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30 幕間4 配られた衣服の新たな可能性とは
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翌日、昼の食事を済ませた頃から、皆が大広間に集まり始めた。
昨日のこともあり、大広間で長時間座らされるのもうんざりした、という顔である。
「昨日とは逆の様ですわ」
ナルーシャは夫につぶやく。元々の衣服ではなく、配られた上着を疲れた身体に羽織っている状態の者が殆どだった。
それでも公爵や侯爵の一部には、そもそも数日の滞在を予定していたのか、持ち込んでいた荷物の中に着替えがあった者もあり、別の衣服を着込んでいる者もあった。
「でも着こなしはなってなくてよっ」
そう言うマレンナがこの日は借り着をまとっていた。
着こなしは仕方が無い。
パーティの替え着だったとしても、自身の侍女がいなくては完璧に着こなせないものがこの宮廷では多かったのだ。
「貴女はその方が似合うわマレンナ」
ナルーシャはそう言いながら、早急に合う寸法のものを用意されたのだろうな、と察する。
「そぉかしら? まあ確かにこの方が楽ですし、私のこの豊満な胸や腹が押さえられることがないですからねっ」
ふはは、とナルーシャは夫と共に苦笑する。
とは言え、この友の気立ての良さは他に無いものだ。
確かにどう見ても貴婦人に求められる体型ではない。
よく食べる。
所作も勢いがとても良く、ダンスでは夫君を振り回す勢いだ。
だがこれが彼女の領地では実によく似合うのだ。
この豊満な身体にしても、贅肉だけではなく、筋肉がかなりの量を占めているということは案外知られていない。
夫君を振り回す程のダンスができるということは、その足でステップを華麗に踏めるということでもある。
実際ナルーシャは領地での彼女を見たことがある。
そこでは領民達と共に鋤鍬を手にしたり、森で狩りをしたり、なまける領民をしばいたり、と実によく働く身体なのだ。
そして自身の身体を保つ様に、領民をも飢えさせないことが大切、とばかりによく働く。
だがパーティの場で浮くのは確かだ。
彼女に対しひそひそと陰口を叩く者もいる。
いや、ひそひそどころではない。
ナルーシャは、何度その口を縫い付けてやろうと思っただろう。
だがそこで反応を全くしないのがマレンナの素晴らしいところである。
良い意味で都合の悪いことは耳に入らないのだ。
それよりはパーティで出る美味しい料理を味わい、領地に戻った時、同じ様なものを再現できるかということがマレンナにとっては重要なことなのだ。
ナルーシャは知っている。
領地の産物をどれだけ美味しく食べることができるのか、それを領民にも教えることが、彼女の楽しみなのだと。
そんな彼女が領地で着ている服に、この借り着は良く似ている。
そしてそれは、ナルーシャ自身も着心地が楽でいい、と思っている。
「本当今日はよくお似合いですわ」
ふと背後を見ると、同じものとはいえ、恐ろしく着こなしの良い女性が居た。
王都のドレスの流行はこの女性にあり、と言われるレイテ侯爵夫人だった。
「きつく締める下着が無くとも、何処に視線を置かせるかによって、この様なシンプルな服も、良い感じに見せることはできるのですわ。きっとこれは辺境伯令嬢からのものでしょうから、そちら渡りのものでしょうね。私ちょっと面白くなってきましたわ」
ほほほほ、とそう言って去っていく夫人を眺めながら、ナルーシャは呑気な友人夫妻と夫の両方を見て何だかなあ、と思った。
昨日のこともあり、大広間で長時間座らされるのもうんざりした、という顔である。
「昨日とは逆の様ですわ」
ナルーシャは夫につぶやく。元々の衣服ではなく、配られた上着を疲れた身体に羽織っている状態の者が殆どだった。
それでも公爵や侯爵の一部には、そもそも数日の滞在を予定していたのか、持ち込んでいた荷物の中に着替えがあった者もあり、別の衣服を着込んでいる者もあった。
「でも着こなしはなってなくてよっ」
そう言うマレンナがこの日は借り着をまとっていた。
着こなしは仕方が無い。
パーティの替え着だったとしても、自身の侍女がいなくては完璧に着こなせないものがこの宮廷では多かったのだ。
「貴女はその方が似合うわマレンナ」
ナルーシャはそう言いながら、早急に合う寸法のものを用意されたのだろうな、と察する。
「そぉかしら? まあ確かにこの方が楽ですし、私のこの豊満な胸や腹が押さえられることがないですからねっ」
ふはは、とナルーシャは夫と共に苦笑する。
とは言え、この友の気立ての良さは他に無いものだ。
確かにどう見ても貴婦人に求められる体型ではない。
よく食べる。
所作も勢いがとても良く、ダンスでは夫君を振り回す勢いだ。
だがこれが彼女の領地では実によく似合うのだ。
この豊満な身体にしても、贅肉だけではなく、筋肉がかなりの量を占めているということは案外知られていない。
夫君を振り回す程のダンスができるということは、その足でステップを華麗に踏めるということでもある。
実際ナルーシャは領地での彼女を見たことがある。
そこでは領民達と共に鋤鍬を手にしたり、森で狩りをしたり、なまける領民をしばいたり、と実によく働く身体なのだ。
そして自身の身体を保つ様に、領民をも飢えさせないことが大切、とばかりによく働く。
だがパーティの場で浮くのは確かだ。
彼女に対しひそひそと陰口を叩く者もいる。
いや、ひそひそどころではない。
ナルーシャは、何度その口を縫い付けてやろうと思っただろう。
だがそこで反応を全くしないのがマレンナの素晴らしいところである。
良い意味で都合の悪いことは耳に入らないのだ。
それよりはパーティで出る美味しい料理を味わい、領地に戻った時、同じ様なものを再現できるかということがマレンナにとっては重要なことなのだ。
ナルーシャは知っている。
領地の産物をどれだけ美味しく食べることができるのか、それを領民にも教えることが、彼女の楽しみなのだと。
そんな彼女が領地で着ている服に、この借り着は良く似ている。
そしてそれは、ナルーシャ自身も着心地が楽でいい、と思っている。
「本当今日はよくお似合いですわ」
ふと背後を見ると、同じものとはいえ、恐ろしく着こなしの良い女性が居た。
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「きつく締める下着が無くとも、何処に視線を置かせるかによって、この様なシンプルな服も、良い感じに見せることはできるのですわ。きっとこれは辺境伯令嬢からのものでしょうから、そちら渡りのものでしょうね。私ちょっと面白くなってきましたわ」
ほほほほ、とそう言って去っていく夫人を眺めながら、ナルーシャは呑気な友人夫妻と夫の両方を見て何だかなあ、と思った。
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