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辺境伯令嬢の婚約者は早く事件を解決したい
18 個別訪問①(国王と正妃)
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翌日からは個別訪問されたりしたり、の日々だった。
「とりあえず訪問する方からだな」
バルバラはそう言って翌日から精力的に王家のそれぞれの住居を訪問しだした。
むろん先触れをして、時間などの指定を受けながらだが。
そしてその合間に、離れ近くの林等の散策だの木登りだの乗馬だの、時にはもう少し遠くまでさくさくと出入りして様子を見に行ったりと。
ともかく「訪問します」と言ってから「いいですよこの時間にどうぞ」までの時間がかかりすぎるのだ。
あまりに暇なのでついついバルバラは自分の普段着までこさえてしまっていた。
「あれお嬢、久しぶりの新作ですかい」
「お前等も作ればいいと思うぞー。向こうから衣料費出てるし」
それはたぶんドレスを作ってくれ、ということだろうが、無論無視だ。
そんな訳で、まずは国王と正妃のお茶の席に上がった。
やはりここでの随員は俺とゼムリャだけだけで、パーティの時の服を着ていった。
そもそも俺達の「晴れ着」は基本一張羅だ。
バルバラは一応二、三着あるが、俺達随員は一枚しかない。
そしてできるだけこれで押し通すつもりである。
だが最初から言われた。
「ところでバルバラ様、こちらからの御衣料費はお受け取りになりまして?」
正妃が問いかけてきた。
「ありがたくいただいた。おかげで沢山の布が購入できてありがたい。これなら一年がところ皆の服が間に合うだろう、と話をしていたところだ」
「あ、いえ、あれはバルバラ様にドレスを、と……」
「確かに皆様のあれは美しいのだが、私に似合うとは思えなくて」
「そんな、ご謙遜を」
「それ以前に、あれでは動けまい」
「動く、とは……」
正妃は笑顔にうっすらと冷や汗をかいている様だった。
「言葉の通り。有事の際、すぐに対応できる格好でないと安心できぬゆえ」
「まあしかし、郷に入れば郷に従うということもありましょう」
国王までもそう言う。
「だったらそれは結婚ということになってからに致しましょう。婚約者であるうちは、できるだけ好きな格好で気楽にしていたいもの。宜しいか?」
宜しいか、と問われれば彼等はバルバラにうなづくしかない。
まあこれは正常な反応だ。
「ただ少し残念で」
「何がでしょうか」
「王女達が、新しく来る方には似合う衣装をぜひ、と色めきたっているのですわ」
「遊びならお付き合い致しましょう」
まあ着せ替え人形にしたいのだろう、とバルバラはパーティの時の少女達の反応に対し、そう言っていた。
「まあそれ自体は判らなくもない。新しい人形が手に入れば、着せ替え遊びをしたくなるのは、うちの方でもそうだろう?」
と。
「まあ、そうですね」
俺が居た託児所でも、手製の人形に子供達が端切れでよく服を作っていたものだ。
皆それで裁縫の基礎を身につけ、やがて自分の服も作れるまでになっていく。
珍しい端切れが手に入った時には、子供達は大騒ぎだった。
俺も帝都ではお土産にそれを袋一杯買っていって託児所にあげた。
ちなみに着せ替えに興味の無い子には菓子を多めにあげた。
セルーメさんが一年間滞在した時には、彼の服地に女達がなかなか興味ありげだった。
夏にひどく引き裂いてしまったシャツなど、女達がそこについていたボタンやちょっとした飾りテープを欲しがって争ったものだった。
しかしそういうものは、たまに見るから新鮮な訳で。
どん、とパーティの時の様に目の前に出されると何だかな、という気持ちになった。
「とりあえず訪問する方からだな」
バルバラはそう言って翌日から精力的に王家のそれぞれの住居を訪問しだした。
むろん先触れをして、時間などの指定を受けながらだが。
そしてその合間に、離れ近くの林等の散策だの木登りだの乗馬だの、時にはもう少し遠くまでさくさくと出入りして様子を見に行ったりと。
ともかく「訪問します」と言ってから「いいですよこの時間にどうぞ」までの時間がかかりすぎるのだ。
あまりに暇なのでついついバルバラは自分の普段着までこさえてしまっていた。
「あれお嬢、久しぶりの新作ですかい」
「お前等も作ればいいと思うぞー。向こうから衣料費出てるし」
それはたぶんドレスを作ってくれ、ということだろうが、無論無視だ。
そんな訳で、まずは国王と正妃のお茶の席に上がった。
やはりここでの随員は俺とゼムリャだけだけで、パーティの時の服を着ていった。
そもそも俺達の「晴れ着」は基本一張羅だ。
バルバラは一応二、三着あるが、俺達随員は一枚しかない。
そしてできるだけこれで押し通すつもりである。
だが最初から言われた。
「ところでバルバラ様、こちらからの御衣料費はお受け取りになりまして?」
正妃が問いかけてきた。
「ありがたくいただいた。おかげで沢山の布が購入できてありがたい。これなら一年がところ皆の服が間に合うだろう、と話をしていたところだ」
「あ、いえ、あれはバルバラ様にドレスを、と……」
「確かに皆様のあれは美しいのだが、私に似合うとは思えなくて」
「そんな、ご謙遜を」
「それ以前に、あれでは動けまい」
「動く、とは……」
正妃は笑顔にうっすらと冷や汗をかいている様だった。
「言葉の通り。有事の際、すぐに対応できる格好でないと安心できぬゆえ」
「まあしかし、郷に入れば郷に従うということもありましょう」
国王までもそう言う。
「だったらそれは結婚ということになってからに致しましょう。婚約者であるうちは、できるだけ好きな格好で気楽にしていたいもの。宜しいか?」
宜しいか、と問われれば彼等はバルバラにうなづくしかない。
まあこれは正常な反応だ。
「ただ少し残念で」
「何がでしょうか」
「王女達が、新しく来る方には似合う衣装をぜひ、と色めきたっているのですわ」
「遊びならお付き合い致しましょう」
まあ着せ替え人形にしたいのだろう、とバルバラはパーティの時の少女達の反応に対し、そう言っていた。
「まあそれ自体は判らなくもない。新しい人形が手に入れば、着せ替え遊びをしたくなるのは、うちの方でもそうだろう?」
と。
「まあ、そうですね」
俺が居た託児所でも、手製の人形に子供達が端切れでよく服を作っていたものだ。
皆それで裁縫の基礎を身につけ、やがて自分の服も作れるまでになっていく。
珍しい端切れが手に入った時には、子供達は大騒ぎだった。
俺も帝都ではお土産にそれを袋一杯買っていって託児所にあげた。
ちなみに着せ替えに興味の無い子には菓子を多めにあげた。
セルーメさんが一年間滞在した時には、彼の服地に女達がなかなか興味ありげだった。
夏にひどく引き裂いてしまったシャツなど、女達がそこについていたボタンやちょっとした飾りテープを欲しがって争ったものだった。
しかしそういうものは、たまに見るから新鮮な訳で。
どん、とパーティの時の様に目の前に出されると何だかな、という気持ちになった。
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