6 / 50
5 幕間①-1
しおりを挟む
「きゃあ!」
そう悲鳴を上げたのはウェブル伯爵夫人ポーレット。
少し抑えたピンクのドレスがよく似合う二十歳くらいの若夫人。
肩の辺りが大きく膨らんだ袖がほっそりした身体にはやや気合いが入りすぎている様にも感じられる程。
「それって…… あの、妹さんご夫婦は既にお亡くなりになっていて、その幽霊が……」
おずおずと、でもはっきり発言したのはクレイグス商会の奥方フレア。
孔雀の羽混じりの扇で口元を隠してはいても、興味津々なのはその前のめりの姿勢でよく判るというもの。
「さあどうでしょうね…… もしかしたら、エレノア様がその時幻覚を見ていたという可能性も」
そう言うのはサーチェス夫人シャーロット。
彼女は高名な医師の妻だった。
「でもその時御夫君も一緒に見ていらしたのでしょ? だとしたら、やっぱりお二人の霊が……」
「でもだったら、どうしてお二人の元にわざわざその都度出てくるのかしら」
「そこはやっぱり、お二人のことを愛していたからではないかしら」
そう言って胸の前で手を組むのは文学博士兼作家のエッセン氏の夫人マーゴット。
「亡くなってからもお二人のことが心配になって、行き先についていらしたのだわ!」
「そうかしら」
エレノアは首を傾げ、軽く目を伏せる。
「妹はいつも姉のことを見下していたのよ。なのに先に結婚相手がとんとん拍子に決まったことで何処か関係がおかしくなってしまったの」
「どうして?」
「だって、妹は自分の方が絶対に良い縁談がやってきて、皆から祝福されて、それから幸せになると思っていたのよ。だから、姉の結婚相手が誰であれ、自分には目もくれず、姉と意気投合して、すぐに結婚に至ってしまったというのがもの凄く気に食わなかったのよ。だからこそ、当てつけの様に助手学生と結婚したんだわ」
「ちょっと待って」
そう言い出したて手を挙げたのはドレイク伯夫人ローズマリー。
「じゃあ助手学生はどうして妹の方と結婚したのかしら」
「さあそこなのよ」
エレリアはすんなりした人差し指を立てる。
「助手学生はともかく夫への執着が激しかったのですの。それは夫自身さほど気付いていませんでしたけど、普通さすがに殿方が裁縫キットを持っているなんて、……いえ、軍では結構そういう方いらっしゃいますわね」
「そうね。自分の持ち物が破れたら自分で繕うことも必要になるし。結構士官学校とかでも自分のことは自分でと徹底するものよ」
せんでしたけど、普通さすがに殿方が裁縫キットを持っているなんて、……いえ、軍では結構そういう方いらっしゃいますわね」
「そうね。自分の持ち物が破れたら自分で繕うことも必要になるし。結構士官学校とかでも自分のことは自分でと徹底するものよ」
ダズウッド陸軍大佐夫人ブリジットは大きくうなづく。
「だけどさすがに普通の裕福な研究者上がりの方が、しかも妻持ちの方が持っているのは不自然ではありませんか?」
そう悲鳴を上げたのはウェブル伯爵夫人ポーレット。
少し抑えたピンクのドレスがよく似合う二十歳くらいの若夫人。
肩の辺りが大きく膨らんだ袖がほっそりした身体にはやや気合いが入りすぎている様にも感じられる程。
「それって…… あの、妹さんご夫婦は既にお亡くなりになっていて、その幽霊が……」
おずおずと、でもはっきり発言したのはクレイグス商会の奥方フレア。
孔雀の羽混じりの扇で口元を隠してはいても、興味津々なのはその前のめりの姿勢でよく判るというもの。
「さあどうでしょうね…… もしかしたら、エレノア様がその時幻覚を見ていたという可能性も」
そう言うのはサーチェス夫人シャーロット。
彼女は高名な医師の妻だった。
「でもその時御夫君も一緒に見ていらしたのでしょ? だとしたら、やっぱりお二人の霊が……」
「でもだったら、どうしてお二人の元にわざわざその都度出てくるのかしら」
「そこはやっぱり、お二人のことを愛していたからではないかしら」
そう言って胸の前で手を組むのは文学博士兼作家のエッセン氏の夫人マーゴット。
「亡くなってからもお二人のことが心配になって、行き先についていらしたのだわ!」
「そうかしら」
エレノアは首を傾げ、軽く目を伏せる。
「妹はいつも姉のことを見下していたのよ。なのに先に結婚相手がとんとん拍子に決まったことで何処か関係がおかしくなってしまったの」
「どうして?」
「だって、妹は自分の方が絶対に良い縁談がやってきて、皆から祝福されて、それから幸せになると思っていたのよ。だから、姉の結婚相手が誰であれ、自分には目もくれず、姉と意気投合して、すぐに結婚に至ってしまったというのがもの凄く気に食わなかったのよ。だからこそ、当てつけの様に助手学生と結婚したんだわ」
「ちょっと待って」
そう言い出したて手を挙げたのはドレイク伯夫人ローズマリー。
「じゃあ助手学生はどうして妹の方と結婚したのかしら」
「さあそこなのよ」
エレリアはすんなりした人差し指を立てる。
「助手学生はともかく夫への執着が激しかったのですの。それは夫自身さほど気付いていませんでしたけど、普通さすがに殿方が裁縫キットを持っているなんて、……いえ、軍では結構そういう方いらっしゃいますわね」
「そうね。自分の持ち物が破れたら自分で繕うことも必要になるし。結構士官学校とかでも自分のことは自分でと徹底するものよ」
せんでしたけど、普通さすがに殿方が裁縫キットを持っているなんて、……いえ、軍では結構そういう方いらっしゃいますわね」
「そうね。自分の持ち物が破れたら自分で繕うことも必要になるし。結構士官学校とかでも自分のことは自分でと徹底するものよ」
ダズウッド陸軍大佐夫人ブリジットは大きくうなづく。
「だけどさすがに普通の裕福な研究者上がりの方が、しかも妻持ちの方が持っているのは不自然ではありませんか?」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鎌倉呪具師の回収録~使霊の箱~
平本りこ
ホラー
――恐ろしきは怨霊か、それとも。
土蔵珠子はある日突然、婚約者と勤め先、住んでいた家を同時に失った。
六年前、母に先立たれた珠子にとって、二度目の大きな裏切りだった。
けれど、悲嘆にくれてばかりもいられない。珠子には頼れる親戚もいないのだ。
住む場所だけはどうにかしなければと思うが、職も保証人もないので物件探しは難航し、なんとか借りることのできたのは、鎌倉にあるおんぼろアパートだ。
いわくつき物件のご多分に漏れず、入居初日の晩、稲光が差し込む窓越しに、珠子は恐ろしいものを見てしまう。
それは、古風な小袖を纏い焼けただれた女性の姿であった。
時を同じくして、呪具師一族の末裔である大江間諭が珠子の部屋の隣に越して来る。
呪具とは、鎌倉時代から続く大江間という一族が神秘の力を織り合わせて作り出した、超常現象を引き起こす道具のことである。
諭は日本中に散らばってしまった危険な呪具を回収するため、怨霊の気配が漂うおんぼろアパートにやってきたのだった。
ひょんなことから、霊を成仏させるために強力することになった珠子と諭。やがて、珠子には、残留思念を読む異能があることがわかる。けれどそれは生まれつきのものではなく、どうやら珠子は後天的に、生身の「呪具」になってしまったようなのだ。
さらに、諭が追っている呪具には珠子の母親の死と関連があることがわかってきて……。
※毎日17:40更新
最終章は3月29日に4エピソード同時更新です
怨念がおんねん〜祓い屋アベの記録〜
君影 ルナ
ホラー
・事例 壱
『自分』は真冬に似合わない服装で、見知らぬ集落に向かって歩いているらしい。
何故『自分』はあの集落に向かっている?
何故『自分』のことが分からない?
何故……
・事例 弍
??
──────────
・ホラー編と解決編とに分かれております。
・純粋にホラーを楽しみたい方は漢数字の話だけを、解決編も楽しみたい方は数字を気にせず読んでいただけたらと思います。
・フィクションです。
ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。


白蛇の化女【完全版】
香竹薬孝
ホラー
舞台は大正~昭和初期の山村。
名家の長男に生まれた勝太郎は、家の者達からまるでいないもののように扱われる姉、刀子の存在を不思議に思いつつも友人達と共に穏やかな幼少期を過ごしていた。
しかし、とある出来事をきっかけに姉の姿を憑りつかれたように追うようになり、遂に忌まわしい一線を越えてしまいそうになる。以来姉を恐怖するようになった勝太郎は、やがて目に見えぬおぞましい妄執の怪物に責め苛まれることに――
というようなつもりで書いた話です。
(モチーフ : 宮城県・化女沼伝説)
※カクヨム様にて掲載させて頂いたものと同じ内容です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる