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第二章
20 チームプレイ R18
しおりを挟むそれから三日間、アルドと私は誰にも邪魔されることなく、無事にイチャイチャして過ごすことが出来た。
護衛5レンジャー達も、自主的に休日出勤したがる者を除き、滅多にない連休となったことを喜んでいたのだが……休暇二日目には、みんな暇だと言って、なぜか頼んでもいない休日出勤をめぐり4名で勝負を始めたのである。
もちろんロンは休日出勤など関係ないとばかりに、ずっと寝ていたようだ、可愛い……寝る子は育つんだよね、ロン。
「お前達、休日出勤というのならば、仕事をしてもらおうか」
イチャイチャ三日目の朝、護衛達が騒がしく勝負する姿を見かねたアルドが、そんなことを言った。
何事か、とワクワクする私をよそに、明らかに冷や汗を流すビル、レイ、サム、リタの4名。
そしてアルドが彼らに指示した仕事というのが……。
「レ、レジェンドのドラゴン様の……散歩……で、ございますか?」
「ああ、そうだ」
どうやら、アルドの股間の子ドラコンではない、君主に従う本物のドラゴン達は、夜中に勝手に空を飛び回り運動をしていたらしいのだが、たまには陽の光の中自由に飛ばせてやらないと、彼らもストレスが溜まってしまうという事で、今回アルドは暇そうな護衛達に命じたようだ。
「しかしっ、尊きレジェンドのドラゴン様に我々のような者が触れてもよろしいのでしょうか?」
「いや、触れる必要などない、お前たちはその有り余る魔力が枯渇すまで私のドラゴン達に隠匿魔法をかけ続けるだけでいい……8頭いるからな、4人で2頭づつか、頼んだぞ」
「なななっ!」
アルドは鬼だった。
魔力が枯渇するほど魔法を使うという事は、とんでもなく疲れるのである……私もいつぞやアルノーに庭で訓練と称して枯渇するまで魔法訓練をさせられたことがあるが、翌日、疲労と謎の筋肉痛のような全身の痛みで、動けなくなったほどだ。
「その代わり、明日は、特別に有給を使わせてやろう」
「「「「……か、感謝いたしますレジェンド……」」」」
こうして、アルドのドラゴンちゃん達は護衛4人のおかげで、誰にも見つかることなく大空を好きなだけ気持ちよく飛び回ることが出来たのだった。
翌日……。
「あれ……みんないない……」
三日ぶりに目を覚まして出勤したロンが、朝の打ち合わせに現れない4人を不思議に思ってキョロキョロしていると、アルドが優しくその状況を教えてあげていた。
「ロン、今日はお前だけだ、4人は休日出勤で頑張ったから、今日は有給を消化している」
「……有給……じゃ、僕も……」
いやいやロンくん!? 君は昨日も休んでいたよね?! 今日は頑張って働こうよ! 可愛いんだからもう……。
と、私がロンを見てほんの少しデレついていると、アルドはロンに言った。
「いやロン、お前には休まれては困る、実はお前には今日、やってもらいたいことがあるんだ」
「……イエス、サー、レジェンド……何でしょうか?」
雇用主であるアルドからの依頼に、さすがのロンも、仕事モードにスイッチを切り替えたようだ、うん、偉い偉い。
しかし、直後、アルドはロンにとんでもないことをやらせようとしていたことが判明する。
「ロン、お前は今日これから私とエイミーと城へ行き、王太子妃に会う、そして、彼女に洗脳魔法をかけるんだ……“クロードを好きで好きでたまらない、抱いてほしくてどうしようもない”という思考にしてくれ」
ちょっと!? アルド?!
「アルド?! ロンに、何てことさせようとしてんのよ! 絶対駄目よ! ロン、今のは聞かなかったことにしていいからね!」
「……王族に洗脳魔法は違法……僕、もう悪いことはしないって決めた……エイミー様のお側に一生いるため……」
ズキューンッ!
ロンっ……私の側にいたいから、悪いことをしないって決めてくれたの?! あぁ、涙が出そう……今まで、アルノーに捧げていたお姉ちゃん的思考が、ロンにも適用してしまうではないのっ!!
「王族でも、本人の申し出による措置であれば問題ないんだぞロン」
「そういう問題じゃないでしょうアルド! 殴るわよ!?」
「なっ……?!」
大方、洗脳魔法でローザと王太子の仲を修復させて、さっさと王妃様との約束を済ませてしまおうという魂胆だろうが、そんなことをしたって、なんの解決にもならない。
ほんのちょっとのきっかけを作るくらいの魔法であればいいと思うが、洗脳まで行ってしまうと、それは本人の意思を無視した行為であり、レイプと変わらない。
……ふと気付けば、私の、殴るわよ、に、よほどショックを受けたらしいアルドは、急に大人しくなっていた。
「とにかく、アルドはいつから仕事に復帰するの? 結婚休暇はいつまで?」
「……丸一日休めるのは今日までだ、だが、しばらくは急ぎの案件だけ片付けたら帰れる予定だ」
なるほど、それならば都合がいい。
「じゃぁアルド、明日は私も一緒に登城するね、早速ローザ様と少し話をしてみる」
まずは彼女が何をそこまで不満に思っているのかを知ることが先決である……的外れな事で動いたって意味はないからね。
私が一緒に登城すると聞き、少し表情が明るくなるアルド……可愛い、尻尾をブンブン振っているわんこが見える。
「それにしても、生まれたのは王女で、自分の立場が脅かされたわけでも何でもないのに、どうしてローザ様はそんなに不機嫌なんだろ? アルドには何か心当たりはある? 王太子殿下から何か聞いてる?」
「いや……ただ……義姉上に、拒絶されている、と……」
拒絶? ……ああ、まさか……。
「閨を拒まれてるって事?」
「どうやらそのようだ……実はそれも、王女が生まれたあたりかららしい」
「ぇえ?! 三ヶ月以上も?! ヤバいじゃんそれっ!」
王太子の王太子が暴発してしまう!
アルドのお兄さん、男っ! って感じの凛々しい人だから、なんだかんだ性欲も強そうだし……いや、私の勝手なイメージですけどね?
「……まぁ、兄上も義姉上の事は本当に愛しているから、かなり参っているようだった……私は鼻で笑ってやったが」
え、アルド、色々あったとはいえ、お兄ちゃんに冷たすぎない? 私、アルノーにそんな態度とられたら、泣いちゃう。
「ふんっ、兄上が浮気何ぞするから悪いんだ、私のように一途に一人だけに魂を捧げればいいものを……」
それが出来る男は、そう多くはないんですよアルド……そう考えると、私は本当に幸せ者だな、と思う。
「でも、アルド、私にそっくりな魅力的な女性が裸で迫ってきたら、美味しくいただいちゃうでしょう?」
想像すると、笑っちゃうシチュエーションだけど。
「エイミー、私をなめているのか? 私は、エイミーの身体からにじみ出ているフェロモンに欲情しているんだ、いくら外見が似ているからと言って、相手にするはずがないだろう」
何その動物的な何か……フェロモンって、まるで番システムじゃないか……あ、ドラゴンって番うのかな? やっぱりアルドはドラゴンに近いんじゃ……。
「僕、何したら? ……」
あ、忘れてた。
「ロン、ロンも明日私と一緒にローザ様に会いに行きましょう、それで、ほんの少しだけ、ローザ様にリラックスしてもらって、口が軽くなってもらいましょう? (二コリ)」
え? ほんのちょっと口を滑らせてもらえるよう、ロンに協力してもらうだけだ、決して洗脳とかそういった類ではない、そう、いつぞやにカトリーヌ嬢に不安の芽を植えてきた程度のものだ。
「……はい、エイミー様」
後はそうだな、レイを連れて行くか……レイは老若男女問わず話しやすい外見と雰囲気を持ってるから、ローザ様も打ち解けてくれるかもしれない。
こうして、私のミッションはスタートするのだった。
翌日……。
「やっ、あんっ! ちょっとっアルドっ!」
城へと迎う馬車の中……いや、そもそもなぜいちいち転移せずに馬車で行くのか不思議だったのだが、アルドはこれが目的だったようだ。
「はぁ、エイミーが仕事へ向かう馬車に一緒にいるかと思うと興奮してしまう……(チュッチュッ)」
「何言ってんのよ! いつも転移してるくせに今日に限って馬車を使うだなんて、変だと思ったのよっ! この変態っ!」
アルドは馬車が出発するや否や、私を自分の膝の上に座らせ、キスをしてきたかと思えば、そのままドレスの胸元をズリ下ろしやがったのである。
「っあ……んっちょっと! ……っあ……」
馬車の中だというのに、人の胸をもみしだき、舌を這わせ、その先を舌先で転がし刺激する。
しまいには、スカートの中にまで手を伸ばす始末。
「っやっ……んん……ぁ……」
「……エイミー、いけない子だ、こんな所で君はこんなに湿らせて……(クチュリ……)その可愛らしい声も、聞かれてしまうぞ?」
そう言って、アルドは私の口を自分の口で塞いでしまう。
「(むぐっ)……っん……むっ……んんっ……」
とろけてしまうような濃厚な口付けと、勝手に中に入ってくるその指の動きに、私ももうどうにでもなれの状態に……。
「っんんっ! ……(ビクン)!!」
私が軽く果てると、アルドはおもむろに自身のスラックスの前を寛げ始めた。
(うそでしょ?! ここで入れるの?!)
信じられないが、彼は挿入までしてしまう気のようだ……いや、まぁアルドが途中でやめるわけないか……。
ブルンっと、アルドの大きな子ドラゴンが飛び出してきてしまい、アルドは自分の手についた私の蜜を塗り込むようにソレを軽く扱く……そして、準備OKとばかりに、私を抱き上げ、自分の上に座らせる。
「ほらエイミー、できるだろ? 自分で腰の位置を調整して、下の口で欲しいモノを食べてこらん?」
どこのエロおやじだよっ!
とは言え……馬車の振動で、つんつん、と私の中心に触れるアルドのソレの刺激に、私もトロッと蜜が漏れ出たのがわかった。
慌てて栓を求めるかのように、アルドのそれをグッと自分に挿し込む……。
「っぁ……っ……んっんん……」
「……っ!」
アルドの眉間がグッとよせられる……きっと、アルドも気持ちがいいのだろう。
馬車の小刻みな揺れがなんとも言い難く私の突起を刺激する。
半分ほど入ったところで、しびれを切らしたアルドはドレスのスカートの中に手を入れ、私のお尻を掴むと、グッと自分の方へ引き寄せた。
「ぁあっ! ……ひゃっ……」
私の中にアルドのソレがすべて入ったことで、たまらなく快感を拾ってしまう。
ゆさゆさと、アルドが私の腰を前後に揺らせば、突起がこすれ、たまらく気持ちがよく、上下に出し入れすることで、ズンッ、ズンッ、と奥を突かれ、これまたたまらなく気持ちがいい。
「あぁ……アルド、アルド駄目、私、こんなところでまたっ……んっ……あぁっ!」
私が果てた直後、アルドの両手はいっそう激しく私の腰を揺すった。
「ああエイミー、私もイキそうだ……っ……くっ……!」
馬車の中には、私達の息遣いだけが聞こえ、事後、私は何とも後ろめたい気持ちになってしまう。
「……エイミー、可愛かったよ(チュッ)」
「……可愛かったよ、じゃないわよっ! どうすんのよこれ! このままノーパンで城を歩き回れって言うの?!」
私は濡れた自分の下着をアルドの顔に投げつけ、悪態をつく。
「それもいいな……エイミーがノーパンだと思うと、私は君を城中探し回ってでも見つけて、突っ込んでしまいたくなる……」
……駄目だ、変態には話が通じない。
しかし……。
「安心してくれエイミー、こんなこともあろうかと……」
そういったアルドのポケットから出てきたのは、私の新しい下着だった。
一体、なんつうものをポケットに忍ばせてるんだ……呆れて言葉が見つからない。
それに、こんなこともあろうかと、だ? 白々しい、確信犯だろお前。
「もうっ! 疲れたっ! 休むっ!」
「そうするといい、おいでエイミー、私をクッション代わりにどうぞ」
当たり前だクッションめ、黙ってクッションになってろ。
私は舐めていた、性欲旺盛だという“エスティリアの君主”を。
「いやぁ~、レジェンドとエイミー様の馬車はなぜかやたら揺れておりましたが、中で何を? 取っ組み合いの喧嘩でもされておりましたかぁ? いやぁ~、喧嘩するほど仲がいいとはまさにお二人のことっ! にゃは~ん(ニヤニヤ)」
城へ到着し、アルドと別れると、レイがわざとらしく私をからかってくる……彼らは後ろの馬車でついて来ていたのだ。
「レイ、それ本人に聞いたら駄目……」
そんなロンのフォローすら、今の私にはいたたまれない。
「うるさいっ、変態が同じ馬車に乗っていたせいよ、気にしないで、痴漢にあったの」
「おや、これは帰りも揺れるかもしれませんねぇ……」
レイ、もう黙ってくれ……。
気を取り直した私は、二人を連れてローザ様の部屋へ向かった。
安心してください、今回は事前に訪問することを伝え、待っているわ、とご本人からも許可を得ている。
「失礼いたします、王太子妃殿下、エイミーにございます」
侍女に中へ案内され、奥に見えたローザ様に軽く挨拶をすると、ローザ様は立ち上がり私達を笑顔で出迎えてくれた。
私的に、カトリーヌ嬢なんかよりも金髪に淡いパープルの瞳のローザ様の方がよっぽど美しくて聡明そうで、立派な王太子妃に見える……いや、事実、カトリーヌは側室で、ローザ様が本妻なんだけどさ。
「今日はご気分がよさそうですわね、ローザ様」
「ええ、エイミーさんがいらっしゃると連絡をくれて、とても楽しみにしていたの、さぁ座って」
おや、私の事をそんなに好いていらっしゃったと? 知らなかったぞ。
「そうですわ、ローザ様、先に紹介させて頂きますわね、私の護衛で、ピンクの髪がレイ、シルバーの髪がロンです、ロンは無口ですけど、レイはなかなかに博識ですので、今日は一緒に楽しいお話でもして気分転換になれば思ってまいりましたの」
久しぶりの令嬢トークに、舌を噛みそうになる。
「まぁ、嬉しいわ、本当に最近面白くないことばかりで……たまにこうして来てくれると嬉しいわエイミーさん」
「ローザ様がそうおっしゃってくださるなら、喜んでまいりますわっ(二コリ)」
「(ボソリ)……エイミー様、嘘つき……」
ロンが私にだけ聞こえるような小さな声でボソリと呟く……こらロンっ!
こうして始まった、ローザ様の不満を聞き出そうの会。
今朝の打ち合わせで、レイには今日の目的が何かは説明してある、そして城へ向かう馬車の中で、レイとロンには自白を促す魔法をかけるタイミングを話し合ってもらっているので、私達のチームプレーは完璧なはずだった。
しかし……。
「(小声)……ちょっとロン?! 魔法、強すぎたんじゃないの!?」
「(小声)……僕、まだ何もしてない……」
「(小声)……どうするんですかっ、止まりませんよ?!」
出るわ出るわ不満の数々……ローザ様の口からは、私達が予定していた以上に愚痴が止まらなかった。
聞き上手のレイと、話し上手の私、そして、可愛く癒し系のロンの存在のおかげ(? )か、ローザ様はそれはそれは楽しそうに明け透けに話をしてくださったのである。
まず、一番知りたかった、王女が生まれて以降ローザ様が不機嫌な理由……。
それはなんとも複雑なものだった。
「カトリーヌ嬢が側室になった時からずっとそうだったけど、王女が生まれてからなんてもっとひどいの、誰もかれも、私に気を使いすぎなのよ、人の顔色ばかり窺っちゃって……とくにクロード様! ひどいものよ?! 今じゃあの申し訳なさそうな顔見るだけで頭に来ちゃう、まるで私が可愛そうな子みたいに同情したような顔して……私のどこが可愛そうなのよ、まったく見当違いだわっ!」
その話を聞いたとき、私もいつぞやのアルドとカトリーヌ嬢のスキャンダルでシュドティリアへ帰国した際の周囲の態度を思い出していた。
そして、ついついわかりますっ! と賛同してしまったが最後、ローザ様は気を良くして、止まらなくなったのである。
そしてレイも、レイでローザ様を持ち上げて気持ちよくするものだから、さらにローザ様は楽しくなってしまったご様子。
「王太子殿下は、女心をちっともわかっておりませんね……浮気するなら、後悔するな、というのです、どんな時も堂々とし、嫌なら去れ! とでもいう雄雄しい姿に、王者の風格が現れ、女性はそんな姿に心惹かれるもの……」
「そうよ、そうなのよレイっ! わかってるじゃないの! 貴方、本当は女なんじゃなくって?」
と言った感じで、なかなか終わりの見えない会は、昼近くまで続き、アルドが終了のゴングを鳴らしに迎えに来たところで、第1回ローザ様の本音を聞こう会は終了する……あれ、違った、不満を聞き出そうの会だった。
いや、もう第1回で終了でもいい気がするほどの情報を得られた気がする。
それにしても……。
「疲れたわね、レイ……」
「ええ……魔力を一切使っていないのに、こんなに疲労感を感じたのは初めてかもしれません……」
帰りの馬車は、今日の報告も兼ねて、4人一緒に! とアルドに懇願し、渋々了承させたのである……アルドと2人で乗ろうものなら、行きの二の舞になりかねないからな。
「ロンは疲れていないのか?」
「……僕も疲れた……王太子妃殿下、すごいおしゃべり……止まらない……」
疲労困憊の私達の様子に、アルドはなんと声をかけていいか迷ったのだろう、彼はロンに逃げることにしたらしい。
が、しかし、意外にもロンまで疲れていたらしいのだ、なんと、珍しい……すごいなローザ様の圧。
とはいえ、私はアルドに、ローザ様から聞き出した、というか勝手に自分からしゃべりだした内容を、かいつまんでアルドに伝えた。
アルドは、ローザ様がそんなにもため込んでいたとは知らず、少し怯えていた。
「……兄上に伝えた方がいいのだろうか……」
「いいえ、ローザ様は今日、私達にだいぶ吐き出して、かなりスッキリされているはずよ、もう少し様子を見ましょう、王太子殿下に話して、殿下の態度が変わってしまったりしたら、私達がしゃべったと疑われてしまうもの」
「……それもそうだな、よかった、さすがに私も兄上に伝える勇気はなかった……」
「ですがエイミー様、現状、多少吐き出してスッキリしたくらいでは、ローザ様が王太子殿下を再び受け入れるには程遠くありませんか? もはや、あの様子では王太子殿下を男性として見ていないような気が……」
そこなんだよねぇ~……レイのいう通り、ローザ様があれでは、男女の関係になるのは難しそうだ……。
「……頭いじくる?」
「ロン、それはしないわ、我慢してね」
「……はい、エイミー様……僕、我慢する……」
くぅ~っ、可愛いなロンっ!
「少し、遠回りかもしれないけど、まずはローザ様に恋愛脳を取り戻してもらうことが重要ね……丁度、私達の結婚式で街がにぎわっているし、あの集団もいるはずだから……一芝居、協力してもらっちゃうとか?」
私が考えたのは、ずばり……“ローザ様に恋愛のときめきを思い出してもらおう大作戦っ! ”である。
「問題は、相手よね……まさか顔を見るだけで頭にくる王太子殿下ご本人にご登場頂くわけにいかないし……かといって、本気でローザ様が惚れちゃうような美男子をあてがうわけにもいかないし……困ったなぁ……」
それに、ローザ様がこの国の王太子妃殿下だと知っている人物だと、演技とはいえ、腰が引けてしまってかっこよく口説けないかもしれない……ほどよくローザ様と対等に話が出来て、ローザ様に恋愛感情を持たなそうな人間……。
「……あ……いるじゃん……」
その夜……。
「んっんんっ! テストテスト、マイクのテスト中……おーい、リュシアン? 聞こえてるー?」
『……なんだよエイミー、結婚式、めちゃめちゃ綺麗だったな! 本当なら、隣には俺が並んでるはずだったのに……くそっ……(ぶつぶつ……)』
「……エイミー、なぜリュシアン王子に連絡を?」
「しっ、しずかにしててアルドっ!」
『おい、コソコソ話すな、なんかいやらしいぞ、聞こえてる、エドゥアルド王子もいるんだろ、いいよ別に』
私達の結婚式に参列し、すぐにシュドティリアへと帰国したリュシアンは今、アルノーとともに、まもなく卒業となる学園で、留学経験をいかした卒業論文を書いている。
本当は、卒業するにあたり、論文など必要ないのだが、せっかくなので、と教師陣から求められてしまったのだという。
「ねぇ、リュシアン、卒論で忙しいとこ悪いんだけどさぁ、ちょっと、一芝居付き合ってくれない?」
『断る』
「なんでよっ! まだ何も話してないじゃないっ!」
『理由1、エイミーの考えることなんて、どうせ碌でもないに決まってる、理由2、面倒ごとに巻き込まれる嫌な予感しかしない、理由3、エドゥアルド王子の手助けになるようなことはしたくない、理由4……まだ聞きたいか?』
「……もう結構です……」
むむむ、リュシアンめ、なかなか手ごわいな……。
『代わりと言っては何だが、一つ教えてやるよ』
「なによ、この薄情者」
『……お前な……まぁいい、兄上とジュリエットがもうすぐそっちに行くと思うぞ』
アルベール王子とジュリエットが? 一体何しに? ついこないだ、私の結婚式に参列してくれたばかりではないか。
『ついでに、お前の兄貴、ブルーノ近衛騎士団長も一緒だ』
「お兄様も?! (キュルン)」
だが、騎士団長まで一緒となると、公式訪問という事だろうか……聞いてないぞ? そんな話は。
『エスティリア王国に公式に訪問するんじゃなくて、お前んとこに行くんだってよ、何やら直接会って報告したいことがあるとかで、エスティリア王宮に転移許可を申請してると思うぞ』
直接会って報告……? なんだろな?
……あ、まさかご懐妊とか?! 原作でエイミーが毒殺未遂しちゃう、あの子?!
たしかに、今くらいの時期だったかも!
私とジュリエットは、色々あったが、結婚式のドレスを一緒に選ぶほど仲が良くなっていた。
今となってはもう、アルベール王子とジュリエットの子に危害を加えようなんて考えもしないが、妊娠の報告をしにわざわざ他国まで来てくれるなんて、なんだか感慨深いな。
「なんとなくわかった! そうなら、準備しなきゃ、っじゃ、卒論がんばれよリュシアン! じゃね、お休みバイバイっ」
『あ、おいっ! ……プツッ』
「アルベール王子とジュリエット妃が来るのか?」
「そうみたいっ、きっと、嬉しい報告だと思う」
「そうか、エイミーが嬉しいなら私も嬉しい……(チュッ)」
こうして、ひとまず私はジュリエット達の訪問を優先することにしたのだった。
が、この二人の訪問により、事態は思いがけない方向へと進んでいくことになる。
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