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第一章
11 知らず知らず…
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(リュシアン視点)
「リュシアン、姉上の気持ちはまだ、エドゥアルド王子にあると、僕は思うんです……ですから、結婚したとはいえ、無理に身体を奪うような真似はしないでくれませんか」
アルノーにそんなお願いをされ、軽々しく約束をしたがために、昨夜はエイミーを抱くことができなかった。
(まったく……俺も馬鹿だな……)
エイミーが今でもエドゥアルド王子を想っていて、俺の事を弟くらいにしか思っていない事くらい、わかっている。
それでも昨夜のように、身体だけでも俺に慰めて欲しいとばかりのエイミーを、抱けないのはかなりキツイ。
エドゥアルド王子のスキャンダルを聞いた時、俺は無断転移をしてでもエスティリアに行って、エドゥアルド王子を1発殴り飛ばした後、そのままエイミーをシュドティリアに連れ帰ろうとした。
いや、本気で。
転移魔法を発動して、行き先を設定しようとした所で、アルノーに止められたんだ……。
アルノーは俺に、エイミーはこんな状況になって、大人しくエスティリアに居るはずはない、と言って俺をなだめる。
エドゥアルド王子を尊敬しているアルノーも、さすがにエイミーの気持ちを考えたら今回のスキャンダルは許せなかったのか、その声色には怒りが含まれており、と、同時にショックを隠せない様子だった……。
「リュシアン、父上はすぐに国王陛下から状況を報告するようにと、呼ばれるはずです、君はタイミングをみて陛下と父上を訪ねて、傷ついた姉上との結婚の許可を得てください」
「結婚の許可?!」
「そうです、いいですか? 婚約をすっ飛ばして、すぐに結婚する許可ですからね! 可能であれば、婚姻届を持参して、陛下と父上からその場で証人欄を書いてもらうといいでしょう……姉上は絶対にすぐにこちらに戻って来るはずですから」
アルノーの計画に乗った俺は、言う通りにした。
父上とファリナッチ公爵の前で、いかに自分がエイミーを想っているか、結婚するならエイミー以外考えられない、エイミーでなければ結婚はしない、と伝えると、父上もファリナッチ公爵も、あっさり認めてくれたのだ。
おまけに、公爵には、エイミーの傷ついた心を癒やしてやってくれ、とまで頼まれてしまう。
丁度その時、我が国に、エスティリアからエイミーと侍女3人の公爵家への転移許可申請が届いたようだったので、俺はすぐに2人から証人欄を書いてもらい、その足で公爵家へと転移した。
アルノーに抱きついて大泣きしているエイミーを見た時はとても驚いたが、泣いているだけで、言っている事は昔と変わっておらず、少しホッとする。
俺に気付いたアルノーは視線を交わした後、自分に抱きついているエイミーをそっと俺に託す。
そのまま俺は、アルノーと組んで冷静ではないエイミーの状態につけ込むようなかたちで婚姻届にサインさせた。
婚姻届はすぐに受理され、俺達はあっと言う間に夫婦になったんだ。
エイミーの気持ちが落ち着くまでは、馴れない王宮になど連れて行きたくはなかったので、俺がファリナッチ公爵家へ通い、毎晩エイミーと同じベッドで眠る事に。
夫婦になってから、ゆっくり愛を育むのもアリだろ、と考えていた俺は、別に急いではいなかった。
エイミーと眠る初めての夜、直前にアルノーに呼ばれてお願いされた時も、平気だと思ったから、あんなに軽々と約束してしまったのだが……。
エイミーのエロさは、俺の予想をはるかに超えていた……。
身体もさることながら、香りと声とが合わされば、つい手を出したくなってしまうのが、男の性というもの。
それでも、エイミーの気持ちが完全に俺に向いてくれるまでは待とう、そう思っていたのだが……。
突然エイミーからキスをされ、俺の理性は軽く吹き飛んでいってしまう。
柔らかなエイミーの身体を、余すことなく堪能し、誰も暴いた事がないであろうエイミーの中を暴き存分に味わった俺は、出来る事ならあのまま、とろとろのエイミーの中に、己をぶち込みたかった。
昨日の感じだと、エイミーもすんなり受け入れてくれそうな気がする。
まぁ、我慢するけどね。
それにしても、気になるのはあのエイミーの反応だ。
下は初めて触られた感じだったが、上半身は触られ慣れた感じがしたな。
エドゥアルド王子はエイミーと同じベッドで寝ていたようだが、よく上半身だけで止めれたな……。
ちょっと尊敬するぜ。
(リュシアン視点end)
○○●●
エスティリアからシュドティリアに出戻って、リュシアンと結婚してから今日で5日。
私の耳には、アルドのスキャンダルのその後の追加情報が入ってこない……ネットが無いって不便だな。
さらに、アルドが私を迎えに来る気配もない。
当たり前か……自分が事故にあって大変な時に、勝手に実家に帰った挙げ句、勝手に結婚しちゃった婚約者の事なんて、恨むどころか愛想を尽かしているだろう。
今頃、正式にカトリーヌと結婚して腹の子の父親になったかもしれないな。
……ん?
勝手に結婚しちゃった婚約者……?
私は、自分で言っていて、自分で疑問に思った。
その時だった。
「姉上、今よろしいですか? 姉上の結婚式の事なのですが……」
「アルノー! 私って、本当にリュシアンと結婚できたの!? 私、アルドとの婚約解消の書類にサインしてない! 罪にならないかな?! いや……むしろ、王族と婚約してるのに違う王族とすぐに結婚なんか出来ないよね?! 再婚約禁止期間とかないの? 無効になるの?! ねぇ、ねぇ、なんか知ってる? アルノー!」
私は、疑問が浮上した所に丁度よく現れた、よく出来る我が弟に尋ねた。
可愛いアルノーが私のノンブレス長台詞に若干引いている。
「……はぁ……姉上、その疑問に今更たどり着いたのですか? 心配になりますよ貴女は本当に……」
テヘペロ、心配されてしまった。
「安心して下さい、王子が姉上ではない別の女性との間に子を設けたという時点で、エドゥアルド王子と姉上の婚約はなかった事になってます」
「そんな事できるの!?」
なにそれ、浮気したから無効よ~っ的な?
でも、カトリーヌの腹の子の月齢的には、アルドが私と再婚約する前に仕込んだ事になると思うんだけどな……。
浮気じゃなくない?
「……姉上、貴族間ですらそうなのですけど、王族との間における婚約とは、結婚の約束という意味合いだけではなく、婚前契約という意味もあるんです、エドゥアルド王子の今回の騒動は、明らかな契約不履行事案です、よって、2人の婚約はなかった事に出来ます」
「……なかった事には、誰がしたの? 誰が契約不履行だって言ったの?」
「え? ……」
どうして、私とアルドの婚約なのに本人である私が何も知らされていないのだろうか。
「ねぇ、アルノー……モロー侯爵の娘との件、アルドは多分悪くないんだよ……アルドは契約不履行になるような事してない」
「ですが姉上……」
今更、リュシアンとの結婚をなかった事にしろなんて言わないが、アルドが無実の罪をきせられているのは、なんか違う気がする。
「私、やっぱり1回ちゃんとアルドと話ししてくる! アルノー、エスティリアへの転移許可申請してくれない?」
ひと月は国に帰らないって約束破っちゃったしな、なんかお詫びの品がいるだろうか……。
ところが……呑気な私とは真逆に、アルノーが突然、感情をむき出しにして、私に訴える……珍しい事もあるもんだ。
「姉上! 行ってどうするんですか! また姉上が傷つくだけです! 僕はっ! ……僕はもう……姉上のあんな辛そうな姿を見たくない……姉上には涙を流してほしくありません! 笑っていて欲しいのです!」
ズキュンッ!
あんなにエイミーを嫌っていたアルノーが……尊敬しているアルドよりも、私の事を心配してくれているとは……。
「アルノー……そんな風に思ってくれてたの? ……いつの間にか、私の事大好きになってくれてたんだね! あれかな? ちょっとの間だったけど、離れてたから? やんっ、お姉ちゃん嬉しい! めっちゃ嬉しいー!」
私はアルノーをギュッと力いっぱい抱きしめ、顔を胸を押し付け、左右に振る。
「やっぱり、結婚なんかしないでアルノーにずっと寄生しとけばよかったぁーん!」
○○●●
(アルド視点)
マクシに後を任せ、エイミーを迎えに行くため城を出ようとした時の事だった。
「エドゥアルド」
私は兄上に呼び止められ、仕方なく引き返す。
「兄上、申し訳ありませんが、今は話しをしている時間がありません、戻ったらでもよろしいですか?!」
いくら兄上とて、今は私の邪魔はしないでもらいたい。
「駄目だ、カトリーヌ嬢の件だが、彼女を城に迎え入れる……お前の婚約者として」
「はい?! 何をおっしゃっているのですか! マクシから説明させた通り、私の子ではありません! それに、私にはエイミーがいます!」
だれもかれも、どうしたと言うのだ、何なんだ一体っ……何故みんな、私とエイミーの仲を邪魔するんだ!
「そのお前の元婚約者は、すでにシュドティリアの第2王子と結婚したそうじゃないか! 一度ならず二度までも……私の弟を馬鹿にするのも甚だしい!」
「誤解です兄上、エイミーはきっと騙されたか何かで……っ! 彼女は私の事を愛しているはずなのです、今から連れ戻しに行くので邪魔しないでください」
しかし兄上は、私がシュドティリアに入国を拒否されている事まで把握しており、あんな女は忘れてカトリーヌと子供と幸せになれ、と私を説得してくる。
「私の幸せはエイミーなくして得られません! 誰に何と言われようと、私はエイミー以外の女性と結婚するつもりはありません!」
「子供はどうするつもりだ!」
「生まれてから、魔法鑑定を行えば明らかになります、私の子ではないと!」
それでも兄上は私を責めた。
事実がどうであれ、今、国中の誰もが、モロー侯爵の娘、カトリーヌの腹の中には、私の子供がいると思っているというのに、何の責任もとろうとせずに、その上、他国の王子と結婚した元婚約者を連れ戻しに行ったなんて事が知られれば、この国での私の評価は地に落ちる、と。
「評価など、心底どうでもいい! そんなもの、太っていた時に戻るだけでしょう!」
私は気付いたんだ。
数多くの他者からどんなに称賛されようが、己が理解して欲しいと思う相手たった一人、その人に、理解してもらえなければまったく意味はない。
私にとって、そのたった一人が、エイミーなのだ。
「兄上や父上母上が私を心配してくださるお気持ちは嬉しいですが、私は王座にまったく興味はありませんし、兄上と争うつもりも毛頭ありません、ただ、彼女と共に……彼女の側にいたいだけなのです!」
そのためには一刻も早くシュドティリアへ行き、エイミーとリュシアン王子の婚姻に異議を唱え無効にせねばならないのに!
「お前もまだ若い、愛だのなんだと気持ちが盛り上がるのも仕方あるまい……だがな、お前はこの国の王子だ、民を一番に考え、守り、導く義務がある」
「それならば、エイミーを妻に迎えたとしても義務を果たす事は出来るでしょう!」
「本当にそう思っているのか?」
「カトリーヌ嬢はこの国の国民も信頼を寄せているモロー侯爵家の娘……そのカトリーヌを捨て置き、お前がシュドティリアの公爵家の娘を選べば、国民の批判はお前だけでなく彼女にも向くだろうな、その時点でお前に国民を一番に考えてはおらず、守る事も導く事も受け入れては貰えぬだろうな」
「っ!」
兄上の正論に、私は返す言葉が見つからず、ただ奥歯を食いしばる他出来なかった。
「……部屋に戻って頭を冷やせ、冷静になるんだ、お前はシュドティリアには入国できないし、結婚した元婚約者を取り戻す事も出来ないんだ」
……っクソ!
(アルド視点end)
○○●●
アルノーにエスティリア行きを止められてから1週間が経った。
アルノーとリュシアンが学園に行っている日中、私はリュシアンとの結婚式に向けてアレコレと準備に追われていた。
準備には、エイミーのかつてのライバル、ジュリエットも手伝ってくれ、意外と仲良くなってしまったのである。
「なんだかごめんね、ジュリエット達より先に結婚する事になっちゃって……」
「そんなっ気にしないで? 確かに突然の事で驚きはしたけれど、今思えばリュシアン殿下はエイミーさんだけ特別扱いだったもの……きっと、ずっとお慕いしていたのね……」
ジュリエット、いい子……。
「ありがとうジュリエット! 2人の結婚式は、私達も手伝うからね! 何でも言って!」
「まぁ、嬉しいわ、エイミーさんはとてもセンスをお持ちだからドレスの相談に乗っていただけるとうれしいですわっ」
「もちろんっ任せて!」
こうして私は、1日、また1日とをシュドティリアで過ごし、アルドとの幸せだったあのわずか10日あまりを、塗り替えるように日々過ごしていくのであった。
そしてそれからさらに1週間ほど経ったある日の事。
ファリナッチ公爵家の次男、リシャールお兄様が、ずいぶんと疲れた様子で公爵家へ帰宅してきた所に、偶然出くわした。
「リシャールお兄様、大丈夫? ずいぶんお疲れのご様子だけど……」
リシャールお兄様は、王宮で許認可の裁決を行う部署で働く、これまたエリート中のエリートだ。
ちなみに、イケメンのインテリメガネ男子である。
「ああエイミー、お前の顔を見たら少し元気がでたよ……どうもこうも……最近、転移許可がとんでもない量きていてな……裏付け調査に追われてるんだ……はぁ……」
転移許可って、いちいち裏付け調査までしているのか……。
「転移くらい、許可してあげればいいじゃん」
国境の入国審査は超適当なのに、魔法での入国はめちゃめちゃ厳しいようである。
まぁそうか、魔法を使える人は、色々と注意が必要だもんね。
「そうもいかないさ、私達のせいでとんでもない奴が入国してきたりしたら大変だろう?」
「まぁ、確かに……」
「それに最近はエスティリアの王子があの手この手で許可を得ようとしつこくてな……」
「……え?」
リシャールお兄様は、そんな愚痴をこぼした直後、しまった、という顔をして、露骨に私から目をそらす。
「ねぇリシャールお兄様、エスティリアの王子って、エドゥアルド王子の事? 入国申請してるのに、許可出してあげないの? 一体どうして?」
私の笑顔の鬼気迫る勢いの詰め寄りに、お兄様は、やれやれと頭を掻きながら、渋々話してくれた。
お兄様の話しでは、私がこの国に戻った直後から、アルドからの入国申請が何度も来ているという。
正しくは、アルドではなくマクシからの代理申請らしいが。
しかし、アルドのスキャンダルについて、シュドティリアの国王陛下と私の父はたいそうお怒りで、リュシアンと私が無事に結婚式を済ませるまでは、アルドの入国を徹底的に拒否せよと、お兄様達の部署に指示があったのだという。
それでもマクシはアルド以外の名前で申請してみたり、ダミー申請してみたりとアレコレ法律的にもギリギリのラインの方法なども試しているようで、その審議に追われているんだとか。
「エイミー、ちなみにな、ここだけの話しだが、お前のエスティリア行きの許可も出すなとの指示を受けているぞ」
「うっそ! なんで!?」
「知らん……よほど、リュシアンとの結婚を確実のものにしたいのか、お前とエスティリアの王子を会わせたくないか……だろうな」
なんだか怖くなってきた。
私の知らない所で、私の行動や私に係る人の行動が制限されているなんて……ちょっと許せない。
「お兄様、話してくれてありがとう」
「ああ、お前もあっちこっちに愛されて大変だな……」
その夜、私はリュシアンに尋ねた。
「ねぇ、リュシアン、私が戻ってきた日、なんで証人欄まで記入済の婚姻届を持ってたの?」
「え?! なんだよ急に……」
私の突然の問いかけに、若干だがリュシアンの目が泳いだ。
「よく考えたら、おかしいなって思って……まるで、私が戻って来るってわかってたみたい」
「お前が戻ってくるのは、皆が予想してたぞ? エイミーが浮気されて、我慢出来るわけないからな」
からかうように笑うリュシアンに、私は目を細めじっと見つめる。
「……」
「なら、私とアルドの婚約が勝手に無効にされてて、あんたとあっさり結婚できたのはどうして? なぜ、事の真相を当事者である私とアルドに確認も取らずに勝手に無効にしたの? 無効にできるのは、国王陛下……つまり、あんたの父ちゃんだけよね?」
「……」
リュシアンは気まずそうにしながら、必死に言い訳を考えている。
「……さぁ? なんでだろ」
しかし、奴は考えるのを諦めたのか、ふざけた返事をする。
「っおい! (バシンッ! )ふざけるな、真面目に聞いてんだけどっ」
「痛い……エイミー酷い、父上にも叩かれた事ないのにっ」
私が叩いた後頭部を押さえ、うるうるとわざとらしい演技をするリュシアンにさらに頭にくる。
「なら何回でも私が叩いてやるわよ! (バシン、バシン! )」
「イテッイテッ! やめろってエイミー! わかったよ、話すよっ話します!」
よろしい、ったく……さっさと話せばいいものを……。
「アルノーに言われたんだよ、あいつが俺にエイミーは必ず帰ってくるから、婚約をすっ飛ばして結婚の許可を貰ってこいってな! 父上と公爵からサインを貰えとも言われたぞ」
「……アルノーが?」
アルノーがどうしてそんな事を?
まさか本当に私を養うのが嫌だったのだろうか……ガーン。
「そう……アルノーが言ったならまぁ、しょうがないか」
「……なんだよ、怒らないのかよ……エイミーがまともに判断できないような状況で、婚姻届にサインさせて結婚したんだぞ?」
まぁ、確かに言われて見ればそうだよね。
怒るべきかもしれん……。
「でも、リュシアンと結婚するって決めたのは私だからねぇ……例え判断能力が欠如してたとしても、サインしたのも私だし」
「……え……いいのかよ? 婚姻届の無効申請は3ヶ月以内なんだぞ」
え、そんな申請出来るんだ! すごっ!
なら、3ヶ月のお試し婚とか出来るじゃん!
そんな便利な申請があるのに、なんで再婚禁止期間がないんだ?
しかし、その後の話しで判明するが、婚姻届の無効申請は王族のみに適用される特例措置なのだという。
「私は、アルノーを信じてるの……アルノーが私とリュシアンの結婚を勧めたなら、なんか意味があると思う……リュシアンこそ、自分のこと愛してもいない女と結婚しちゃってよかったの?」
「いい、俺はエイミーが俺のであればそれで」
なんだか、既視感だな……私の事を好きな男はなぜみんなこんな感じなのだろうか。
ただリュシアンは最後に、エイミーにそんなに信じてもらえてるアルノーが羨ましい、とポツリ呟くと、そのまま私をベッドに引きずりこみ、ギュッと抱きしめて眠りについた。
リュシアンの寝息が聞こえ始めた頃、私はまだ考え事をしていて眠れずにいた。
アルドは……いや、マクシがだけど……シュドティリアに来ようとしてくれている……。
その目的は、定かではないがきっと私に言い訳をしたいのだろう。
アルドの耳に、私とリュシアンの結婚は伝わっているのだろうか?
そりゃ速攻伝わってるか、一国の王子の結婚だもんね。
また窓ガラス割ってないといいけど……でも、モロー侯爵とカトリーヌのことでそれどころじゃないか。
もしかすると、律義にカトリーヌと結婚するからって報告をしようとしているのかもしれない。
あ~あ……あの昼下がりの木陰で過ごした時間が最後になるとは……。
あんなに幸せな時間が最後だなんて、アルドの事忘れたくても忘れられないじゃん……。
ごめんねリュシアン……。
明日からは切り替えるから、今夜だけはアルドの事思い出させてね……。
私はその夜、アルドを想い眠りについた。
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