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164 次の一手を探して③舞台はここで
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「え? いや、その、服だけをここで見せる? そんなことできるんですか?」
「そらまあ、やったことは無いだろうけど、工房から出向いてドレスをサロンで見せるってのは昔からなかった?」
「うーん」
テンダーはうめく。
自分自身の周囲では無かった。
が、ヘリテージュのサロンだったらやっていたとしても雰囲気が想像できる。
自分のところとは違う、改まった場でのドレスを発注する際にある程度の形を見せていくというのなら。
「ほら、ここの作り」
ヒドゥンは奥の舞台となる部分と、花道にできる部分をつつ、と指で示す。
「俺の舞台でもこの花道の部分を使うことが多いけどな、服を見せるだけの催しなら、もっと生かせるんじゃない?」
たとえば、と彼はテーブルの上のノートを手に取ると、その上にさらさら、と舞台と花道を図に描いた。
「こちらから出てきて、そのまま花道に歩いて行く。そして」
「突き当たりで止まる?」
「そぉ。よくできました」
彼はにっと笑うとテンダーの頭をわさわさとかき回した。
「ちょ、待って下さいよ、髪が」
「ああごめん。……でもキミ、昔やってたアレ」
「え?」
「一時期キミ達、自治会の皆で髪を短くしていたことなかった?」
「ああ、ありましたね」
記憶の中からテンダーはその時の皆の姿を引っ張り出す。
「何かあの時の頭、俺はいいと思ったんだけど」
「かき回すのに?」
「まあそれもあるけど、キミの髪は短ければふわっと広がっていいかな、と思うんだけど。今も重そうだし」
「あー…… 重い、はありますねえ。私の髪、特に量があるから。何ですか、切ったとこ見てみたいですか?」
「うん」
考えさせて下さい、とテンダーはその時は言った。
だが考える時点で、半分乗り気になっているのだ。
「その気になったら例の美粧院に行けばいいよ。腕が確かな整髪師が居るから」
そう言ってヒドゥンはその美粧院の場所を彼女に告げ、その日は一人帰っていった。
テンダーはそのまま席に残った。
そしてぼんやりと彼が残した舞台と花道の構図と実際の場所を見比べたり、お茶のお代わりをしたり、ぽろ、と落ちてくる髪の首にまとわりつく感覚に色々と頭を巡らす。
確かに昔、皆で短くしたことがあった。
そしてそれが思ったより制服姿の自分達に似合っていたことを思い出す。
現在テンダーが作っている服の要素の中には制服の要素は多分にある。
やや短めの丈に頑丈な靴など、あの街を闊歩しやすい辺りなどそのものだった。
だったらどうだろう?
確かにあちこちで自分の服が着られていることは、現在この店の中でも分かる。
ただそれでも、何か今一つ。
テンダーはしばらく考えていたが、やがて席を立つと、電信を打つべく店を出た。
*
「お待ちしておりましたテンダー嬢!」
ヒドゥンが示してきた美粧院「散り花堂」は思ったより小さな店だった。
その辺り自分の店と似ている、とテンダーは親近感を持つ。
外回りを掃除していた少女は、テンダーの姿を見ると慌てて中に飛び込み、自身の師匠である美粧師リラ・サモンに取り次いだ。
「本当にいきなり電報で予約を入れてしまってすみません」
あの後、美粧院の予約のために電報を打っていた。
そして返答が夜の作業中にやってきた。
「何ですか一体」
ポーレは「散り花堂」のことまではよく知らなかったらしく、首を傾げていた。
彼女も誘おうか、とテンダーは一瞬思った。だが付き合っている男が居る現在、髪を共に切らせるのはどうだろう?
なので。
「伸びすぎて最近頭が重いから、少し切ろうと思って」
間違いではない。
ポーレははあそうですか、と何を今更、とばかりに首を傾げた。
だが、帽子の花リボン作りに手を動かす方が忙しかったので、それ以上聞いてはこなかった。
そう、嘘は言っていないのだ。
「そらまあ、やったことは無いだろうけど、工房から出向いてドレスをサロンで見せるってのは昔からなかった?」
「うーん」
テンダーはうめく。
自分自身の周囲では無かった。
が、ヘリテージュのサロンだったらやっていたとしても雰囲気が想像できる。
自分のところとは違う、改まった場でのドレスを発注する際にある程度の形を見せていくというのなら。
「ほら、ここの作り」
ヒドゥンは奥の舞台となる部分と、花道にできる部分をつつ、と指で示す。
「俺の舞台でもこの花道の部分を使うことが多いけどな、服を見せるだけの催しなら、もっと生かせるんじゃない?」
たとえば、と彼はテーブルの上のノートを手に取ると、その上にさらさら、と舞台と花道を図に描いた。
「こちらから出てきて、そのまま花道に歩いて行く。そして」
「突き当たりで止まる?」
「そぉ。よくできました」
彼はにっと笑うとテンダーの頭をわさわさとかき回した。
「ちょ、待って下さいよ、髪が」
「ああごめん。……でもキミ、昔やってたアレ」
「え?」
「一時期キミ達、自治会の皆で髪を短くしていたことなかった?」
「ああ、ありましたね」
記憶の中からテンダーはその時の皆の姿を引っ張り出す。
「何かあの時の頭、俺はいいと思ったんだけど」
「かき回すのに?」
「まあそれもあるけど、キミの髪は短ければふわっと広がっていいかな、と思うんだけど。今も重そうだし」
「あー…… 重い、はありますねえ。私の髪、特に量があるから。何ですか、切ったとこ見てみたいですか?」
「うん」
考えさせて下さい、とテンダーはその時は言った。
だが考える時点で、半分乗り気になっているのだ。
「その気になったら例の美粧院に行けばいいよ。腕が確かな整髪師が居るから」
そう言ってヒドゥンはその美粧院の場所を彼女に告げ、その日は一人帰っていった。
テンダーはそのまま席に残った。
そしてぼんやりと彼が残した舞台と花道の構図と実際の場所を見比べたり、お茶のお代わりをしたり、ぽろ、と落ちてくる髪の首にまとわりつく感覚に色々と頭を巡らす。
確かに昔、皆で短くしたことがあった。
そしてそれが思ったより制服姿の自分達に似合っていたことを思い出す。
現在テンダーが作っている服の要素の中には制服の要素は多分にある。
やや短めの丈に頑丈な靴など、あの街を闊歩しやすい辺りなどそのものだった。
だったらどうだろう?
確かにあちこちで自分の服が着られていることは、現在この店の中でも分かる。
ただそれでも、何か今一つ。
テンダーはしばらく考えていたが、やがて席を立つと、電信を打つべく店を出た。
*
「お待ちしておりましたテンダー嬢!」
ヒドゥンが示してきた美粧院「散り花堂」は思ったより小さな店だった。
その辺り自分の店と似ている、とテンダーは親近感を持つ。
外回りを掃除していた少女は、テンダーの姿を見ると慌てて中に飛び込み、自身の師匠である美粧師リラ・サモンに取り次いだ。
「本当にいきなり電報で予約を入れてしまってすみません」
あの後、美粧院の予約のために電報を打っていた。
そして返答が夜の作業中にやってきた。
「何ですか一体」
ポーレは「散り花堂」のことまではよく知らなかったらしく、首を傾げていた。
彼女も誘おうか、とテンダーは一瞬思った。だが付き合っている男が居る現在、髪を共に切らせるのはどうだろう?
なので。
「伸びすぎて最近頭が重いから、少し切ろうと思って」
間違いではない。
ポーレははあそうですか、と何を今更、とばかりに首を傾げた。
だが、帽子の花リボン作りに手を動かす方が忙しかったので、それ以上聞いてはこなかった。
そう、嘘は言っていないのだ。
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