3 / 24
2 襲撃メンバーの人選理由
しおりを挟む
「それは現在のこの罪を覆い隠すものではないのか?」
「いいえ、私はその際にあの男に目をつけられ、七年の間不本意ながら囲われていたのでございます」
「不本意だったのか?」
「十三の子供を見目がいいからと手込めにすぐにする男に好感など持てる訳がありません。
それに、その折りにこの仕事における私の同僚は、私と、もう一人をのぞき皆その場で消されました」
「それは殺された、ということでいいんだな。詳しく」
「私達は確かに襲撃時子供でしたが、訓練はそれこそ五つ六つの頃から受けております。そして用途に応じて、人員を用意する訳ですが、その時の依頼者はどうも若い者ばかりを必要とした様です。強すぎない使い手を」
「つまり?」
「私達は、指定された場所に案内され――それが、当時の妾妃、ラグネイデ様の館であったことは後に知りました。
そこに居る者達を全て殺せ。それが私達への指示でした。
ただし、この時一人の少女が逃げ出したことには気付くことができませんでした。
それこそ、我々はまだ本当に『若手』『ひよっこ』でしかありませんでしたので。
通常なら、ベテランと若手は組ませて仕事を行うものです。ですがこの時は若手のみ、でした。
そしてミスをしたことにより、我々は皆その場で処分されることとなったのです」
「つまり、元々計画を知った者を消すことが前提だったと」
「今となってはそう思います。当時はまだ本当に幼かったため、何故自分達が殺されないとならないのか判りませんでした。
ですが自分達の総勢が十名だったのに対し、取り囲み処分しようとする手の者は三十名がところ。
いくら我々が暗殺者として訓練された者だったとしても、大の男、正規の軍人三十名に敵う訳がありません。
八名はその場で殺され、妾妃様の館の近くの森に浅く穴を掘って埋められました。
おそらく、血の臭いを嗅いだ獣に掘り出され易いくらいの埋め方だったと思われます」
「で? 其方が生き残っているのは、第二王子の欲望からだったとして。
もう一人は何故生き残ることができたのだ?」
「それが私の条件だったからです」
条件、とアンネリアは繰り返した。
「第二王子フットサムは」
敬称も何もこの女は付けないな、とふとアンネリアは思う。
王太子、が第二王子になり、ついには名前を呼び捨てに。
それだけ憎かったのだろう。
「第二王子は、どうしたのだ?」
「同僚と共に死ぬという私に対し、自分のものになるなら此奴を逃がしてもいい、と私の恋人を示したのです」
「いいえ、私はその際にあの男に目をつけられ、七年の間不本意ながら囲われていたのでございます」
「不本意だったのか?」
「十三の子供を見目がいいからと手込めにすぐにする男に好感など持てる訳がありません。
それに、その折りにこの仕事における私の同僚は、私と、もう一人をのぞき皆その場で消されました」
「それは殺された、ということでいいんだな。詳しく」
「私達は確かに襲撃時子供でしたが、訓練はそれこそ五つ六つの頃から受けております。そして用途に応じて、人員を用意する訳ですが、その時の依頼者はどうも若い者ばかりを必要とした様です。強すぎない使い手を」
「つまり?」
「私達は、指定された場所に案内され――それが、当時の妾妃、ラグネイデ様の館であったことは後に知りました。
そこに居る者達を全て殺せ。それが私達への指示でした。
ただし、この時一人の少女が逃げ出したことには気付くことができませんでした。
それこそ、我々はまだ本当に『若手』『ひよっこ』でしかありませんでしたので。
通常なら、ベテランと若手は組ませて仕事を行うものです。ですがこの時は若手のみ、でした。
そしてミスをしたことにより、我々は皆その場で処分されることとなったのです」
「つまり、元々計画を知った者を消すことが前提だったと」
「今となってはそう思います。当時はまだ本当に幼かったため、何故自分達が殺されないとならないのか判りませんでした。
ですが自分達の総勢が十名だったのに対し、取り囲み処分しようとする手の者は三十名がところ。
いくら我々が暗殺者として訓練された者だったとしても、大の男、正規の軍人三十名に敵う訳がありません。
八名はその場で殺され、妾妃様の館の近くの森に浅く穴を掘って埋められました。
おそらく、血の臭いを嗅いだ獣に掘り出され易いくらいの埋め方だったと思われます」
「で? 其方が生き残っているのは、第二王子の欲望からだったとして。
もう一人は何故生き残ることができたのだ?」
「それが私の条件だったからです」
条件、とアンネリアは繰り返した。
「第二王子フットサムは」
敬称も何もこの女は付けないな、とふとアンネリアは思う。
王太子、が第二王子になり、ついには名前を呼び捨てに。
それだけ憎かったのだろう。
「第二王子は、どうしたのだ?」
「同僚と共に死ぬという私に対し、自分のものになるなら此奴を逃がしてもいい、と私の恋人を示したのです」
2
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる