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141 さすがに元凶に話を付けに行こう④
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「じゃあシフォンは今何処に? それと、テスの乳母は何処に居るの?」
「坊ちゃまの乳母は今すぐ呼びます。嬢ちゃまの方は……」
「テンダー様、嬢ちゃまをお助け下さい!」
茶を運んできたメイドがぱっと顔を上げた。
「いきなり失礼だぞクリル!」
「いいわジョージ、そう貴女、クリル? 何でそう思うの?」
「嬢ちゃま――シフォン様は東の対で奥様に育てられているのです。乳母も一緒です。ですが、乳母がもう何人も変わっていて……」
そんな説明を彼女がしている間に、テスの乳母だという女がやってきた。
「テス坊ちゃまの乳母でナリーシャと申します。テンダー様、坊ちゃまは、坊ちゃまは大丈夫でしょうか……!」
「大丈夫だよ、坊は」
共にやってきたファン医師が言った。
「ただ坊はあの歳の貴族の子供としては栄養失調すぎるから、母親が入院したついでだ、こっちもしばらく帝都の病院で健康指導してもらうことになっている。あんたが乳母なら、そうだな、とりあえずはすぐ向かった方がいいかも」
「ありがとうございますありがとうございます!」
ナリーシャは涙を流して何度も何度もお辞儀をした。
「食事を出しても、アンジー様に次々とかすめ取られてしまって…… アンジー様がお休みになってから、坊ちゃまにはそっと厨房の方でお食事を差し上げている次第です」
「よくやってくれたわ、ありがとう。厨房なのはやっぱり、対の方ではアンジーに嗅ぎつけられてしまうから?」
「はい。シフォン様とその乳母を奥様が離さないことから、テス坊ちゃまをアンジー様は昼間は――何をする訳ではないんですが、目の届く範囲に置こうとなさっていて。お食事を別々にする訳にもいかなくて。用足しとか、その隙を見て少しでもとお菓子を差し上げても、匂いで分かってしまうのか『母様の見ていないところで何を食べたの!』とはたくくらいで…… ですので、私達は皆で力を合わせて坊ちゃまが一日何とかやっていけるだけの、それでいて消化の良いものを厨房に用意して夜になってから……」
聞いていたファン医師は黙って目をつぶり腕組みをし、タンダの目にはしっとりと涙が含まれていた。
「そう。それで、シフォンはどんな風に育てられているの?」
「可愛がられています。……昔のアンジー様のように」
「お願いですテンダー様、お二人を助けてください! 奥様のもとでは、またアンジー様の繰り返しになります!」
「無論そのつもりで来たのよ。で、子供達の父親はどうしたの?」
「……」
「正直に言っていいのよ」
では私が、とジョージが口を開く。
「若旦那様はアンジー様と喧嘩が絶えなくなった辺りで領地の館の方へ逃げ出しました。旦那様も坊ちゃまをあまりにも居ないものにしようとする奥様にさすがに…… 領地の方から戻る気配がありません」
「そう。じゃ、すぐに電報を打って頂戴。二人の子供をまともに育ててくれるところに預けたいからすぐに戻ってきて欲しい、と」
「預けるところ…… テンダー様がお引き取りになるとかではなく?」
「無理よ」
テンダーは首を横に振った。
「無責任だと言ってもいいわ。でも私には無理よ。あの子達に対しては可哀想だと思うけど、私自身、アンジーの子供だと思うとやっぱり育てるのは厳しいわ。だったら、子供を沢山育てている、きちんとした知り合いのところに預けたいと思うの」
「お知り合い、ですか…… あの、では、私もそちらに是非、坊ちゃまはまだ四つ、私は付いていたいのです」
乳母はテンダーに食い下がる。
「……ナリーシャ、貴女北西辺境領まで付いて来られる?」
「え? 北西辺境領、ですか? ……もの凄く遠いではないですか!」
「ええ。友人が辺境領伯令嬢で、沢山の子供が居るの。そこでは伯の子供だけでなく、領地の子供も、それこそ両親の居ない子供も皆一緒に育っているわ。あそこはのびのびと子供が育つには良いところだと、私自身滞在した時に思ったの。当人の了解も得ているわ。だから、聞いているの。それでもテスに付いて守りたいと思っているならば、是非付いていって欲しいわ。ナリーシャ貴女が、私にとってのフィリアであるくらいにあの子のことを愛してくれているならば」
行きます、と力強い答えがこの若い乳母から返ってきた。
「実の子が亡くなった時にちょうど乳母を探しているとあって…… それからずっとこちらでお世話になっています。アンジー様からどれだけ坊ちゃまを連れ去りたいと思ったことでしょう……」
よし、とテンダーは思った。
父親達は何とでも言いくるめよう。いや、言いくるめる。
自分の二の舞、いやそれ以下の状態にしてはいけない、と。
「坊ちゃまの乳母は今すぐ呼びます。嬢ちゃまの方は……」
「テンダー様、嬢ちゃまをお助け下さい!」
茶を運んできたメイドがぱっと顔を上げた。
「いきなり失礼だぞクリル!」
「いいわジョージ、そう貴女、クリル? 何でそう思うの?」
「嬢ちゃま――シフォン様は東の対で奥様に育てられているのです。乳母も一緒です。ですが、乳母がもう何人も変わっていて……」
そんな説明を彼女がしている間に、テスの乳母だという女がやってきた。
「テス坊ちゃまの乳母でナリーシャと申します。テンダー様、坊ちゃまは、坊ちゃまは大丈夫でしょうか……!」
「大丈夫だよ、坊は」
共にやってきたファン医師が言った。
「ただ坊はあの歳の貴族の子供としては栄養失調すぎるから、母親が入院したついでだ、こっちもしばらく帝都の病院で健康指導してもらうことになっている。あんたが乳母なら、そうだな、とりあえずはすぐ向かった方がいいかも」
「ありがとうございますありがとうございます!」
ナリーシャは涙を流して何度も何度もお辞儀をした。
「食事を出しても、アンジー様に次々とかすめ取られてしまって…… アンジー様がお休みになってから、坊ちゃまにはそっと厨房の方でお食事を差し上げている次第です」
「よくやってくれたわ、ありがとう。厨房なのはやっぱり、対の方ではアンジーに嗅ぎつけられてしまうから?」
「はい。シフォン様とその乳母を奥様が離さないことから、テス坊ちゃまをアンジー様は昼間は――何をする訳ではないんですが、目の届く範囲に置こうとなさっていて。お食事を別々にする訳にもいかなくて。用足しとか、その隙を見て少しでもとお菓子を差し上げても、匂いで分かってしまうのか『母様の見ていないところで何を食べたの!』とはたくくらいで…… ですので、私達は皆で力を合わせて坊ちゃまが一日何とかやっていけるだけの、それでいて消化の良いものを厨房に用意して夜になってから……」
聞いていたファン医師は黙って目をつぶり腕組みをし、タンダの目にはしっとりと涙が含まれていた。
「そう。それで、シフォンはどんな風に育てられているの?」
「可愛がられています。……昔のアンジー様のように」
「お願いですテンダー様、お二人を助けてください! 奥様のもとでは、またアンジー様の繰り返しになります!」
「無論そのつもりで来たのよ。で、子供達の父親はどうしたの?」
「……」
「正直に言っていいのよ」
では私が、とジョージが口を開く。
「若旦那様はアンジー様と喧嘩が絶えなくなった辺りで領地の館の方へ逃げ出しました。旦那様も坊ちゃまをあまりにも居ないものにしようとする奥様にさすがに…… 領地の方から戻る気配がありません」
「そう。じゃ、すぐに電報を打って頂戴。二人の子供をまともに育ててくれるところに預けたいからすぐに戻ってきて欲しい、と」
「預けるところ…… テンダー様がお引き取りになるとかではなく?」
「無理よ」
テンダーは首を横に振った。
「無責任だと言ってもいいわ。でも私には無理よ。あの子達に対しては可哀想だと思うけど、私自身、アンジーの子供だと思うとやっぱり育てるのは厳しいわ。だったら、子供を沢山育てている、きちんとした知り合いのところに預けたいと思うの」
「お知り合い、ですか…… あの、では、私もそちらに是非、坊ちゃまはまだ四つ、私は付いていたいのです」
乳母はテンダーに食い下がる。
「……ナリーシャ、貴女北西辺境領まで付いて来られる?」
「え? 北西辺境領、ですか? ……もの凄く遠いではないですか!」
「ええ。友人が辺境領伯令嬢で、沢山の子供が居るの。そこでは伯の子供だけでなく、領地の子供も、それこそ両親の居ない子供も皆一緒に育っているわ。あそこはのびのびと子供が育つには良いところだと、私自身滞在した時に思ったの。当人の了解も得ているわ。だから、聞いているの。それでもテスに付いて守りたいと思っているならば、是非付いていって欲しいわ。ナリーシャ貴女が、私にとってのフィリアであるくらいにあの子のことを愛してくれているならば」
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