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31 審議の再開~複数参加将棋とは
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「お待たせ致しました。審議を再開致します」
辺境伯令嬢バルバラは、ワゴンに大きなものを乗せて登場した。
「さて皆様、これが何だかご存じですか?」
護衛騎士が巨大な八角形の板を取り上げ、自身の前に立てかける。
「国王殿下、ご存じですか?」
「いや、見たことが無い。そのマス目の彩りはチェスの盤にも似ている様だが」
「はい。これはこの国で言うチェスの盤です」
ざわ、と周囲がざわめいた。
「チェスに似たものは色々ございます。帝国では一般的に将棋と言います。この国では、対戦相手二人、枡目が八×八のものが通常でしょうが、帝国ではこれが九×九が一般では普通ですし、もっと枡目を多くする場合もあります。枡目が多ければ、駒の種類も増えます。そして、時には、対戦相手の数を増やす場合もあります」
どんなものだ、と貴族達の中でもざわつく。だが中には自分の地方では…… とつぶやく者もあった。
「そしてこれは、二人から最高八人で対戦できる将棋盤です。チームを組んでする場合もあります。帝都では最も難しい将棋として部門別にその優劣を決める大会もあります」
聞いたことあるか? いや? 本当か? いや、そんな話も……
「自分は見たことがあります」
「聞いたことが……」
帝都に留学したことのある者は手を挙げてそう言った。
「実際にやったことがある方は? スルゲン教授?」
「何度か…… ただし最高六角のものまでで、対戦相手が三人の、二人組のものでした」
「面白かったですか?」
「面白い前に、まず難しくて、まあ…… いつも相手に任せきりだったという記憶が」
「その時に、デターム子爵かセルーメ子爵も居ましたか?」
「……ああ! 確かに、その時複数競技を指南してくれたのは、デタームでした。彼等は帝国アカデミーでも有数の指し手でしたね。……そう、その八角盤で二人で勝負することもありましたが、それは凄まじいものでした」
「と言うと?」
「八角盤は、人数がどうあれ、八つの陣営が存在する、という仮定で勝負が行われます。すなわち、二人で八角盤で勝負するということは、一人が四つの陣営をまとめて指揮する軍隊の様なものです」
「つまりは、四連隊同士の勝負と」
「その辺りはそう詳しくは無いのですが」
スルゲン教授は頭を掻く。
「自分は所詮、いつもそれこそ一連隊しか指揮できませんし、それでもへっぽこでしたから、組んでくれる者も無く。デタームが組んでくれた時は、まあ彼が常に自分の分も手をかけてくれた感があったくらいですし……」
余計なこともも喋りすぎだ、とナルーシャは夫の袖を引っ張る。
「思い出は美しいものですね。ありがとうございますスルゲン教授。さて、今回の件は、時間を長いことかけて、この競技の上等の指し手が考えたことです。何故なら」
バルバラは一度言葉を切った。
「この八角盤の持ち主は第三側妃セレジュ様だからです」
辺境伯令嬢バルバラは、ワゴンに大きなものを乗せて登場した。
「さて皆様、これが何だかご存じですか?」
護衛騎士が巨大な八角形の板を取り上げ、自身の前に立てかける。
「国王殿下、ご存じですか?」
「いや、見たことが無い。そのマス目の彩りはチェスの盤にも似ている様だが」
「はい。これはこの国で言うチェスの盤です」
ざわ、と周囲がざわめいた。
「チェスに似たものは色々ございます。帝国では一般的に将棋と言います。この国では、対戦相手二人、枡目が八×八のものが通常でしょうが、帝国ではこれが九×九が一般では普通ですし、もっと枡目を多くする場合もあります。枡目が多ければ、駒の種類も増えます。そして、時には、対戦相手の数を増やす場合もあります」
どんなものだ、と貴族達の中でもざわつく。だが中には自分の地方では…… とつぶやく者もあった。
「そしてこれは、二人から最高八人で対戦できる将棋盤です。チームを組んでする場合もあります。帝都では最も難しい将棋として部門別にその優劣を決める大会もあります」
聞いたことあるか? いや? 本当か? いや、そんな話も……
「自分は見たことがあります」
「聞いたことが……」
帝都に留学したことのある者は手を挙げてそう言った。
「実際にやったことがある方は? スルゲン教授?」
「何度か…… ただし最高六角のものまでで、対戦相手が三人の、二人組のものでした」
「面白かったですか?」
「面白い前に、まず難しくて、まあ…… いつも相手に任せきりだったという記憶が」
「その時に、デターム子爵かセルーメ子爵も居ましたか?」
「……ああ! 確かに、その時複数競技を指南してくれたのは、デタームでした。彼等は帝国アカデミーでも有数の指し手でしたね。……そう、その八角盤で二人で勝負することもありましたが、それは凄まじいものでした」
「と言うと?」
「八角盤は、人数がどうあれ、八つの陣営が存在する、という仮定で勝負が行われます。すなわち、二人で八角盤で勝負するということは、一人が四つの陣営をまとめて指揮する軍隊の様なものです」
「つまりは、四連隊同士の勝負と」
「その辺りはそう詳しくは無いのですが」
スルゲン教授は頭を掻く。
「自分は所詮、いつもそれこそ一連隊しか指揮できませんし、それでもへっぽこでしたから、組んでくれる者も無く。デタームが組んでくれた時は、まあ彼が常に自分の分も手をかけてくれた感があったくらいですし……」
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「思い出は美しいものですね。ありがとうございますスルゲン教授。さて、今回の件は、時間を長いことかけて、この競技の上等の指し手が考えたことです。何故なら」
バルバラは一度言葉を切った。
「この八角盤の持ち主は第三側妃セレジュ様だからです」
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