50 / 50
のちの話
しおりを挟む
戦後しばらくして、その館の所有者の何代目か後の人物が、国営放送の取材に応じたことがあった。
「ええ、この館は戦前には幽霊屋敷と呼ばれていたんですよ」
「ほう、それはまたどういう」
「ちょうど居心地が良かったのですかねえ。国会議事堂にも近かったから、貴婦人達のサロンが行われている、って噂が立ったものですよ」
「今は大丈夫なのですか?」
「ええ。私の祖父がですね、効くのか効かないのか判りませんが、その筋の方に頼んだそうです。ただそれがあの、ザ・ブリッツの時でしてねえ」
「何と! あの時期に!」
ロンドン大空襲の中とは、と聞き手側は唖然とする。
「いやいや館が壊されるかも、というのは、住み着いた者達にとっては大変なことだったそうですよ」
「それで、その筋の方というのは? なかなか興味深いものですが」
「いやそれがですねえ。その辺りになると祖父は口を閉ざしたんですよ。報酬はしっかり渡したから、それ以上のことはと考えるな、と言われてましてねえ」
「今言ってしまっていいんですか?」
「いやあ、それを言っても判らないでしょう?」
あはははは、と持ち主が笑ったその時。
『判ったらどうするの?』
え?
と、持ち主と国営放送のアナウンサーはぎょっとした顔になった――かもしれない。
「ええ、この館は戦前には幽霊屋敷と呼ばれていたんですよ」
「ほう、それはまたどういう」
「ちょうど居心地が良かったのですかねえ。国会議事堂にも近かったから、貴婦人達のサロンが行われている、って噂が立ったものですよ」
「今は大丈夫なのですか?」
「ええ。私の祖父がですね、効くのか効かないのか判りませんが、その筋の方に頼んだそうです。ただそれがあの、ザ・ブリッツの時でしてねえ」
「何と! あの時期に!」
ロンドン大空襲の中とは、と聞き手側は唖然とする。
「いやいや館が壊されるかも、というのは、住み着いた者達にとっては大変なことだったそうですよ」
「それで、その筋の方というのは? なかなか興味深いものですが」
「いやそれがですねえ。その辺りになると祖父は口を閉ざしたんですよ。報酬はしっかり渡したから、それ以上のことはと考えるな、と言われてましてねえ」
「今言ってしまっていいんですか?」
「いやあ、それを言っても判らないでしょう?」
あはははは、と持ち主が笑ったその時。
『判ったらどうするの?』
え?
と、持ち主と国営放送のアナウンサーはぎょっとした顔になった――かもしれない。
0
お気に入りに追加
25
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結済】ダークサイドストーリー〜4つの物語〜
野花マリオ
ホラー
この4つの物語は4つの連なる視点があるホラーストーリーです。
内容は不条理モノですがオムニバス形式でありどの物語から読んでも大丈夫です。この物語が読むと読者が取り憑かれて繰り返し読んでいる恐怖を導かれるように……
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
黄泉小径 -ヨモツコミチ-
小曽根 委論(おぞね いろん)
ホラー
死後の世界に通ずると噂される、村はずれの細道……黄泉小径。立ち入れば帰って来れないとも言われる、その不気味な竹藪の道に、しかしながら足を踏み入れる者が時折現れる。この物語では、そんな者たちを時代ごとに紐解き、露わにしていく。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
シカガネ神社
家紋武範
ホラー
F大生の過去に起こったホラースポットでの行方不明事件。
それのたった一人の生き残りがその惨劇を百物語の百話目に語りだす。
その一夜の出来事。
恐怖の一夜の話を……。
※表紙の画像は 菁 犬兎さまに頂戴しました!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです
感想ありがとうございます。
あと少しで完結なのでもうしばらくお付き合いくださいm(__)m
遅蒔きながら、投票しました。
気候が不安定な時期ですが、お身体を大切にして下さいね。
続きを楽しみにお待ちします。
ありがとうございますー!
ホラミスは恋愛ほどではないけど、去年よりずいぶん作品数があると言うことで、じりじりがんばってみますー!
十二人の○○な女…。
何でしょうね…