【R18・完結】婚約解消した王子が性癖を拗らせて戻ってきた

hill&peanutbutter

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第一章

9 逢瀬 R18

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 (アルド視点)


「やっ、ちょっと! アルドっ! ははっ!」






 その日、私は最高に幸せな朝を迎えていた。

 初めて共寝した朝、エイミーより先に目を覚ました私は、隣で無防備に寝息をたてながら幸せそうに眠るエイミーの姿に感動し、しばらくの間じっっと見つめていた。
 

 白い肌に血色のいい唇……何とも魅力的だ。


 しばらく見ていたが、目を覚ます気配のないエイミーに、なんだか少し物足りなさを感じてしまった欲張りな私は、エイミーの耳元に唇を寄せ、声をかける。

「エイミー、可愛い可愛い私のエイミー……マイスイートエイミー……」


 すると、ニヒャァっと微笑んだではないか。

 だが、まだ眠っている様子……私はそのままエイミーの耳元から頬にチュッと口付け、ゆっくりと自分の唇をエイミーの首すじに軽く触れる程度に這わせた。


(これでもまだ起きないのか?! ちょっと鈍感過ぎないかエイミー……)


 私の唇はあっという間にエイミーの鎖骨に到達し、それより下は禁断の領域……。

 身体が横向きになっているために、エイミーの柔らかそうな胸は片方に流れ、ハッキリとした谷が出来ている。

 挟まったら逃れる事など不可能でありそうな深い深い谷だ。

 だが、私とて立派なエスティリア男児だ、恐れたりはしない。


 ゆっくりとエイミーの寝間着の前のリボンを解けば、一気に谷がこぼれ出てきてしまう。


 私はゴクリ、と生唾をのむ。


 エイミーはこれでも起きる気配はない。
 よほど熟睡しているのだろう、私と初めて共寝してこんなにも安心しきって熟睡されてしまうとは、男として些か問題かもしれないが、婚約者としては気を許してもらえているようで嬉しい限りだ。


 そして……私のイタズラ心に火が灯る……。


 そっと両手でエイミーのこぼれ出た胸に触れ、すくい上げると、初めて触れた女性の胸の柔らかさに感動した。

 今まで、知らぬ令嬢にコルセットから盛り上がった胸を押し付けられたり、私の手を持っていかれたりしたことはあったが、こんなにも無防備な、何にも阻まれることのない胸は初めてである。


 エイミーの胸の中心には、桃色をした小粒の先がついており、ツンッと私に向かって主張していた。


 見ているだけでは我慢がきかなくなった私は、その先をぺろりとひと舐めする。


 すると、ようやくエイミーの身体が若干だが反応を示す。


「んん……?」


 私は調子にのり、そのままエイミーの先を咥え、ゆっくりとその胸を揉み込む。


 私の指一本一本を捉えるほどに、吸い付くようなその肌と弾力と重量感のあるエイミーの胸は、とてもいい香りがした。


「んっ……くすぐったい……やだっ……」


(起きたか? 許可なしにこんな事をして怒るだろうか……変態と言われるだろうか……まぁ、変態くらいであればこの幸せに比べたら……)


 私は胸を先に舌を這わせたまま、チラッとエイミーの顔を見た……そして、ハッキリと目が合う。


「っアルド?! 何してんの! いや、ナニしてんだろうけどさ……そりゃ健全な18歳男性ならばそりゃそうなるか……(ゴニョゴニョ)」


 エイミーはこの状況に若干驚いた様子を見せるも、怒っている素振りはない……いいのだろうか?


 私は、ヤメロ、と拒絶されない事をいい事に、より大胆にエイミーの胸に触れた。


「やっ、ちょっと! アルドっ! ははっ!」



 ……と、冒頭につながるわけなのだ。


 初めこそくすぐったいと言っていたエイミーだったが、次第に甘い吐息をもらしはじめる。


「ん……っアルドっ……朝から駄目……っ……ピクンッ」


 そんなエイミーの可愛らしくも女性らしく妖艶な声と表情に、私の息子も限界だった。


(耐えろ……まだ駄目だ……)


 私は名残惜しい気持ちいっぱいのまま、胸から顔を離し、エイミーの唇に口付ける。


(……あ、もしかすると、これが初めての口付けか? クソッこんなはずでは……っ! )

 本当は、エイミーとの初めての口付けはロマンチックな状況を演出したかったのだが……気持ちが先走ってしまった……。


 エイミーも、同じ事を思ったのだろう。

 私との初めての口付けに、エイミーは一瞬、その美しい目を開き驚くと、直後ふっとチカラが抜けたように優しく微笑んだ。


 そして彼女は私の両頬を自身の両手でふわりと覆い、そのままゆっくりと深く舌を交じ合わせ、絡めた。


(なんて言う事だ……)


 ここで止める事の出来る男などいるのだろうか……いや、それは男ではない!


 私はエイミーをベッドに沈め、上に跨るように組み敷くと、さらに深く口付けを交わした。


「ん……っ……んん……っ……はぁぁ……」


 エイミーから聞こえる甘い吐息にすでに暴発寸前だ。


 私は無意識に自身を……硬くなった息子をエイミーに押し当てる。


「っ……!」



(駄目だ! こんな状況で出すなどかっこ悪い所は見せられない! クソッ! )



 私は、泣く泣くエイミーから離れた。


 私が離れた直後に見せた、彼女の少し残念そうな表情がまたも私を惑わす。



「エイミー、おはよう……今日も可愛いな……チュッ」


 私は白々しく、朝の挨拶をし、彼女の額に軽く口付ける。


「……」

 キョトンとしたエイミーが可愛すぎて、また押し倒してしまいそうになるが、グッとこらえる。



「おはよう、スケベな王子様っ(ニコッ)」

「おはよう、私をスケベ王子にする魅惑的な婚約者殿……チュッ」


 エイミーは何故か手を差し出したので私はその手をとり、そっとその甲に口付けた。



 (アルド視点end)



 ○○●●



「エイミーお嬢様? どうかされました?」

「っえ?! 何も?! 何もないっ!」

 いかんいかん……今朝の事を思い出してついぼーっとしてしまったじゃないか。


 今朝、起きぬけに、私の胸で遊んでいたアルドを見た時、健全な18歳男性である事に安堵するその一方で、触れられる事に喜びを感じ、もっともっとと彼を求めている自分に少し驚いてしまった。


 まさかのタイミングでの初めての口付けも、案外良かった。

(アルドのキス、好きだなぁ……またしたい……)


 コレからは、たくさんキスしてもらおうと、愚策する私だった。



「王子殿下との初めての共寝はいかがでしたか?」

「……んー、アルノーとリュシアンと4人で少し話したの、その後はくだらないお喋りをして、気付いたら朝だった!」


「そうでしたか、健全な初日だったのですね」


 夜はね、夜は健全だったよ……朝は不健全だったけどさ。

 なんだろう、いつかマリーの顔を直視出来ない朝が来るのかと思うと、なんだか恥ずかしいな。

 乱れた寝具の片付けとかされたら、即バレだもんね……。


「それにしても、王子殿下が突然変わられたので、私もリズもティナも驚いてしまいました……あんなにも女性に対して甘い御方だったなんて……」

「多分、あれが本当のアルド何だと思う……私に手紙を送り続けてくれた人はあんな感じだったもん」

 手紙の宛名や文面から伝わってくる、私への想いは9歳だろうが10歳だろうが、それは間違いなく当時のアルドからの愛だった。

 だからこそ、エイミーも嫌い嫌いと言っていたわりにアルドからの手紙を捨てずに大切にとっておいたのではないかと思う。


「お嬢様もそう思われました? 私共も、王子殿下があまりにも自然でいらっしゃったので、むしろ冷たい態度の時の方がどこか無理をされていたようにお見受けいたしました」


 マリー達がそう感じたなら、この城の昔からアルドを見ていた人達もそう感じてくれるだろうか。


 私も、アルドの愛を受けるに相応しい婚約者にならないと……。


 よしっ、頑張ってみようじゃないの!


 異世界でも、ランキング1位を総嘗めにしてやるんだから! ……ランキングがないなら、発信するまでよ!





 こうして私は、アルドとの約束のひと月を、再び自分を磨く事に費やす事に決めたのだった。





 ○○●●




 (アルド視点)



 ぼーっ……。

 ぼーっ……。



「殿下? ……っ殿下?」

「……ん? なんだ、マクシ」


 駄目だ、集中出来ない。
 
 朝から一緒で朝食も共にしたと言うのに、もうエイミーに会いたい。

「……マクシ、私はこんなにも恋愛体質だったのだろうか……」

「どうでしょうね、後にも先にも殿下にはエイミー様しかおられませんでしたし、その間のほとんどが、全く相手にされませんでしたからねぇ……」


 ハッキリ言うな、マクシめ……いや、本当の事だけれども。


「ですが殿下、恋愛に溺れるのもいいですが、仕事には集中してください」

「集中したくても出来ないんだ……すでにエイミーに会いたい」

 マクシは、私が朝食でエイミーと過ごしてから、まだ1時間も経っていない、と私を責める。

「……エイミーは今日、何をしているんだろうか?」

「先ほど、エイミー様の侍女が来て王宮図書館の利用許可を求めてきましたので、おそらくは図書館にいらっしゃるのでは?」


 図書館だと? 聞いていないぞ、図書館は私が案内してやりたかったのに。


「何故それを早く言わないんだマクシ!」

「言った所で殿下には仕事がございます、この書類の山を片付けない限りはこの部屋からは一歩も出しませんからね」

「……」


 側近が鬼すぎる。



 それにしても、エイミーは図書館で何をしているんだ?
 また何か恋愛小説でも物色しているのだろうか。

 まさか、今夜もまた本を読んで寝るだけになるのでは?


 いや、その方がいい。

 朝のような事になってしまったら、自分を抑える自信がないからな。


 朝、あの後私は風呂で2回ほど自分息子を諌めた。

 寝る前にもまたしておかねば……。



「ところで殿下、王妃様がエイミー様とお茶の席を設けたいという事でしたが、いかがされますか?」


 早速、母上の耳にも私とエイミーの情報が入ったか。


「いいだろう、私も同席しよう」

「いえ、殿下は仕事がございますので無理です、王妃様もエイミー様と侍女だけで、とご希望でした」

 なんだって? エイミーだけで母上の前に行かせるのは危険過ぎる。

 母上は些か私の事を大事に思い過ぎているフシがあるので、エイミーに対して何を口にするか心配だ。


「殿下、エイミー様とていずれは王子妃としてこの国の王族の一員になられるのですから、いつまでも殿下が守ってばかりもいられません、それならば最初からお一人で挑まれたほうがエイミー様のためかと」

「しかしだな……」


 マクシの言う事もわかるのだが……心配だ。



「まぁ、今更なんですけどね、先ほど図書館と申し上げましたが、今は王妃様とのお茶会の真っ最中かと」

「っマクシ! お前! 私を騙したな!」

「時に必要な嘘もございます」





 (アルド視点end)


 ○○●●


 今日は王宮図書館に行く予定にしたのだが、朝食の後、突然アルドの母親であるこの国の王妃様から、お茶のお誘いを受けてしまった。

 王妃様からの誘いを断るわけにもいかないので、私は渋々お茶会へと向かったのだが、よく考えたら、私、めちゃめちゃ嫌われているのではないだろうか……。


 貴女にはアルドは相応しくない、今すぐシュドティリアに帰りなさい、とか言って、紅茶ぶっかけられたらどうしよう。

「マリー、念の為タオル持って行こうかな」

 ハンカチじゃ事足りないかもしれない。




 そして、王妃様とのお茶会は花が咲き誇る庭のガゼボで行われたのだが、私は王妃様を見て驚いてしまったよ……。


(すっごい美人……)


 いつだったか、肖像画で見たけど、本物は断然若くて美人だ、国王陛下も肖像画では凄くイケメンだったので、アルドが美形なのも納得である。


「城での生活はもう慣れた?」

「はい、皆さんとても良くしてくださいますし、こちらのベッドの硬さがとても心地よく、ぐっすり眠れております(ニコニコ)」

「あら、ベッドの硬さは大事よね、身体に合って良かったわ(ニコニコ)」


 なんだろう、不思議な会話だ。


「ところで……最近、貴女について考えを改める必要がある話を耳にしたの」

 きた……。


「……いいえ、人の噂で私への不快に思われている御心を改めて頂く必要はございません、失礼でなければ王妃様がその目で見た物でご判断頂けますと幸いです……」


 きっと、マクシあたりが布教活動にせいを出したのだろう。


「あら、喜ばないのね? そうね、確かに貴女がかつて私の息子にした仕打ちは許されるものではないわ」

 そうですよね~、おっしゃる通りでございます!

「返す言葉もございません……」

 そろそろ紅茶が飛んで来るだろうか? もう少し冷めてからにしませんか?


「ならば、私は私の目と耳で見聞きした事で貴女を判断しようと思うわ」

「寛大なお心に感謝いたします…… 」




 それから私は王妃様から尋問のようにあれやこれやと質問攻めにされるも、誠心誠意答え続け、ようやく尋問タイムが終了したかと思いきや、王妃様はそのまま席を立ち、自慢の庭を自ら案内してくださると言って歩き出した。

 日傘をさしながらついてくる侍女が、大変そうで見ていられなかったので、私は侍女から日傘を預かり、王妃様の頭上にかかげる。


「まぁ! こんなに沢山の色の薔薇は初めて見ました! 綺麗ですね」

 見渡す限り薔薇だらけなので、とりあえず、薔薇を褒める。

「あら、薔薇が好きなの? 世界中探しても、ここまで色の種類があるのは私の庭だけだと思うわ」

 王妃様は誇らしげにそう言い、品種について自慢気に語りながら案内してくれるので、私もほんの少々うんちくを披露してみることに。

「王妃様、薔薇には、色によって異なる花言葉があるのはご存知ですか?」

「……あら、そうなの?」

「はい、諸説ありますが、赤はよく知られているとおり、あなたを愛してますや、愛情です……このピンクは上品、可愛い人……紫は気品や誇り、尊敬……黄色は友情、平和、嫉妬……オレンジは無邪気、絆、信頼……白は純潔、私はあなたにふさわしい……などです、あ、贈る本数でもまた違った意味があるんですよ(ニコニコ)」

 私は眼の前に広がる沢山のカラフルな薔薇一つ一つを手にしながら、王妃様に伝えた。

 私は貴族に嫁ぐ事も視野に入れていたので、ありとあらゆる書物や図鑑を読みまくっていたのである。
 幸い覚える事は得意なので、大体頭に入っていたのだ。

 だから私は、うんちくなら誰にも負けないんじゃないかな。


「エイミーさん、貴女凄いわね! 他の花にも詳しいの?」

 王妃様はとても花が好きなようで、突然私の名前を口にし、少し興奮気味に私に尋ねてきた。

 嫌な気はしなかったので、そのまま王妃様と庭を歩きながら咲いている薔薇以外の花についても、知りうる限りのうんちくを口にしながら、ぐるりと庭を一周したのである。


 王妃様には私とのうんちく付庭散歩に大変ご満足頂けたようで、私は初めての姑とのお茶会というミッションを無事にクリアする事が出来たのだった。




 その日以降、何故か顔を合わせたこともない国王陛下の侍従が私の所へやってきては、やたらと花言葉を尋ねてくるようになったのだが、どうやら陛下は花言葉の意味も考えながら王妃様に花を贈りはじめたようなのである。

 アルドのお父様は素敵な男性だな、と私の心はほっこりと温まった。

 アルドは、父親似なのかもしれない。


 でも、ひとつハッキリしているのは、王妃様は私の事を少しは気に入ってくれたのでは? と言う事だ。

 そうでなければ、自分の夫に私の話なんてするはずないし、それどころか国王陛下の侍従に私を訪ねるように指示したりしないはずだ。


 ミッション大成功!

 嫁にしたい令嬢ランキング1位も夢じゃないな。





 ○○●●



 (アルド視点)



 マクシの陰謀により、エイミーに突然の母上との茶会などという辛い時間を過ごさせてしまったのだから、詫びをしろ、とマクシに命じると、奴は意外と素直に私の執務の時間の融通をきかせてくれたのである。


 翌日の午後、早速私は庭でエイミーと待ち合わせをした。

 待ち合わせ場所に先についた私は、彼女が来るのを心待ちにしながら城の出入口をじっと見ていたのだが、エイミーは何故か使用人が使う裏の通用口の方から現れたではないか……一体なぜ……。



 しかしそんな疑問も、私の姿を見つけ、名前を呼びながら嬉しそうに手を振り、駆けてくるエイミーにキュンとしているうちに、どうでもよくなる。

 貴族の令嬢は人前で走ることなど滅多にしないはずなのだが、彼女は気にする事なく私の方へ向かってきた。
 
 なんだか、それだけでエイミーにとって私が特別に親しい関係であるような気がしてニヤついてしまう。
 
 
 
(か、可愛いが過ぎるぞエイミー……一体、私をどうしたいんだ)
 
 
 私のもとにたどり着いたエイミーは、そのままボスン、と抱きついてきた。
 彼女の頬は赤く色づき、若干乱れた呼吸と、私に向けられたその健康的な笑顔は眩しく、私はとっさに言葉が出てこない。


(なんて美しいんだエイミー……)

 
 
「今日は天気がいいわねっ、おやつを持ってきたの! 好きでしょ? 一緒に食べましょ!」
 
 彼女は私の腹部をチラッと見た後、ニコリとした。
 
 今の私の腹部を見ても別に腹が出ているわけでもなんでもないのだが、彼女は私の昔の体型を思いだし、菓子が好きだと思ったのだろう……若干ショックだったが、事実、菓子は好きだった。
 
 当時、甘い菓子が私の好物だからと、城のパティシエ達は試行錯誤を重ね、数々の菓子を生み出してくれた。
 その腕前とレパートリーは、他国からも絶賛されるほどである。
 
 しかし、パティシエには悪いが、私は今の体型になって以降、あまり甘いものは口にしなくなり、特に食べたいとも思わなくなっていたのだ。

 
「ああ、昔は好きだったな」
 
 
 しかし、エイミーが持ってきた菓子はどれも初めて見る菓子だった。
 パティシエは今も新作を考案し続けているのだろうか?


「これはね、マカロンっていうの、そんでこっちは生ドーナツ、こっちはフロランタン、これはミルク饅頭! 全部私がマリー達と作ったんだから!」

「え? エイミーが作ったって?! 本当か? ……食べるのがもったいないな……」


 私は感動した。

 エイミーは、私とのこの時間のために、今日の朝食の後すぐに調理場へ行き、こんなにたくさんの手の込んだ菓子を作ってくれたのだという。


 エイミーの菓子は、見た目も味も完璧だった……彼女にこんな特技があったとは、実に意外だ。


 彼女には毎日毎日、驚かされてばかりで本当に退屈しない。


「エイミー、私のためにありがとう、凄く美味いよ」

「当たり前でしょ、愛がこもってるんだからっ」


 そんな風に軽々と私への愛を口にするエイミーに対し、なんだか悔しくなってしまった私は、少し意地悪をすることにした。


「エイミー、お礼がしたい、おいで」

 私はエイミーとシートを広げ菓子を食べていた木陰の木に座ったまま寄りかかり、両手を広げた。


 エイミーはキョロキョロと辺りを見回したあと、私の上に跨るように抱きついてくる。


 ああ、こんなに幸せ過ぎていいのだろうか。


 私とエイミーは、初めてのキスをして以降、頻繁に唇を重ねるようになっていた。

 マクシや侍女が席を外し、2人きりになったわずかな時や今まで額にしていた別れ際のキスも、今は唇になっている。


 エイミーはキスが好きなようだ。

 
 
「……んっ……んん……」
 
「エイミー、甘いな……」

「アルドっ……んっ……っ」


 エイミーが私に抱きつき、私はエイミーを抱きしめると、今ではごく自然に重なる私達の唇と唇。
 人気のない昼下がりの木陰で、私達は舌を絡ませあい、夢中で互いの唇をむさぼり合う。

 若干だが、私の上に跨るエイミーの腰が自然に前に前に進み、私の息子の上に座ってしまっている。

 この状況で立つなという方が無理があるわけで……スラックスの中でしっかりと大きく硬くなる私の息子の上で、エイミーはわずかに腰を揺らす。


 駄目だ……初夜まで我慢出来ないかもしれない。

 初夜だ何だと言っているが、実際は初夜をまもる者など今の時代誰もいないわけで……それは王族とて例外ではなく、兄上も義姉上とは結婚前に身体をつなげたと言っていた。


「……エイミー、君さえ良ければ初夜を待たずに抱いてもいいだろうか……早く君の中に挿りたいと、こいつが言っているんだが……」

 すまん息子よ、お前のせいにしてしまった……許せっ。




「っぷ……はははっ! アルドのこの子は主張が激しめだもんね! でもいいの? まだ約束のひと月まで20日以上あるけど」


「……エイミー、私達は遠回りし過ぎたんだ……私と君の相性は最高だと思う……そう思わないか? 私はひと月を約束した翌朝にはすでにもう君が私の隣にいる未来しか考えられなかった」


 あれからまだ10日ほどしか経ってはいないが、私達は確実にお互いを想いあっている。
 少なからず、エイミーも私の事を好いてくれているはずだ……。





「よく、男は下半身で考える生き物だって言うけど、女だって本能的に子宮で考える時があるの……」

 なんだ、エイミーが何を言いたいか、全くわからない。


「……初夜は2人の初めての夜って意味であって……2人が繋がりたいと思って繋がる事が大切だと私は思いますが、エドゥアルド王子はどうお考えになりますか?」


 ああ、これでこそ私の愛するエイミーだ、型にはまらず自分の考えをきちんと持っている素敵な女性……。


「……私も婚約者殿と同じ考えだ……なら、今すぐ繋がっても?」


 今すぐと言うのは、冗談だが、それくらい私は早く繋がりたいと言う気持ちをエイミーに伝えたかった。



「っ! 今は駄目よ! 外じゃない! この変態王子! 初めてが青姦だなんで絶対嫌!」


「ははは、冗談だよっ……だが、今夜はベッドに薔薇の花びらが飾られているかもしれないぞ」


「王妃様の大切な薔薇を拝借してこないでね?」

「……いい考えだ」

「っもう!」









 こうして私達は束の間の逢瀬を楽しんだ。
 
 
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