〈とりあえずまた〆〉婚約破棄? ちょうどいいですわ、断罪の場には。

江戸川ばた散歩

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円盤太陽杯優勝者の供述

10(結)

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 周囲の護衛騎士なり侍従なりは、その様子を注視しているが、彼等は将棋には詳しくない。
 だが皇帝は円盤にガングル・バレスの細かく設定した配置の意味を理解し、その上で対戦している様だった。
 いや、対戦というよりは、対話だ、と護衛騎士の一人は内心思った。
 実際時々二人は声に出す。
 だがそれ自体が、戦術の一環であるかの様に、互いにその言葉をまた咀嚼して駒の動きに反映させるかの様だった。
 ……十五時間くらい経った時に、一旦休憩となった。
 睡眠と食事をする様に、と皇帝はガングル・バレスに命じた。

「了解しました」

 広い卓一杯に置かれた巨大な円盤には、おびただしい数の駒が置かれている。

「私もここで少々食べて寝る。交代する者があるなら、今のうちにしておくことだ」

 周囲は二人の集中度合いについていけなかった。
 ずっと立っている中には、雰囲気に呑まれて脳貧血を起こす者もあるくらいだった。
 起きて顔を洗い、頭の中をすっきりさせた上で再び盤に向かう。
 政務に関しても「よほどの緊急事態でなければ後にする」と皇帝は言い切り、結局この状態が、四日続いた。
 立ち会った護衛騎士は交代に次ぐ交代。
 何よりこの空気に耐えられな、と解放されるとぐったりする者が多かった。
 そしてガングル・バンスが最後に王の駒に肉迫した際、皇帝は「負けました」と頭を下げた。
 周囲はどよめいた。
 皇帝がスパイ容疑者に頭を下げるとは!
 ありえない!

「陛下!」

 さすがにその場に居た最も高い地位の護衛騎士や侍従は声を上げた。

「黙るがいい。私は今までずっと、この帝国が海外から攻撃される場合について、この者と対戦していたのだ。そしてこの者に私は負けた。すなわちそれは、この男の持つ才能は消してはいけないということだ。ガングル・バンス!」
「はい」

 思わず皇帝の声に、彼はその場に直立する。

「其方を私の直属の軍師として迎えよう」
「へ、陛下!」
「ただし! 一応他の目もある。其方から自由は奪う。宮中は自由にして構わぬが、外へ出ることは許さぬ。そして名を変えよ」
「自分はそもそも出場した段で殺されると思っておりましたので、そこはもう、陛下のお望みのままに。名もできれば付けていただければ」
「うむ、それでは――」



 この後しばらくして、南西辺境伯令嬢がイスパーシャ王国の第二王子の元へと「婚約者」として派遣されることとなる。
 彼女は皇帝の命により、この一件を確実なものとして調べ上げる様にと指示された。
 やがてその結果として、第二王子は死亡し、第三王子がイスパーシャ王国を継ぐことなるのだが、それはまた別の話である。
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みんなの感想(47件)

ちゃ
2022.03.01 ちゃ

まだ読んでいる途中なのですが、この構成や流れ、語り手など、も〜ものすごく楽しいです!引き込まれてます!裏話的に詳細を知っていけるのも嬉しいです。時間をとって引き続きじっくり楽しみます。ありがとうございます!

江戸川ばた散歩
2022.03.01 江戸川ばた散歩

感想ありがとうございます!
構成はちょっっと人を選ぶかな、という感じはするのですが、お気に召していただいて嬉しいです!

解除
蘭丸
2022.02.18 蘭丸

肝心な事を忘れてた…(笑)♥

( ゚д゚ )彡そう!別視点から見たら分かる部分も
あり…やっぱり納得です👍

何回も蜜蜂杯では1でも3でも思わず涙腺が
弱くなりました😭しつこいくらい(笑)
個人的に❤あの場面、印象深い❤

伝えたくて再度、感想投稿してしまいました♥

江戸川ばた散歩
2022.02.18 江戸川ばた散歩

おお、熱い再度ありがとうございまする!
m(__)mm(__)mm(__)m
感謝感謝でございます。

解除
蘭丸
2022.02.18 蘭丸

本編+番外編も完結お疲れ様でした♥

蜜蜂杯の場面は…なんか凄く切なくグッと 
来るものがある…(。ŏ﹏ŏ)
表現力が無いから上手く言えないけど…
大筋が分かっての三人の最期だからこそ
余計に(~ ̄³ ̄)~

(・(ェ)・)熊と小動物もイイけど…(笑)

江戸川ばた散歩
2022.02.18 江戸川ばた散歩

はい全編完結でございます。ありがとうございますm(__)m
同じ場面でも、別の視点から見るとどうだろう、ってのありました。
細かい点は番外1で書いたので、3では1の前後を中心に致しました。セルーメの意識が飛んだあとのことはあの話では判らなかったので。

熊と小動物ー♪ そしてその場合小動物系の方がリードするのに萌え。

解除

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