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辺境伯令嬢の婚約者は早く事件を解決したい

43 舞台の裏②

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 セイン王子への問いに続き、彼を教えたデターム氏の件に移った。
 そして現在、かつてセレジュ妃の実家だった伯爵家から彼等の領地を受け継いだマクラエン侯爵や、デタームに近い貴族達の発言があった。
 そこでは茶ルートの存在までが口にされた。
 セレジュ妃が自身の離れで淹れさせていたのは、トアレグの高地の茶だった。
 デタームは利き茶の仲間の中で有名な「特別な茶」をセレジュ妃のもとに直接卸せる様に手配していたのだろう。
 マスリーは言った。
 厨房のものは王都の茶問屋、そして第三側妃の離れのものは、直接売人が卸しに来るのだと。

「だとしたら、茶ルートからあの女性に阿片を入れて使っていた可能性は高いね」
「あの女性は阿片中毒ということですか?」

 違う違う、とトルツ医師は手を振った。

「あれだけの腫瘍が体中にあったなら、常に生きるのが嫌になる程の痛みがあったはずだ。痛み止めとしての阿片をずっと使っていたのだろう」
「医療用にも?」
「無論だ。そこに役には立つ。ただ今日明日、この先、出て来るのはそういう使い道の者ではないだろうからな……」

 ふう、とトルツ医師はため息をついた。

「一体何人あぶり出せることやら。用意した人員と薬品で間に合うか、だな」
「そうあって欲しいものですね」

 今回のそれは、単に麻薬ルート、直接の患者の存在だけでなく、患者となった貴族としての資質や、その家にあっても見つかることがそれまでなかった大きな根本的な問題のあぶり出しでもあるのだ。
 阿片をデターム氏が持ち込んだとは言え、実際に次々にそれに溺れて行くには、原因があるのだ。

 一旦休廷となった舞台においては、こちらの手の者表裏により、退出者が出ない様に手配されていた。
 セイン王子は国王から手厳しい言葉を受けたのか、愕然としている。
 本当に誰も、彼には教えなかったのだな。
 嘘を本当らしく思わせる時には、本当のこと大半の中にほんの少し混ぜておくこと。
 そのさじ加減が大切ではあるのだが――だとしたら、デターム氏というのは、非常に罪なことをしたものだ、と俺は思う。
 彼の友人達はその授業を受けていない。
 十二からの数年間、全く隙の無い一つの嘘を叩き込まれた彼は、そう簡単にその誤りを頭の中で正すことができないだろう。

 休廷時間が終わり、次にマリウラ嬢が呼ばれた。
 平民出身の彼女は、それでも実に堂々としていた。
 こちらはこちらで、養父による教育が上手くいったということだろう。
 そしてその養父が引き出される。
 皇帝陛下の元に、領主様経由で依頼した、当初の似顔絵に二十年歳を重ねた様に描かせた結果、ラルカ・デブンと判明したのだ。
 判明した後は、しばらくは近くで監視、本日「裏」が強襲して、彼を捕らえ、この場に連れてきたのだ。
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