48 / 51
48 想像の上をいったよ
しおりを挟む「……ソウハと私は――……。」
「……ソウハとライギは――?」
そんなに言いにくい事なのか、やけにためているライギ。
「……満月の夜にだけ、特別なチカラが使えるんだ。」
「……は? えっと……それは、魔法、的な?」
またファンタジーきましたかね?
「魔法? おそらく違うな。」
「……。」
魔法じゃない特別なチカラって何かな?
宇宙と交信できるとか? 鬼のチカラを使えるとか?
「羅刹鬼の呪術と白虎の妖術なんだが……その……すまない、実は幼い頃私が……ちょっとチカラを試すだけのつもりだったんだ……本当にすまない……。」
ん? どうして私に謝るんだろうか。
なんだろう、胸騒ぎがしてならない。
「レイラン、君は本当にシュウ家の姫なんだ。間違いなく、あの夫婦と血の繋がる子だ。」
ん? 急に何の話し?ライギ、誰かと勘違いしてる? え? 何それ何それ……?
「ライギ、もっとわかりやすくお願いします。」
「……わかった。」
ライギは腹をくくったように真剣な表情で、私の手を離すまいと、両手で包み込むように握り直した。
「――レイラン、君が赤ん坊の時、私は父上と一緒に出産のお祝いにシュウ家を訪れていたんだ。その時……あろう事か幼い私は、使いこなせていない自分のチカラを使い、君をどこかへ飛ばしてしまったのだ。」
……え?
今、とんでもなく聞き捨てならないセリフが……。
想像の上をいったよ。
ちょっと待って……。
つまり、本当は私もこの世界の人間だけど、ライギとソウハのいたずらで赤ちゃんの頃に異世界に飛ばされて、店長に拾われた……って事?
「大人になった君を迎えに行ったのは、ソンリェンだ。私は自分が飛ぶ事は出来ないから、何度もソンリェンを飛ばし、ずっと君を探させていたんだ。……ソンリェンも白蛇の妖術が使えるから、君を連れ戻すように命じた。」
ライギのその話は、頭にタライが落ちてきたような衝撃だった。
でも待てよ……。
「あ! あの時の客! 私の事誘拐したコスプレ男! 言われてみたらソンリェンだったかも! なんか着物に忍者みたいな被り物した、変な奴だと思ったんだよ!」
あいつめ、人を道端に捨て置きやがって!
しかし、彼にも事情があった。
私を連れてきたらしいソンリェンは、チカラの負担が身体に大きく出てしまい、途中で私とはぐれたまま、しばらく意識不明だったという。
「本当にすまないレイラン、君の人生をめちゃくちゃにしてしまった私を恨んでくれ。だが頼む……このまま私達の……ソウハの側にいて欲しい。」
さらにライギは言った。
赤ちゃんの私を飛ばしたのは自分だ、と。ソウハは関係ない、と。
だから、ライギは私の前ではあまり姿を現さないのだろうか? 罪悪感を感じているから?
「……ライギさっき、自分はソウハだって言ってたよね、ならソウハも連帯責任じゃない?」
「っ……レイラン、いや、それは……本当にすまなかった……。」
……ライギの顔から笑顔が消え、今にも消えてなくなりそうなほどに不安そうな顔をしている。
愛する人のこんな顔は見たくない。
「ライギ、貴方を抱きしめたいから、手を離してくれない?」
痛いほどに私の手を握り締めるライギから、解放してもらい、私はそのまま彼をギュッと抱きしめた。
ソウハと同じ香りがする。……やっぱり、同じ人なんだな。
「ライギ、今はあんまり考えてないから自分の感情がよくわからないけど、シュウ家のお義父さんが私にそっくりな理由がわかってよかった。あ、もう義父じゃないんだね。本当の私のお父さんか。」
……この時の私には、怒りとか悲しみという感情はなく、なんとなく、他人事のような気すらしていた。
「シュウ家の当主と奥方には君に会わせる前に説明し謝罪をしてある。だから、彼等はレイランが本当の娘だとわかっているよ。」
「やっぱりそうなんだ! 義理の娘のためにしては、色々と親切過ぎると思ってたんだよね!」
その謎も解けたな。よかったよかった。
「……レイラン、その……本当にすまなかった。」
ライギはまるで捨てられた子犬のように不安気に私を見ている。
「ライギ、それに眠ってるソウハも……もう、謝らなくていいよ。むしろ、ずっと秘密にされたままじゃなくてよかった。言いにくい事を話して謝ってくれてありがとね。」
後で怒りが込み上げてくるかもしれないけど、その時はライギの代わりにソウハに受け止めてもらおう。
「レイラン……。」
ライギは私をギュッと抱きしめた。
「レイラン、ついでに言うと、私は一度も君を抱いた事は無いんだ。なんだかずっと申し訳なくてね……だから、君を抱いていたのは間違いなく、いつもソウハだよ。」
安心して、と言わんばかりのライギの言葉に、私は違和感を覚えた。
「なら、もう抱けるよね? どうせ、共有してるなら同じ事じゃない?」
「……え? あ、いや……。」
ソウハもライギも、私にとっては一人の男だ。
ソウハとライギにとっても、私は一人の女だ。
何故か頬を赤くするライギがとんでもなく可愛い。
……この子羊、食っていいだろうか。
「ライギはどんな風に私を抱いてくれるの? やっぱりソウハと手練手管は同じなの? それも共有されてるの?」
「……いや、だからね、あの……レイラン?」
私はライギの服をひん剥き、毎晩見ているその身体に指先で触れていく。
ライギは私の服を脱がせる様子はない。
「ねぇライギ、お願い、触って。」
私はライギの手を自分の頬にピタッと触れ合わせスリスリとした。
そしてチュッとキスをし、ライギの指先を口に入れしゃぶるように舐める。
「れ、レイラン……ソウハに叱られないか?」
「どうして? ライギはソウハで、ソウハはライギでしょう?」
まぁ、鬼と白虎なら性格はやっぱり多少違うみたいだけどね。
「ねぇライギ、キスして?」
「っ……あまり私を誘惑しないでくれ……一度自分の意思で君を抱いて知ってしまったら、ソウハと夜の時間を争う事になりそうだよ。」
何それ、いいじゃん。争えばいい。
私はそっぽを向くライギの顔を両手で掴み、私の方を向かせ、ムチュッと口付けた。
いつも触れあっている人の唇のはずが、全く違う人のもののように感じる。
閉ざされたライギの唇を、私の舌でこじ開ければ、控えめではあるが、ライギも少しずつ私を受け入れ始めた。
なかなか手を出してこないライギ相手に、遊女魂が再燃した私は、一から十までご奉仕してあげたくなってしまう。
「……ライギ、今夜は覚悟してね……絶対にソウハと夜の取り合いさせてみせるから。」
と、意気込んだ最初はよかったのだが、開き直りタガが外れたライギは……すごかった。
逆に私が今後、ライギに代わってくれ、とソウハに頼まねばならないかもしれない……。
ライギは……控えめに言ってもすごかった。かゆいところに手が届くと言うのだろうか……懇願する前に全てを与えてもらえる、欲求のすべてを完璧に先回りで叶えてくれるセックスだった。
まるで私がご奉仕されているかのような……。
毎回こうだと、頭がおかしくなるので、月に一回くらい……いや、週に一回くらいでいいかな……。
ごちそうさまでした、最高でした。
きっと、ライギだけではなく、ソウハも同じように出来るのだろうが、性格的に出来ないのだろう。
彼等は一人で二人分……。
三度の飯よりセックスが好きな私にとって、最高の旦那様であるに違いない。
間違いなく、完璧。パーフェクト。
88
お気に入りに追加
559
あなたにおすすめの小説
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる