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37 私の安眠ディルド R18
しおりを挟む――ソウハの寝顔を見てから眠るって決めていたのに……気付けば彼の腕の中で眠ってしまっていた。
そんなラブソングの歌詞みたいなセリフを口ずさんでしまうほどに、気分良く目が覚めた翌朝。
はっ――!ソウハの寝顔は……?!
あるぅ――!!
神よ! ありがとうございます! 感謝します!
目が覚めて、彼が隣で眠っている。
その奇跡が現実であるかを確かめるために、私は丸出しだった自分の乳首を摘む。
「……痛い。」
夢じゃない。
それにしても……この人、生きてるの?
息してる? 蝋人形にすり替えちゃったよドッキリかな?
実に神々しい寝顔だ――。
窓から射し込む朝日に煌めくキラキラの髪と白い肌、髪の毛と同じ色をした長く太き睫毛の束にヒゲの生える気配のないツルスベの顎。
私は自分の顔の前で両手を合わせ、しかと拝む。
「……私は死んだのか。」
「っ!」
良かった、生きていた。
「腹上死ならまだしも、これからという素晴らしい朝に殺さないでくれるかな。」
……腹上死ならいいのか。
グィっと腕をひかれて、再び掛布の中に引きずり込まれてしまうも、私の目の前にはソウハの大胸筋が見えて、思わずにんまりしてしまう。
「おはようソウハ。」
二度も言いそびれたその言葉を、ようやく言えた喜びが込み上げてきて、つい笑みが溢れる。
「……夢を見ずにぐっすり眠ったのはいつぶりだろうか――今朝は身体もスッキリとしている……おはよう、私の安眠抱き枕。」
猫の次は抱き枕……。でも、何故だ、嫌じゃない。
それなら私もっ!
「おはよう、私の安眠張形!」
「っ! ……張形? 私がか?」
ええ、それはそれは素晴らしい質量で。おかげさまで何ヶ月かぶりのセックスは大満足でございました。
「そうか、張形か、ならば役目を果たさねばな。」
「っぁ……えぇっ?!」
噓でしょっ!?
意地悪のつもりなんだろうけど、私にとってはご褒美なんですけどぉ!
私のディルドは、昨夜の余韻が残り潤ったままの私の中に、後ろからスッと挿ってきてた。
「……っんぁ……ソウハ……っん――」
「私はソウハではないよ、張形だ。」
……根に持っていらっしゃる。
「ディルドさん、ゆっくりもっと、もっと奥を突いてださいますか?」
私がノリノリでそう口にすると、ゆっくりどころかいきなりズンッと奥を突かれてしまう。
「ぁあっ……! ソウハっ!」
駄目だ、すごく気持ちがいい。
寝バックは動きづらかったのか、ソウハは私をうつぶせにし、そのまま上から激しく突いてきた。
同時に私の胸をわしづかみにする少し乱暴な感じがまた……いい。
「っあ……っぁあっ……んっ……ひぁっ!! ……っ!」
私はシーツを握りしめ、伝わってくる衝撃を受け止める。
さらに、クリに手を伸ばしたソウハは、突きながら同時に刺激をくわえてくるので、私はもうあっけなかった。
「ぁっ……っ!! ――ぁ! 駄目っ私もぉ……イッちゃぅ……っんっ……!!」
「っ……! レイランっ!」
ソウハも一緒に果てたようだ。
ちょっとソウハさん! 朝からこれって、最高すぎるんですけど……。
少し呼吸の乱れるソウハはドサッっと私の上に覆いかぶさったかと思ったら、すぐにその重みは消え、代わりに何やら背中がムズムズしてきた。
「ソウハ? 何してるの?」
「あまりに美しい背中だったのでな……花びらを散らしている。」
ギャッ! つまり、キスマークつけまくってるって事?! やめて! ミンミンとお風呂に入れない!
私はゴロゴロとローリングして掛布を身体に巻き付け、みの虫状態になって逃げる。
「駄目っ温泉入れなくなるっ!」
「……私の抱き枕が今度はみの虫になったようだ。」
全裸のソウハは、何やら呟いて、みの虫状態の私をそのまま抱き枕のように抱き、顔だけ出していた私にチュッとキスをした。
「――愛しい私のみの虫。これからは君のこの姿を思い出せばどんなに嫌な事も吹っ飛びそうだ。」
い、いや、こんな姿以外に、もっといい感じの私、いっぱいあったでしょ?! どうして今なの!
しばらくベッドの上でイチャイチャとして過ごした私は、いつ帰るのか、と聞きたくないことを聞かねばならなかった。
あ、でもその前に……。
私は準備していたエチケットアイテムセットの中から、避妊薬を取り出し、飲むことにした。
この世界の避妊はこの飲み薬のみで、行為の前後12時間以内に服用する必要がある。
コップに水を注いで、粉状のそれを飲もうとすると、ソウハが私の手から避妊薬を取ってしまった。
「なんだこれは、薬か? どこか悪いのか?」
ソウハは避妊薬を知らないのだろうか?
「ただの避妊薬だよ、昨日の夜飲み忘れてたから、早く飲まないと。返して。」
「避妊薬?」
「そう、赤ちゃんできたら困るでしょ?」
「そんなものを、飲む必要はないよ。」
そう言って、ソウハはポイッと、ゴミ箱に避妊薬を捨ててしまった。あぁ……地味に高いのに……。
しかし、飲む必要はないって、出来たら責任とるぜ、ってことかな?
この世界の常識がいまいちわかんないから、聞いてみるか。
「私、赤ちゃんできても一人じゃ産んで育てられないもん。飲まないと。」
「一人で産んで育てさせるわけがあるか、私の子だぞ。」
え、どうしてそんなに驚いていらっしゃるの?
「まぁ、もう何か月も誰ともしてないから、間違いなくソウハの子ですけどね。」
それより何? え? この世界は、子供が出来たら自動的にもう、“俺の嫁”っ的な感じなの? 常識だろ? って感じなのだろうか……。
まぁ、今の私だったら、ソウハが相手でそれなら単純にただ嬉しいけどね。
でもさ、ロマンスに欠けるよね。
「レイラン、私はこのまま君を連れて帰りたいと思っていてね。食堂にもこの旅館の主にも話は通してあるよ。すぐに荷物をまとめられるかな?」
「ぇぇええ!? 聞いてないよ!」
なにそれ! それってつまり、こうなる前から連れて帰るって決めてました、って事だよね?!
「今言ったからね。」
いや、そんな朗らかな笑顔で言われても……。
「ソウハ、そんな連れて行くとか職場に勝手に話を通すとかの前に、まず私に言う事があるんじゃないの?」
――好き? っとかさ……――愛してる? っとかさ……! っキャ! 私ってば、何自分から催促してんだしっ!
「ああ、そうだったな……だが、大事なことはこのような素っ裸の状況で言いたくはないな。もっときちんとした状態で口にするべきだろう? そう思わないか、私の愛しい猫よ。」
はぅぅっ!! それってつまり、そういうことですよね!?
「わかった…今回は百歩ほど譲る事にする。準備するから、ソウハも温泉に入って着替えてきなよ、移動中に色々話聞かせてね。」
「聞き分けのいい猫で助かるよ。」
ったく、いつまで人を猫だのみの虫だのと……。でもあの笑顔を向けられると、まったくもって怒る気が失せてしまう。
でも、“レイラン”って名前は遊女時代の源氏名だから、ソウハにはいつか本当の名前を呼んでもらえたらいいな。
ソウハに言われるがままに付いて行き、どこへ行くのかも、この先どうなるかもわからないというのに、呑気に名前のことなんかを考えながら、私はいそいそと少ない荷物を鞄に詰め込むのだった。
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