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174 ポーレとの最後の冬①近い別れを考えると
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テンダーが南東から戻る頃には帝都にもやや冷たい風が吹く様になっていた。
「早めに冬物の注文取っておいて正解でしたねえ」
冬物は他の季節よりは量は少ない。
特に上着。
帝都の一般庶民は一度充分費用をかけてでもきちんとしたものを作ると、それを長く着るという風潮がある。
なので冬物で良く出るのは、むしろその上着を取れる場所で着るものであったり、小物だった。
その小物に関してはポーレが馬力を入れて作っていた。
彼女は並行して発表会用の帽子や飾りの意匠を何かと考えては試作していた。
「ところで今年は年始の祝いはどうするんですか?」
「ああ」
冬は北西出身の二人のどちらかが居ればいいくらいだったので、片方を順番に帰省させていた。
「二人とも帰りたい?」
テンダーが訊ねると、サミューリンは首を横に振った。
「私は今年はこっちに居たいです。帰すならキリの方で」
「いや、私も今年はこっちに居ます! ポーレさんに帽子や小物の作り方をみっちり教えてもらいたいし!」
「あ、それは私も!」
「あと年始の御馳走が美味しかったし」
それがあるか、とテンダーとポーレは顔を見合わせた。
年始の祝いはうちうちで一回、仲間で集まって「123」でもする。
そのうちうちの方ではポーレが腕を奮うのだ。
「二日じっくり煮込んだ肉の塊とか」
「温かい詰め物ぎっしりの蒸し菓子とか」
故郷では食べたことのない御馳走に、最初に経験した彼女達は目の色を変えていたものだった。
「そうですね。今年は気合い入れて作りますよ。……ああ、そうすると、来年からはどうなるのかな……」
嗚呼! とテンダーも含めてそこは落胆の声を上げるしかなかった。
一方キリは帽子や小物に関してポーレに大慌てで食いつきだしていた。
「テンダー様の服はあっさりしているから、小物が似合うんですよね。だから作りがいがあるんです」
そう言って器用なポーレはレースやチュールや造花といったパーツを組み合わせて様々な形を作り上げていた。
服の方に重点を置いて学んでいたサミューリンに対し、キリは小物を重視していた。
「この頭の花飾りだけだったら、あまり懐に余裕が無いひとだって気軽に買えるじゃないですか」
実際「123」で小物だけ販売したことがあるのだが、その時も売れ行きは季節問わずそこそこあった。
「ポーレさんの技術を私は全部覚えたいんです!」
その熱心さにはポーレも教え甲斐があったと言える。
そもそも彼女自身、小物に関しては見よう見まねだったのだ。
テンダーに連れられて行ったサロンで見たものを、劇団の衣装部の小物作りの誰かしらにやり方を教わり、あとはひたすら経験を積んだ。
なのでキリに対しても、帽子の基本的な作り方以外は格別に手ほどきはしなかった。
「まあ、ともかく数考えて作ってみるといいわ」
今ではそれなりに単品で売れるものもキリは作っている。
だが服に合うもの、ということとなるとそこはポーレの教えを請いたいところだったのだ。
「……じゃあ、まあ私もあまり体系だって考えている訳ではないから、そこは自分でまとめてみてね。あと、買い出しに行く時には、街を歩く女性達の姿をよく観察すること。服に飾りが合っていないな、と思う人が居たらその原因を考えて、自分ならどうする、と案を出してみるのもいいわ」
キリは大きく頷いた。
そんな話をしていると、冬ということで常よりは少し手が空くテンダーもついポーレが居なくなってしまうことについて考えてしまう。
生地はあるから、と今から発表会用の柔らかい上下をとりあえず作ることに精を出したりはしているが、唐突にふっと冷たい風が胸の中を吹きすぎていく様な気がして仕方が無い。
ポーレは学校時代以外、ずっと自分と一緒に居たのだ。
学校の友人達との卒業した時の別れは辛かった。
だがそれとは全く違う感情がポーレとの近い未来にはあった。
「早めに冬物の注文取っておいて正解でしたねえ」
冬物は他の季節よりは量は少ない。
特に上着。
帝都の一般庶民は一度充分費用をかけてでもきちんとしたものを作ると、それを長く着るという風潮がある。
なので冬物で良く出るのは、むしろその上着を取れる場所で着るものであったり、小物だった。
その小物に関してはポーレが馬力を入れて作っていた。
彼女は並行して発表会用の帽子や飾りの意匠を何かと考えては試作していた。
「ところで今年は年始の祝いはどうするんですか?」
「ああ」
冬は北西出身の二人のどちらかが居ればいいくらいだったので、片方を順番に帰省させていた。
「二人とも帰りたい?」
テンダーが訊ねると、サミューリンは首を横に振った。
「私は今年はこっちに居たいです。帰すならキリの方で」
「いや、私も今年はこっちに居ます! ポーレさんに帽子や小物の作り方をみっちり教えてもらいたいし!」
「あ、それは私も!」
「あと年始の御馳走が美味しかったし」
それがあるか、とテンダーとポーレは顔を見合わせた。
年始の祝いはうちうちで一回、仲間で集まって「123」でもする。
そのうちうちの方ではポーレが腕を奮うのだ。
「二日じっくり煮込んだ肉の塊とか」
「温かい詰め物ぎっしりの蒸し菓子とか」
故郷では食べたことのない御馳走に、最初に経験した彼女達は目の色を変えていたものだった。
「そうですね。今年は気合い入れて作りますよ。……ああ、そうすると、来年からはどうなるのかな……」
嗚呼! とテンダーも含めてそこは落胆の声を上げるしかなかった。
一方キリは帽子や小物に関してポーレに大慌てで食いつきだしていた。
「テンダー様の服はあっさりしているから、小物が似合うんですよね。だから作りがいがあるんです」
そう言って器用なポーレはレースやチュールや造花といったパーツを組み合わせて様々な形を作り上げていた。
服の方に重点を置いて学んでいたサミューリンに対し、キリは小物を重視していた。
「この頭の花飾りだけだったら、あまり懐に余裕が無いひとだって気軽に買えるじゃないですか」
実際「123」で小物だけ販売したことがあるのだが、その時も売れ行きは季節問わずそこそこあった。
「ポーレさんの技術を私は全部覚えたいんです!」
その熱心さにはポーレも教え甲斐があったと言える。
そもそも彼女自身、小物に関しては見よう見まねだったのだ。
テンダーに連れられて行ったサロンで見たものを、劇団の衣装部の小物作りの誰かしらにやり方を教わり、あとはひたすら経験を積んだ。
なのでキリに対しても、帽子の基本的な作り方以外は格別に手ほどきはしなかった。
「まあ、ともかく数考えて作ってみるといいわ」
今ではそれなりに単品で売れるものもキリは作っている。
だが服に合うもの、ということとなるとそこはポーレの教えを請いたいところだったのだ。
「……じゃあ、まあ私もあまり体系だって考えている訳ではないから、そこは自分でまとめてみてね。あと、買い出しに行く時には、街を歩く女性達の姿をよく観察すること。服に飾りが合っていないな、と思う人が居たらその原因を考えて、自分ならどうする、と案を出してみるのもいいわ」
キリは大きく頷いた。
そんな話をしていると、冬ということで常よりは少し手が空くテンダーもついポーレが居なくなってしまうことについて考えてしまう。
生地はあるから、と今から発表会用の柔らかい上下をとりあえず作ることに精を出したりはしているが、唐突にふっと冷たい風が胸の中を吹きすぎていく様な気がして仕方が無い。
ポーレは学校時代以外、ずっと自分と一緒に居たのだ。
学校の友人達との卒業した時の別れは辛かった。
だがそれとは全く違う感情がポーレとの近い未来にはあった。
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