119 / 168
辺境伯令嬢の婚約者は早く事件を解決したい
16 宴②
しおりを挟む
「紹介しよう」
王は俺達と「家族」を向き合わせた。
「わが正妃ローゼル。そして第一側妃タルカと、王女エルデとアマニ。第二側妃アマイデと王女ユルシュ。そして第三側妃のセレジュと王子セインと王女クイデ。このセインがバルバラ殿の婚約者ということになりますな」
バルバラはちら、とセイン王子の方を見て、軽く頭を振った。
すると王子は露骨に不快そうな顔をした。
一方その隣のクイデ王女は目を瞬かせた。
「第四側妃のトレスと王女トバーシュ、最後に第五側妃のマレットと王子ミルトとナギス」
「義姉上、宜しくお願いします!」
この時十二歳だという最も年下であるナギス王子は笑顔と明るい声でそう言って頭を下げた。
これこれ、とマレット妃が今ではない、とばかりにたしなめる。
「良い。元気な御子ではないか。私も君とは仲良くしたい。宜しくな」
そう言いながらぽん、と少年の肩を叩くバルバラの態度に、十三歳だというアマニ王女とトバーシュ王女が軽く口を開けた。
それぞれの側妃はほほ、と笑顔を見せながら笑い合っていた。
ただ、正妃ローゼルと、第三側妃のセレジュの笑顔は硬かった。
――というか、笑顔というものを貼り付けている様だった。
少なくとも俺達のところではあまり見ないものだ。
正直俺からすると気持ち悪い。
そしていつの間にかするりとゼムリャが抜け出し、人々の間に紛れていった。
バルバラは長椅子に座り、主に王女達から質問攻めにあっていた。
「凄く細かい刺繍ですね! 何か素敵」
「ありがとう。これは自分でやったんだ」
「まあ、ご自分で!」
「私達のところでは、皆自分の衣装は自分で作ることができる様にする。上手くは無いが、これも自作だ」
「ええ! そうなんですか! 凄い!」
「刺繍は私達も致しますが、こういう延々続く模様の図案は致しませんね。根気が必要ですわ」
若い王女達は単純にバルバラの服や頭に巻いた飾り帯の模様に凄い凄い、と言い、ユルシュ王女は刺繍の図案に感心と、何か別のことも考えている様だった。
「それにしてもお三方だけなのですね」
「他の皆忙しく。なかなか違う環境だと今夜眠れるか判らないから、と寝床をな」
「どれだけ違うのですか?」
アマニ王女がぐい、と迫る。
「そうだな、まあ、こんな綺麗でもなければ、豪華でもないな」
「普段はどんなことをされているのですか?」
「雪が降る前は森でできるだけ多くの木の実を穫ったり、狩りに出たり」
「狩りに!」
その言葉にクイデ王女が反応する。
そう言えば、この王女とセルーメさんは師弟関係だったはずだが―― ここで口にしていいのかどうか。
「皆さんは狩りは」
「クイデは確か乗馬が好きよね」
「ええ。でも狩りまでは」
「馬に乗れるのか、それはいい」
すると「何がいいものか」という声を俺の耳が拾った。
同じ長椅子の側のテーブルの近くには居たが、できるだけ遠ざかりたい、という態度が見え見えだった。
王は俺達と「家族」を向き合わせた。
「わが正妃ローゼル。そして第一側妃タルカと、王女エルデとアマニ。第二側妃アマイデと王女ユルシュ。そして第三側妃のセレジュと王子セインと王女クイデ。このセインがバルバラ殿の婚約者ということになりますな」
バルバラはちら、とセイン王子の方を見て、軽く頭を振った。
すると王子は露骨に不快そうな顔をした。
一方その隣のクイデ王女は目を瞬かせた。
「第四側妃のトレスと王女トバーシュ、最後に第五側妃のマレットと王子ミルトとナギス」
「義姉上、宜しくお願いします!」
この時十二歳だという最も年下であるナギス王子は笑顔と明るい声でそう言って頭を下げた。
これこれ、とマレット妃が今ではない、とばかりにたしなめる。
「良い。元気な御子ではないか。私も君とは仲良くしたい。宜しくな」
そう言いながらぽん、と少年の肩を叩くバルバラの態度に、十三歳だというアマニ王女とトバーシュ王女が軽く口を開けた。
それぞれの側妃はほほ、と笑顔を見せながら笑い合っていた。
ただ、正妃ローゼルと、第三側妃のセレジュの笑顔は硬かった。
――というか、笑顔というものを貼り付けている様だった。
少なくとも俺達のところではあまり見ないものだ。
正直俺からすると気持ち悪い。
そしていつの間にかするりとゼムリャが抜け出し、人々の間に紛れていった。
バルバラは長椅子に座り、主に王女達から質問攻めにあっていた。
「凄く細かい刺繍ですね! 何か素敵」
「ありがとう。これは自分でやったんだ」
「まあ、ご自分で!」
「私達のところでは、皆自分の衣装は自分で作ることができる様にする。上手くは無いが、これも自作だ」
「ええ! そうなんですか! 凄い!」
「刺繍は私達も致しますが、こういう延々続く模様の図案は致しませんね。根気が必要ですわ」
若い王女達は単純にバルバラの服や頭に巻いた飾り帯の模様に凄い凄い、と言い、ユルシュ王女は刺繍の図案に感心と、何か別のことも考えている様だった。
「それにしてもお三方だけなのですね」
「他の皆忙しく。なかなか違う環境だと今夜眠れるか判らないから、と寝床をな」
「どれだけ違うのですか?」
アマニ王女がぐい、と迫る。
「そうだな、まあ、こんな綺麗でもなければ、豪華でもないな」
「普段はどんなことをされているのですか?」
「雪が降る前は森でできるだけ多くの木の実を穫ったり、狩りに出たり」
「狩りに!」
その言葉にクイデ王女が反応する。
そう言えば、この王女とセルーメさんは師弟関係だったはずだが―― ここで口にしていいのかどうか。
「皆さんは狩りは」
「クイデは確か乗馬が好きよね」
「ええ。でも狩りまでは」
「馬に乗れるのか、それはいい」
すると「何がいいものか」という声を俺の耳が拾った。
同じ長椅子の側のテーブルの近くには居たが、できるだけ遠ざかりたい、という態度が見え見えだった。
2
お気に入りに追加
2,409
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる