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第一章
2 協力者
しおりを挟む「エイミー、本当にもう学園に復帰するの? まだ倒れてからひと月も経ってないわ、もう少し休んでいたらどう?」
「そうだぞエイミー、後遺症の件もあるし、無理しなくていいんだぞ?」
私がエイミーに憑依してから約20日ほど経過し、私は学園に復帰することにした。
エイミーの両親と兄弟達は、家族が私に成り代わったことに全く気付いてはいない……いや、はじめの数日間は別人のようになったエイミーに少し戸惑ってはいたが、高熱で意識不明だったことの後遺症であるとして受け入れ、今では全く気にしている様子はない。
むしろ、傍若無人さが消えたことにより安心すらしている気もする。
私はといえば、自分がエイミーになったこの状況を夢だなんだと思って逃げるのではなく、死刑回避のために全力で向き合う方向に気持ちを切り替えた私は、その時からエイミーを演じることをやめた。
頭がおかしくなったと思われてもいいと開き直り、私は私自身のまま、エイミーという名前で生きていくことにしたのである。
幸い、この世界の様々な常識やエイミーが学んできた知識なんかは自然と私の記憶のように頭に流れ込んできたため、何の不都合もなく生活することが出来ている。
きっと、所詮憑依しただけなので、意識的な部分のみで、脳みそ的な部分はエイミーのままなのだろう……と、いう事にしておく。
「アルノー! 遅れちゃうっ行こう!」
「姉上、その淑女らしからぬ話し方は学園ではおやめください」
二つ下の弟、アルノーも同じ学園に通っているため、この日から同じ馬車で通学することにしたのだ。
この二人、私が目覚める前までは仲が悪く、同じ目的地に向かうのに、わざわざ違う馬車で通学していたのだと言う……。
せっかく血のつながった弟がこんなにイケメンなのだから、仲良くしない手はない、イケメンは見てよし触れてよし側に置いてよしなのだから、弟がそうだなんて、とてもお買い得である。
「ごめんごめん、わかってるよ、学園では淑女の言葉使いを使うから、今はまだ許してっね?」
「……約束ですよ? ただでさえ僕は姉上のせいで学園で微妙な立場なのですから……まぁ、覚えていらっしゃらないとは思いますが……」
ごめんアルノー、全部覚えてる。
後遺症で記憶喪失気味という事になっている私は、都合の悪いことは覚えていないことにして、すべて心機一転やり直すことにした。
学園についても、同じようにそれで通して、ひどいことを言ったりしてきた人たちには謝罪しようとすら思っている……ただし、ジュリエットには絶対に関わらないと決めたので、謝罪もしない。
なぜなら、近づくことすらしなければ、要らぬ容疑もかからないだろうと考えたのだ。
そして今、馬車の中でアルノーと二人……私は満を持して、アルノーにある相談を持ち掛けた。
「アルノー、あのね、アルベール殿下の婚約者のジュリエット嬢っているじゃん?」
アルノーは、私の言葉にギョッとしながら、私の顔を確認するかのように凝視する。
「何よ、まだ何も言ってないけど……」
「いや、だって……殿下、とか、嬢、とか言ってるから……」
ああ、そうだった。
今までのエイミーはアルベール様、ジュリエット、と呼んでいたんだっけね、どうでもいいじゃんそんなの。
「まぁまぁ、今までの事はもう忘れてっ言ってるじゃんっ、どうかしてたんだってば」
「……僕が思うに、確かに姉上はどうかしていましたけど、今も違う方向にどうかしています」
なんて手厳しい弟なんだ……私のマネージャーより冷めてる……まぁいいや。
「それでね、私って今までジュリエット嬢に散々、そのぉ……」
これはアルノーがどこまでエイミーの悪事について知っているか調べるためにわざと回りくどい感じで話を振っているのだが……。
「嫌がらせしてましたね、それも、しょうもない嫌がらせばかりをしつこく……王太子殿下にもバレていたと思いますよ……好きな人に嫌われるようなことをする姉上の事が、僕には全く理解できませんでした」
おっと……さすがイケメンアルノー、エイミーが殿下を好きなことまでまるっと全部お見通しだったようですねっはははっ!
だが、それならば話は早い。
「アルベール殿下の事はもうどうでもいいんだけどさ、さすがに今までの嫌がらせは、まずかったと反省してるわけ! だからね、アルノー……私がジュリエット嬢の半径5メートル以内に近づかないように協力してくれない?!」
アルノーはファリナッチ公爵家で一番魔法に長けており、この歳ですでにこの国の魔法省への就職が内定しているほどに優秀なのである。
「……姉上、自分で近づかないよう気を付ければ済む話では? 僕の魔法に頼らなければ、無意識に嫌がらせをしてしまうとでも?」
「っそうなのっ私、記憶が曖昧でどこかおかしいじゃない? だから、何しでかすか自分でも不安なのよ……これ以上、アルノーに学園で肩身の狭い思いもさせたくないし……こんなこと頼めるのアルノーしかいないし……」
アルノーが素直に引き受けてくれるとは端から思ってはいない、だが、アルノーのようなツンデレさんタイプには、こちらが下手に出て、同情を誘う感じで頼ればきっと……。
「……半径5メートルに対象者が近づいたら察知できるような魔法ならかけてあげられますよ……後は自分で逃げるなり避けるなりして何とかしてください」
よっし! やっぱりチョロいなっ、アルノーみたいなタイプって、なんだかんだ言って、頼られると断れない性なんだよねっ。
「っありがとうアルノー!」
私はイケメンな弟を思いっきり抱きしめた。
「ぅわぁ! 何してるんですかっ危ないですよっ!」
とかなんとか言って、耳を赤くして照れくさそうにしているアルノーはとても可愛い……萌え……見た目はいっちょ前なイケメンなアルノーでも、実年齢24歳の私にとっては15歳の少年なんてまだまだ子供にしか思えない。
アルノーはそのまま私の両手を握り、何か魔法を唱えた。
「王太子殿下の婚約者さんが半径5メートル以内に近づいてきたら、罪悪感で胸が苦しくなる魔法をかけておきました、これで自分のした行いを十分反省してくださいね」
なんと……胸が苦しくなるだと? なかなかシュールな魔法をかけてくれちゃったのね、弟よ……。
「姉上は僕よりも魔力の保有量がずば抜けて多いのですから、いつまでも僕の魔法に頼らずに、自分で魔法を学んだらいかかですか? 以前の姉上なら魔法の習得は進められませんが、今の姉上なら魔法をおかしなことには使わないでしょう」
「え?! そうなの?! 私って、魔力持ってるの?!」
それは初耳だ……原作ではエイミーが魔法を使えるなんて一切出てこなかった……まぁ、悪役のエイミーが魔法なんて使えたら、アルノーの言う通り、おかしなことに魔法を乱用してとんでもない事態になっていたことだろう。
「……当たり前ではないですか、母上の血が流れているのですから……母上の故郷のエスティリアの別名まで忘れたのですか?」
東の大国エスティリアの別名……それは、“魔法大国エスティリア”である。
「忘れたわけじゃないけど……そっか、私も魔法が……」
私が一人でニヤニヤしていると、ツンデレなイケメン弟アルノーが突然デレた。
「姉上がどうしてもとおっしゃるのなら、僕が教えて差し上げますけど……」
どこを見ているのかわからない方向を見ながら、ものすごく照れくさそうにそんなことを言うアルノーが、私にはもはや尊いものに見える。
……アルノーがヒーローだったら、ぜったいヒロインは恋しちゃってる瞬間だな。
「アルノー! どうしてもっ! どうしてもお願いしちゃうっ! 私にもこっそり魔法を教えてっ! お願いっ!」
アルノーの両手を握りしめ懇願する私の様子に、アルノーは満足気に笑い、魔法を教えてくれる約束をしてくれたのだった。
とはいえ、魔力があっても魔法のセンスがなければ、アルノーのように自由自在に魔法を使う事は出来ないようだが……はたして、エイミーには魔法のセンスがあるのだろうか……センスは練習して身に付くようなものではないため、最悪の場合、魔法の習得にはかなりの努力が必要かもしれない。
まぁ、エイミーのやらかしのおかげで、私には今、少し婚約者もいないし、学園を卒業しても実家から出ることはないだろうから、時間はたくさんあるはずだ。
よし、この世界での“魔法のセンスがあると思う令嬢ランキング1位”ゲットして見せるぜ。
○○●●
「すぅ~はぁ~、すぅ~はぁ~……」
学園の門の前で馬車を降りた私とアルノーだったが、エイミーにとっては久しぶり、私にとっては初めての学園を前に、深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから、門をくぐることにした。
「よし、行くわよアルノー!」
アルノーの手を握り、学園の中に一歩足を踏み入れる。
「……じゃっ、僕はこれで……中等部はあっちですので……」
「っえぇ! 行っちゃうのアルノー!?」
容赦なく私を門を一歩くぐっただけの場所に置き去りにするアルノー。
それにしても、アルノーが隣にいなくなり、突然心細くなってしまったぞ……いつも強気なエイミーらしからぬ挙動不審な様子を見られて、逆にイジメられてしまったらどうしよう、などとくだらない心配をしていると、突然背後から声がかけられた。
「その赤髪はファリナッチ公爵令嬢だな!」
「っは、はいっ!?」
声のした後方を勢いよく振り返ると、そこには信号機のような3人が立っていた。
(……レッド、イエロー、ブルー? なんとか戦隊かな?)
しかし、すぐにエイミーの脳みそからこの3人の記憶が流れ込んでくる。
私から見て左側にいるのは、エイミーの赤い髪とは少し異なる、どちらかというとオレンジよりの赤髪の人物、生徒会副会長のパトリックだ。
そして、パトリックの反対側にいるのは、ネイビーに近いブルーの髪をした人物、こちらも生徒会書記のロジェ、そして……真ん中の金髪は生徒会長の……。
「お、王太子殿下にご挨拶申し上げます!」
私はまさかの人物の登場に、スカートの端を少し摘まみ、ゆっくりと頭を下げ、優雅に挨拶をする……も、内心は心臓がバクバクで飛び出しそうだ。
(いやいやっ、ヒーローがこんなに簡単に現れていいわけ?! もっと、もったいぶった感じに遅れて登場したりしないわけ?!)
「「「っ?!」」」
内心動揺しまくっている私の一方で、まさかの私の行動に驚いたのか、生徒会の御三方は固まっている。
それもそうか、アルベール殿下の前では不敬もいいところの態度ばかりだったのだから……おそらく、本当のエイミーであれば、今のような挨拶ではなく、きっとこうだ……。
『アルベールさまぁ~、おはようございますぅ~朝からお会いできてエイミー幸せですぅ~』
と、言って、グイグイとアルベール殿下に迫り、両脇の二人に拒まれる、という流れだろう。
「(小声)……殿下、彼女が高熱で寝込み、後遺症で記憶を失い別人のようになったと言う報告は本当のようですね……」
「(小声)ああ……だが、油断はするな、演技かもしれん」
「(小声)心なしか、表情が不安気に見えますね、彼女のあんな顔は初めて見ます……」
なにやら、ヒソヒソと3人で話し始めた。
しかし、私の身の安全のためならば、ジュリエット同様、アルベール殿下にも近づかない方がいいだろう……コソコソと何かを話を合っている今がチャンスとばかりに、私は失礼承知でその場を辞する挨拶を口にし、一度も振り替えることなくその場を離れ、無事に殿下の前から逃げ出すことに成功する。
と、その時だった。
ズキンッ!
急に立っていることがやっとなほどの胸の痛みを感じたことにより、半径5メートル以内にもう一人の重要人物であるヒロインの接近を感知したのだ。
(アルノーっ、これはっ……痛すぎない?! でも、とにかくっに、逃げないとっ)
痛みから逃れるためにも、ジュリエットからも逃げなければならない。
痛む胸を押さえながら、私は進行方向を変え、フラフラと反対方向へ歩き出した。
(次から次へと、何なのよっ……私は関わりたくないんだっつーのっ! )
しかし、私の歩くスピードが遅いのか、ジュリエットが近づいてきているのかはわからないが、胸の痛みは一向に治まらない。
「……っ……もぅ……ギブ……っ」
ドサッ……
私はそこで意識を手放してしまう。
○○●●
ザァー……
何故かちょっと激しめの水音が聞こえ、私は目を覚ました……目の前には青空が見える。
あんなに苦しかった胸の痛みは、綺麗さっぱり消えている……アルノーに会ったら、察知のお知らせ方法を変えてもらおう、いくらなんでも、辛すぎる……。
「起きたか?」
突然、男性の声がした。
「……?」
私はゆっくりと身体を起こし、声のする方を確認すると、金髪の男性が隣で本を手に座っていた。
「突然俺の目の前で倒れたんだ、覚えてるか?」
「……」
この男性の前で倒れたかまでは覚えていないが、あの状況なら、私は倒れたのだろう。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……助けてくださりありがとうございます」
おそらく私は今、学園内の噴水広場のベンチで横になっていたようだ、どうりでさっきから水音がするわけである。
きっと、状況的に目の前で倒れた私を、親切なイケメンのこの男性が運んでくれたのだろう。
それにしても、この男性……なんだかついさっき見たような髪色だな。
「私はリュシアン・ド・アンドレ・シュドティリアだ」
「リュシアン……シュドティリア……っ……あっ!」
アルベール殿下の弟だ! この国の第2王子!
「リュシアン殿下っ! 申し訳ございません、体調が悪く、すぐに気がつくことができませんでしたっ!」
ヤバい……不敬ってやつだろうか……舞台の脚本にはほとんど出てこなかったキャラだけど、原作ではどうだったっけ……。
「いいさ、私はほとんど表に出ないから……そういう貴女は、ファリナッチ公爵令嬢だろ?」
ああ、またこの赤い髪でバレバレな感じですか? そんなに珍しいの? この真っ赤な髪って……。
「あ、いや……すまない失礼した……貴女の弟のアルノーから毎日色々と聞いていたんだ、高熱の後遺症で記憶があいまいだとか?」
ああ! 思い出した! そうだ、リュシアン殿下はアルノーの親友で、同じく魔法が得意な王子だ。
それにしても、15歳のくせにずいぶんと大人っぽいな……話し方のせいだろうか? やはり王族は違うな。
「あ、聞きました? そうなんですよ! 散々周りに迷惑かけて酷いことしたくせに、都合良すぎて申し訳ない限りなんですけど」
「……」
リュシアン殿下は自分の事をあっけらかんと話す令嬢らしからぬ私を見て、目をパチクリさせ、突然笑い出した。
「ックク! アルノーの言っていた通り、ずいぶんと変わられたようだ、噂とまるで別人だな」
と、私はここで令嬢しゃべりを失念していた事に気付き、どうやって先ほどの失態を取り繕うかを考えなから次の言葉を慎重に考える。
(ヤバい……このままだとアルノーに小言を言われてしまう)
「ォ、ホホホ……全くその通りでございます、ファリナッチ公爵令嬢は生まれ変わったとお考えくださいませ殿下」
……突然の令嬢しゃべりへの切り替えは少し無理がある気はするが、誠意は伝わるはずだ。
「ファリナッチ公爵令嬢、2人の時は先ほどのような話し方でいい、心配するな、アルノーには言わない」
なんとっ! 此奴、エスパーなのだろうか?
でも、殿下直々にお許しを頂いたのだし、アルノーにも言わないでくれるって言うし、いいよね?
「そうおっしゃるなら、お言葉に甘えますよ? あ、そうだ、私の事なんか、エイミーでいいですよエイミーで」
「ああ、ならエイミーと呼ばせてもらおう、俺の事も特別に敬称はいらない」
(あらっ……リュシアンってば、いい笑顔…なら私もお言葉に甘えますよ?)
歳下でなければ恋愛対象だったかもしれないが、さすがに王族の兄弟の両方を追っかけているなんて噂でもたった日には、アルノーに口をきいてもらえなくなりそうだ。
「エイミー、君が倒れた時に一応アルノーに伝達魔法を飛ばしたんだ、そろそろ1限目が終わるから慌てて現れるかもしれない」
1限が終わる……だって?
「ぇえ!? なんてこった! 私、リュシアンに1限サボらせちゃったんですか?! あぁ……アルノーに叱られる……でもそもそもはアルノーのせいだしな……(ブツブツ)……」
「そう言えば、何故突然倒れたんだ? 胸を押さえていたようだが、まだ体調が悪いのか?」
「よくぞ聞いてくれましたっ! それがですね! 聞いてくれます?! アルノーの魔法で……(かくしかじか……)」
私は今朝の馬車での話しを、あろうことかアルベール殿下の弟に、洗いざらい話してしまった。
そして、やはり話した後にヤバいと気付く。
「なるほど……ジュリエット嬢に近づくと胸が苦しくなる魔法か……あいつも、また面白い魔法を自分の姉にかけたんだな……どれ、俺がアルノーの魔法をイジってやろう」
リュシアンはそう言うと、私の両手を握り、何か呟いた。
「……よし、これでジュリエット嬢が近づいても胸は苦しくならないぞ」
「え! 本当ですか? ありがとうございますっ、でも、それならどんな感じで察知出来るようにしてくれたんですか?」
出来れば、何か私だけに音が聞こえるとか、そんなんなら嬉しいんだけど。
「それは、その時にわかるさ、楽しみにとっておくといい、一つ言えるのは、絶対にジュリエット嬢には出くわさずに済むと言う事だ、まぁ、稀に例外はあるだろうがな」
絶対に出くわさずに済むのは有り難いが、例外があるんじゃ駄目じゃないか?
「ところでエイミー、今の話しを聞く限り、君はもう兄上を追いかけまわすのはやめたのか?」
「え? ああ、やめますよ! 今はリュシアンの兄上の事は毛程も興味がないので! ……あ、これは不敬かな?」
それにしても、追いかけまわすのはやめたのか、なんて、やっぱりエイミーは誰から見てもアルベール殿下の事を追いかけまわしているように見えたのか……。
「っふ……ククククッ! 兄上が聞いたらなんと言うかな」
「そのまま伝えないでくださいね?! 私は殿下の兄上の事を諦めた、とでも伝えてあげてください、きっと安心すると思う」
予定外ではあったが、弟というものすごく近しい人物からの言葉なら、アルベール殿下も早々に信じてくれるだろう。
そして、私にはジュリエットをいじめる理由がなくなったと理解してもらえれば御の字だ。
しかし、油断は禁物である。
よくある物語への転生とか憑依ものは、“物語の強制力”とかいうわけわからん言葉もあるからな……。
私の関係ないところで、ジュリエットになにかあっても、なぜか私のせいにされたりするかもしれない。
地道に確実に、私とジュリエット、そしてアルベール殿下は全く関係ないと、周囲に思ってもらうことが重要である。
その時だった。
「姉上っ! 倒れたと聞きましたが!」
走ることや焦ることが大嫌いなアルノーが、走って現れた。
お姉ちゃんが倒れたと聞いて、走って駆けつけてくれるなんて、なんていい弟なのだろうか……。
「アルノー! 可愛い可愛い私のアルノー!」
私は肩を上下して息を切らすアルノーを抱きしめ、胸に顔を埋めてやって、ほっぺにちゅーとした。
「っげ! な、なにをしているのですか姉上! 元気そうではないですか! っど、どういう事です! リュシアンっ!」
「いいじゃないか、お前のせいで倒れてしまったのだから、それくらい受け入れてやれ」
「はい?! なぜ僕のせいで?! ちょ、ちょっと姉上!」
私達は次の授業までしばらくの間、こんな茶番を続けた。
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