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148 再び北西辺境領へ⑤紹介された子供達
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「型にはまらない子」と伯は言ったが、紹介されたのは既にある程度育った者達だった。
「だいたい十六、七でもう皆大人と見なされて仕事に就くのだけどね」
見たところその「大人」になるかならないか、の年頃の彼等を紹介しつつ、リューミンは説明した。
服飾関係の仕事をしたいという少女が二人。
役者になりたい少年少女が一人ずつ。そして絵を描きたいという少年が一人。
文章修行をしたいという少女が一人。
医師になりたいという少年が二人。
そして「雑誌で見た美容師という職に就きたい」という少女が一人。
「とは言ってもリューミン、医師や絵の場合向こうの学校に行かせるんでしょう?」
「ええ、それはそう。ただ、ファン先生と知り合いになることで、実際の医師の仕事についての心構えができるのではないかと思って」
「俺は基本この劇団の医者だからな…… 紹介はできると思うぜ」
「あ、そういうことでいいんでしたら、私も化粧師仲間の流れで」
「文章修行はどうでしょう…… 私からの紹介で先生にというよりは、まずはエンジュ様の雑誌社の方で知見を増やすことの方が良いのでは?」
「そうね、そっちの見習いになれるか聞いてみましょうか」
で、と二人の役者志望がじっとヒドゥンを見つめた。
「……いや、これはなあ……」
彼は珍しく困った顔をして髪をかき上げた。
「何で君等、役者になりたいの」
「……あ、あの、私歌と踊りが大好きで…… 浮かれすぎて、仕事が手に付かなくなってしまうことが多くて…… それでいつもあれこれ言われて…… お願いです、踊り子にしてください!」
「僕は皆の真似をするのや、本の中の登場人物になりきってみるのが大好きで大好きで…… でもここではそういうのは駄目だ駄目だ、と常に言われてきたんですが…… 最近よく入ってくる様になった雑誌で、演劇という世界があるのを知って……」
なるほど、と彼は二人の言い分を聞く。
「けどなあ、それだけじゃ無理だ。まずは帝都の第五高等学校や女学校の試験に受かることができるかどうか。――それは、画家になりたい君も一緒」
「あ…… はい!」
絵の上手い少年は手にしていた画帳をヒドゥンに見せる。
ぱらぱらとめくりつつ彼は軽く頷く。
「君の絵にはセンスはあるな。それに描くことが大好きって線をしてる。けど基礎ができてない。だからそういうのを身に付けるにはやっぱり学校に行った方がいい。俺だってあそこで学んだ。行くことで得るものは沢山ある。俺は君等を囲い込むことはできない。ただ時々会うだの、帝都での知り合いになることはできるけど」
テンダーは彼等の会話を聞いていて、なるほどこれが型にはまりきらない子か、と思った。
「あそこの入学試験は、ある程度の学力と、自分の得意なものがどれだけ凄いかを見せつけること。今の様におどおどしてたら話にならんし」
でもな、とヒドゥンは続けた。
「確かにここではおどおどしてしまうよな。君等そういうことが好きで好きでたまらんのだから、皆と一緒の仕事はやってられないというよりは、できないんだろ?」
少年少女は頷いた。
「だったらまあ、伯に頼んで皆が少しの間第五に入る準備期間として帝都でうちの手伝いをしてみな」
「いいんですか?!」
「うちでそのまま弟子みたいにはできないからな。ただ皆と一緒に住まわせる程度だけどな」
それで充分です、と少年少女は明るく表情を輝かせた。
*
「第五に来るのは、まあだいたいそういう奴等だしな」
夜になって皆で茶を共にしている時に、ヒドゥンは言った。
「第五に来る連中は才能も何だけどな、普通一般の勉強やら仕事にはまず向かないんだ」
「そうなんですか?」
当時テンダー程には第五と関わっていなかったリューミンは訊ねた。
「ああ。貴族でも庶民でもな。だって考えてみ、まあ衣装作りの才能はお針子と通じるな。だからまだいい。けど絵や踊りや歌は、必要とされる場が少ないし、そもそも生きてくために必要かというと」
そうではない、と彼は言い切った。
「でも、自分が生きてくためにそういうのが必要な奴ってのはやっぱり一定数居てな。第五ってのはそういう奴等の集まりだった」
そうだったの? とリューミンはテンダーの方を向いた。
「私が見た限りでは、第五の皆はともかく何かしらしてこれでもかとばかりに毎日を楽しんでいた気がしたわ」
「だろうな。俺もだけど、皆、家では結構しんどい思いしてた連中が多かったからな。だから似てるけど干渉してこない仲間が居るのに滅茶苦茶嬉しかった」
「そうね。確かにあの子達はここではきついわ」
リューミンはため息をついた。
「だいたい十六、七でもう皆大人と見なされて仕事に就くのだけどね」
見たところその「大人」になるかならないか、の年頃の彼等を紹介しつつ、リューミンは説明した。
服飾関係の仕事をしたいという少女が二人。
役者になりたい少年少女が一人ずつ。そして絵を描きたいという少年が一人。
文章修行をしたいという少女が一人。
医師になりたいという少年が二人。
そして「雑誌で見た美容師という職に就きたい」という少女が一人。
「とは言ってもリューミン、医師や絵の場合向こうの学校に行かせるんでしょう?」
「ええ、それはそう。ただ、ファン先生と知り合いになることで、実際の医師の仕事についての心構えができるのではないかと思って」
「俺は基本この劇団の医者だからな…… 紹介はできると思うぜ」
「あ、そういうことでいいんでしたら、私も化粧師仲間の流れで」
「文章修行はどうでしょう…… 私からの紹介で先生にというよりは、まずはエンジュ様の雑誌社の方で知見を増やすことの方が良いのでは?」
「そうね、そっちの見習いになれるか聞いてみましょうか」
で、と二人の役者志望がじっとヒドゥンを見つめた。
「……いや、これはなあ……」
彼は珍しく困った顔をして髪をかき上げた。
「何で君等、役者になりたいの」
「……あ、あの、私歌と踊りが大好きで…… 浮かれすぎて、仕事が手に付かなくなってしまうことが多くて…… それでいつもあれこれ言われて…… お願いです、踊り子にしてください!」
「僕は皆の真似をするのや、本の中の登場人物になりきってみるのが大好きで大好きで…… でもここではそういうのは駄目だ駄目だ、と常に言われてきたんですが…… 最近よく入ってくる様になった雑誌で、演劇という世界があるのを知って……」
なるほど、と彼は二人の言い分を聞く。
「けどなあ、それだけじゃ無理だ。まずは帝都の第五高等学校や女学校の試験に受かることができるかどうか。――それは、画家になりたい君も一緒」
「あ…… はい!」
絵の上手い少年は手にしていた画帳をヒドゥンに見せる。
ぱらぱらとめくりつつ彼は軽く頷く。
「君の絵にはセンスはあるな。それに描くことが大好きって線をしてる。けど基礎ができてない。だからそういうのを身に付けるにはやっぱり学校に行った方がいい。俺だってあそこで学んだ。行くことで得るものは沢山ある。俺は君等を囲い込むことはできない。ただ時々会うだの、帝都での知り合いになることはできるけど」
テンダーは彼等の会話を聞いていて、なるほどこれが型にはまりきらない子か、と思った。
「あそこの入学試験は、ある程度の学力と、自分の得意なものがどれだけ凄いかを見せつけること。今の様におどおどしてたら話にならんし」
でもな、とヒドゥンは続けた。
「確かにここではおどおどしてしまうよな。君等そういうことが好きで好きでたまらんのだから、皆と一緒の仕事はやってられないというよりは、できないんだろ?」
少年少女は頷いた。
「だったらまあ、伯に頼んで皆が少しの間第五に入る準備期間として帝都でうちの手伝いをしてみな」
「いいんですか?!」
「うちでそのまま弟子みたいにはできないからな。ただ皆と一緒に住まわせる程度だけどな」
それで充分です、と少年少女は明るく表情を輝かせた。
*
「第五に来るのは、まあだいたいそういう奴等だしな」
夜になって皆で茶を共にしている時に、ヒドゥンは言った。
「第五に来る連中は才能も何だけどな、普通一般の勉強やら仕事にはまず向かないんだ」
「そうなんですか?」
当時テンダー程には第五と関わっていなかったリューミンは訊ねた。
「ああ。貴族でも庶民でもな。だって考えてみ、まあ衣装作りの才能はお針子と通じるな。だからまだいい。けど絵や踊りや歌は、必要とされる場が少ないし、そもそも生きてくために必要かというと」
そうではない、と彼は言い切った。
「でも、自分が生きてくためにそういうのが必要な奴ってのはやっぱり一定数居てな。第五ってのはそういう奴等の集まりだった」
そうだったの? とリューミンはテンダーの方を向いた。
「私が見た限りでは、第五の皆はともかく何かしらしてこれでもかとばかりに毎日を楽しんでいた気がしたわ」
「だろうな。俺もだけど、皆、家では結構しんどい思いしてた連中が多かったからな。だから似てるけど干渉してこない仲間が居るのに滅茶苦茶嬉しかった」
「そうね。確かにあの子達はここではきついわ」
リューミンはため息をついた。
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