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E エリザベス(SF)
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「エリザベス、君のことは嫌いではない。だが僕はこのエイミーに真実の愛を見つけてしまったんだ。君はむしろ結婚より、身体を直すことに専念した方がいいよ」
久しぶりにやってきた婚約者は私の前で元気そうな女を連れて、そう言い放った。
ベッドの上で今は左手くらいしか動かせない私には、彼の言葉に返す語彙が上手く見つからない。
だからこう言った。
「わかったわ。せめて最後に手を握らせてちょうだい。お願い」
彼はちょっと戸惑ったが、ベッドに近づき、伸ばした手を握った。
瞬間。
びく、と震えて彼は停止した。
「な、……あんた何を」
彼の身体からぶすぶすと黒い煙が穴という穴から噴き出している。
「最後だから体内電圧の微調整をしておこうと思ったのだけど、もう上手くいかなかったわね」
がくりと彼の身体がその場に崩れ落ちた。
やがて私も今の過放電で停止するだろう。
西暦2540年。人口が激減した地球では、増えない分長く生きるために身体を老化する毎、義体化し、その性能により仕事を行うのが普通だった。
私はその身体で義体に電気を通し、性能を安定させる役目を持っていた。
だがもう弱ったこの身体ではその能力も不安定になっていた……
久しぶりにやってきた婚約者は私の前で元気そうな女を連れて、そう言い放った。
ベッドの上で今は左手くらいしか動かせない私には、彼の言葉に返す語彙が上手く見つからない。
だからこう言った。
「わかったわ。せめて最後に手を握らせてちょうだい。お願い」
彼はちょっと戸惑ったが、ベッドに近づき、伸ばした手を握った。
瞬間。
びく、と震えて彼は停止した。
「な、……あんた何を」
彼の身体からぶすぶすと黒い煙が穴という穴から噴き出している。
「最後だから体内電圧の微調整をしておこうと思ったのだけど、もう上手くいかなかったわね」
がくりと彼の身体がその場に崩れ落ちた。
やがて私も今の過放電で停止するだろう。
西暦2540年。人口が激減した地球では、増えない分長く生きるために身体を老化する毎、義体化し、その性能により仕事を行うのが普通だった。
私はその身体で義体に電気を通し、性能を安定させる役目を持っていた。
だがもう弱ったこの身体ではその能力も不安定になっていた……
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