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166 次の一手を探して⑤軽くなった頭と少しの懸念
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「え」
工房に戻ってきたテンダーに「お帰りなさい」と言いかけたサミューリンの表情が固まった。
「て、テンダー様、その頭」
ただいま、と言って帽子を取ると、それまでとはずいぶん違う頭がそこからは現れた。
「え? どうしたの? あら? あらら!」
ポーレも目を剥いた。
「いやはや、軽くするとは言ってましたけど、そこまでですか?」
「ええ。本当に、軽い!」
テンダーはそう言って思わずくるくるとその場で回る。
すると残した分の後ろ髪がふわっと揺れた。
耳の下で切り揃えた分は嵩が減ったことで、普段の押し込まれているかの様なそれよりずっと軽やかに収まっていた。
「何、ポーレ思ったほど驚かないのね」
「……昔送ってきたじゃないですか。皆で髪を切った記念に、って写真館で取った一枚」
今も持ってますよ、と彼女は続けた。
「でもそれよりは大人しい様ですね」
一体それは何ですか! と少女達二人は驚きながら問いかける。
北西でも女性の髪は基本伸ばすものだった。
それが大人のしるしだ、と二人は思っていた。
「……まあ貴女がそうするなら、私はまずそういう頭に似合う帽子を作らないといけませんね」
肩を竦めそうこぼしつつ、ポーレは新たな課題に心躍らせていた。
確かにそうだった。
ふんわりした、軽い装いをこの一年実際に自分達で着て「123」をはじめあちこちに出ていくことで得たものは色々あった。
その一つが、やはり髪だった。
ただその疑問はあまりにもぼんやりしていてポーレの中でなかなか形作ることができなかったのだ。
帽子を作る彼女としては、その下の頭が常に代わり映えしないことに無意識に不満を持っていたのだった。
髪質がどうあれ、今の世の中は大概長く伸ばしたものをまとめて上げてしまい、あとは何かしらの飾りをつけるのみ。
テンダーと共に昔図書室で読んだ本の挿絵には、もっと色々な髪型があったのに、と思うこともあった。
メイドの仕事の際にはボンネットや三角巾、客の前に出る時にはヘッドドレス等が必要だった。
隠してしまうならいっそ男性のように短くてもいいのではないか、と思ったことが無い訳でもない。
だがポーレはそれを口にする愚は犯さなかった。母親のフィリアにも言っても詮無いことだった。
そんな折り、テンダーから送られてきた手紙に入っていた写真には驚かされた。
同じ制服を着ているというのに、髪が短くなっただけで印象は本当に変わるのだ。
そしてまとめてしまうと髪質が分かりづらい。
大人になると前髪を上げるのが多い、というのもある。
だけどどうしてもそうすると似合う形というのもある程度決まってきてしまうのではないか、とポーレも思っていた。
髪型が変わればどうなんだろう?
「で、その後ろだけ長いのはそのままずっとそれで過ごすんですか?」
「まあしばらくはね。でも普段は編んで垂らしておくつもり」
なるほど、とポーレは頷き、その頭が外に行く時に似合う形を色々頭の中に思い浮かべた。
「で」
「何?」
「わざわざそれに踏み切ったってことは、何かまたちょっと大きなことするつもりですよね?」
んー、とテンダーは軽くなった頭に直接指を差し込みくしゃくしゃとかき回した。
「ヒドゥンさんと話してたってことは、何か次の一手のヒントが貰えたのでは?」
「そうね。発表会をするわ」
はっぴょうかい、と少女達が首を傾げた。
「いつも新しい服を着て『123』をふらふらしてもらって見てもらってるでしょ? それを舞台でやったらどうか、って。……思うんだけど」
歯切れが悪い、とポーレは思った。
「いいんじゃないですか? いずれにしても今すぐ、ということじゃないんですから」
「いいの?」
「そもそもテンダー様いちいち私に了解求めたりしないでしょうに……」
ポーレはため息をついた。
「やりたいならその方向に考えましょう。時間がそれなりにあるんでしょうし。舞台の使い方とか協力してくれる人々とか色々考えつつ、ともかく毎日の仕事もこなしたいんでしょう?」
「本当に最近どんどん容赦ないのねポーレ……」
「いつまでもこういう時間が続くとは限りませんからね」
ぽつんと言うポーレに、え、とテンダーは顔を上げた。
工房に戻ってきたテンダーに「お帰りなさい」と言いかけたサミューリンの表情が固まった。
「て、テンダー様、その頭」
ただいま、と言って帽子を取ると、それまでとはずいぶん違う頭がそこからは現れた。
「え? どうしたの? あら? あらら!」
ポーレも目を剥いた。
「いやはや、軽くするとは言ってましたけど、そこまでですか?」
「ええ。本当に、軽い!」
テンダーはそう言って思わずくるくるとその場で回る。
すると残した分の後ろ髪がふわっと揺れた。
耳の下で切り揃えた分は嵩が減ったことで、普段の押し込まれているかの様なそれよりずっと軽やかに収まっていた。
「何、ポーレ思ったほど驚かないのね」
「……昔送ってきたじゃないですか。皆で髪を切った記念に、って写真館で取った一枚」
今も持ってますよ、と彼女は続けた。
「でもそれよりは大人しい様ですね」
一体それは何ですか! と少女達二人は驚きながら問いかける。
北西でも女性の髪は基本伸ばすものだった。
それが大人のしるしだ、と二人は思っていた。
「……まあ貴女がそうするなら、私はまずそういう頭に似合う帽子を作らないといけませんね」
肩を竦めそうこぼしつつ、ポーレは新たな課題に心躍らせていた。
確かにそうだった。
ふんわりした、軽い装いをこの一年実際に自分達で着て「123」をはじめあちこちに出ていくことで得たものは色々あった。
その一つが、やはり髪だった。
ただその疑問はあまりにもぼんやりしていてポーレの中でなかなか形作ることができなかったのだ。
帽子を作る彼女としては、その下の頭が常に代わり映えしないことに無意識に不満を持っていたのだった。
髪質がどうあれ、今の世の中は大概長く伸ばしたものをまとめて上げてしまい、あとは何かしらの飾りをつけるのみ。
テンダーと共に昔図書室で読んだ本の挿絵には、もっと色々な髪型があったのに、と思うこともあった。
メイドの仕事の際にはボンネットや三角巾、客の前に出る時にはヘッドドレス等が必要だった。
隠してしまうならいっそ男性のように短くてもいいのではないか、と思ったことが無い訳でもない。
だがポーレはそれを口にする愚は犯さなかった。母親のフィリアにも言っても詮無いことだった。
そんな折り、テンダーから送られてきた手紙に入っていた写真には驚かされた。
同じ制服を着ているというのに、髪が短くなっただけで印象は本当に変わるのだ。
そしてまとめてしまうと髪質が分かりづらい。
大人になると前髪を上げるのが多い、というのもある。
だけどどうしてもそうすると似合う形というのもある程度決まってきてしまうのではないか、とポーレも思っていた。
髪型が変わればどうなんだろう?
「で、その後ろだけ長いのはそのままずっとそれで過ごすんですか?」
「まあしばらくはね。でも普段は編んで垂らしておくつもり」
なるほど、とポーレは頷き、その頭が外に行く時に似合う形を色々頭の中に思い浮かべた。
「で」
「何?」
「わざわざそれに踏み切ったってことは、何かまたちょっと大きなことするつもりですよね?」
んー、とテンダーは軽くなった頭に直接指を差し込みくしゃくしゃとかき回した。
「ヒドゥンさんと話してたってことは、何か次の一手のヒントが貰えたのでは?」
「そうね。発表会をするわ」
はっぴょうかい、と少女達が首を傾げた。
「いつも新しい服を着て『123』をふらふらしてもらって見てもらってるでしょ? それを舞台でやったらどうか、って。……思うんだけど」
歯切れが悪い、とポーレは思った。
「いいんじゃないですか? いずれにしても今すぐ、ということじゃないんですから」
「いいの?」
「そもそもテンダー様いちいち私に了解求めたりしないでしょうに……」
ポーレはため息をついた。
「やりたいならその方向に考えましょう。時間がそれなりにあるんでしょうし。舞台の使い方とか協力してくれる人々とか色々考えつつ、ともかく毎日の仕事もこなしたいんでしょう?」
「本当に最近どんどん容赦ないのねポーレ……」
「いつまでもこういう時間が続くとは限りませんからね」
ぽつんと言うポーレに、え、とテンダーは顔を上げた。
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