……サムが王子としてまた城へ戻って来ないか心配しているんだ……サムは優秀な王子だったから。
もしかすると、サムが捕まったのも兄弟達の仕業かもしれないな……ああ、怖い怖い……。
「確かに、私の元へ来た当初は野良犬のようでしたが、血統書付きの野良ちゃんでしたの、毛艶のいいとてもいい子ですのよ……私も夫も大変可愛がっておりますの、捨てるなんて無責任な事は絶対に、いたしませんわ」
私だけでなく、“エスティリアの君主”であるアルドが可愛がっている、私はわざとそう言った。
でも、頭が悪そうだから、その意味にすら気づかないかもしれないな……。
「ミレーナ! サミュエルはエイミー妃が拾って下さって、大事に育てて下さっているようだぞ! あんな無能のクズをっ」
「まぁ! ……悪趣味……他国の元王族を飼うだなんて……何をさせているのやら……」
サムの本当の名前はサミュエルなのか。
皆、名前端折りすぎでしょ……まぁ、覚えやすくて良かったけどさ。
「先ほどは売り言葉に買い言葉でしたが、サムは犬ではありませんわ、私と夫にとってはすでに大事な家族ですの……これ以上、私達の家族を侮辱する発言はお控えくださいますか? ……ねぇ、あなた……」
私はスッと背後から私の腰を抱き寄せてくれていたアルドの顔を振り返り見上げる。
アルド、とどめは任せるよ! ガツン! と言っちゃって!
「……そうだなぁ、あまりにもウェステリアの次期国王が無能なようであれば、私が“エスティリアの君主”としてサミュエルを復権させ、ウェステリアの国王に据えるのもいいかもな……君が望むならいつでもウェステリアは君にあげるよ(チュッ)……私の愛しい妻(チュッ)」
え、“エスティリアの君主”ってそんな事まで出来るの?! ヤバッ……でもウェステリアなんていりません……サムが欲しいって言うとも思えないし……。
なかなかに残念な嫁バカっぷりを見せつけたアルドだったが、意外にもミレーナ王女とリカルド王子の2人には結構なダメージを与えられたようである。
2人は見てわかるほどに動揺している……駄目だぞ、王族がそんなにあからさまに弱みを見せちゃ……サムの方がよっぽどポーカーフェイスだったけど。
まぁ、いざとなればそうする事も出来るんだぞ、とご理解頂いて、わかったらサムに手出しはするなよ、と伝わったなら、私はそれではいい。
「必要ありませんわ、国に縛られるなんて嫌ですもの……サムもようやく自由を得て楽しそうですから、国王なんて嫌がるに決まってます……考えればわかるもの……“エスティリアの君主”の側にいるほうが一国の王になるより利口だ、とね(ニコリ)」
私達はそのまま2人を転移門まで見送り、最後に昨日サムと一緒に選んだ手土産を渡した。
本当はこんな奴らにあげたくないけど、サムが選んだものだから……。
「……コレは……なぜ……」
「あら、これ欲しかったのよ」
リカルド王子には、特別に好きだと言う入手困難な年代のワイン、流行り物好きだというミレーナには最近流行し始めたばかりのお洒落アイテムだ。
2人とも、サムが選んだ事に気付いたのだろう、最後は微妙な表情で転移して行った。
二度と来るなよ!
ッフン!
「さて、私達も帰ろっか!」
「ああ」
その時だった。
「ッイタ! (また?! 痛たたた……っ! )」
「エイミー? どうした、痛むのか?」
手首の痛みと胸が締め付けられる感じがまた襲って来た。
「おや、また会えましたね私の姫君……」
「……マウリッツィオ王子……」
マリモッコリ、まだこの国にいたのかよ……日帰りしとけよもう……。
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