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83 婚約者に妹が突撃する①
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アンジーは官立第四女学校の夏期休暇や冬季休暇になると戻ってきた。
私はできるだけ顔を合わせない様に、その期間は領地の辺りで過ごしていたのだが、なかなかずっとその様にはいかなかった。
アンジーが夏期休暇や冬季休暇ということは、やはり学校に行っているクライドさんも休みになるということだ。
さすがにいつもいつも用事があるとばかり言っていられない。
下手に拒否していても仕方がない。
ということで、彼の親戚方に会った後、西の対に招待することにした。
庭師もフィリアも何やら浮かれた様子でその席を用意していた。
ポーレは私の目論見を知っているので浮かれてはいなかった。
とは言え、それを顔に出す程でも無かった。
約束の日と時間に、几帳面な彼は馬車でやってきた。
私は本館の二階から彼の乗った馬車が門を通り抜けて来る様子を眺めていたのだが。
馬車の音に気付いたのか、東の対の窓から身体を乗り出す綿菓子頭が見えた。
見えたと思ったらすぐに消えたその姿は、瞬く間に東の対の出入り口から庭へと飛び出してきた。
いやもう、またいっそう足が速くなったものだ。
帝都の学校では本当によくあちこちを歩いているに違いない。
実家ということでアンジーはここぞとばかりに綺麗なドレスを身につけていた。
つまり第四の制服よりは非常に動きにくいはずなのだが……
息も荒げず、裾も乱さず、如何にも前庭を散歩していました、という体で歩くその姿は実に見事だ。
私には無理なその立ち回りに、思わず拍手したくなる思いだった。
とりあえず私は階下に下りて、客人を待つ体勢を整えた。
ジョージも、他の使用人もそのことは知っていて、西の対へ案内する準備はできていた。
だがなかなか玄関の方へ客人がやって来ない。
「ど、どうしたのでしょう」
ジョージはおそるおそる扉を開けて確認した。
そしてすぐに私の方へと向き直り。
「……あ、あれをご覧下さい」
そう言って皆で車回しの方へと足を伸ばした。
案の定、そこにたどり着く前に、妹の素早い足は我が家の門から玄関の間で馬車を止めていた。
「いらっしゃいまし! お父様かお母様のお客様でしょうか?」
また実に通る声が聞こえてきた。
それに対して馬車の中の相手がどう答えているのかまでは聞こえなかった。
「ど…… どう致しましょうか」
「まあ、ゆっくり待ちましょう」
「良いのですか?」
ジョージは私と向こうを交互に見ながら冷や汗をたらたらと流していた。
「ああいう状態のアンジーを誰が止められるっていうの? ああ、お母様は今日は?」
「特に御用事も無く。ですからアンジー様が飛び出したということは」
遠くから妹の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
母もまた、東の対から出てきた様だった。
私はできるだけ顔を合わせない様に、その期間は領地の辺りで過ごしていたのだが、なかなかずっとその様にはいかなかった。
アンジーが夏期休暇や冬季休暇ということは、やはり学校に行っているクライドさんも休みになるということだ。
さすがにいつもいつも用事があるとばかり言っていられない。
下手に拒否していても仕方がない。
ということで、彼の親戚方に会った後、西の対に招待することにした。
庭師もフィリアも何やら浮かれた様子でその席を用意していた。
ポーレは私の目論見を知っているので浮かれてはいなかった。
とは言え、それを顔に出す程でも無かった。
約束の日と時間に、几帳面な彼は馬車でやってきた。
私は本館の二階から彼の乗った馬車が門を通り抜けて来る様子を眺めていたのだが。
馬車の音に気付いたのか、東の対の窓から身体を乗り出す綿菓子頭が見えた。
見えたと思ったらすぐに消えたその姿は、瞬く間に東の対の出入り口から庭へと飛び出してきた。
いやもう、またいっそう足が速くなったものだ。
帝都の学校では本当によくあちこちを歩いているに違いない。
実家ということでアンジーはここぞとばかりに綺麗なドレスを身につけていた。
つまり第四の制服よりは非常に動きにくいはずなのだが……
息も荒げず、裾も乱さず、如何にも前庭を散歩していました、という体で歩くその姿は実に見事だ。
私には無理なその立ち回りに、思わず拍手したくなる思いだった。
とりあえず私は階下に下りて、客人を待つ体勢を整えた。
ジョージも、他の使用人もそのことは知っていて、西の対へ案内する準備はできていた。
だがなかなか玄関の方へ客人がやって来ない。
「ど、どうしたのでしょう」
ジョージはおそるおそる扉を開けて確認した。
そしてすぐに私の方へと向き直り。
「……あ、あれをご覧下さい」
そう言って皆で車回しの方へと足を伸ばした。
案の定、そこにたどり着く前に、妹の素早い足は我が家の門から玄関の間で馬車を止めていた。
「いらっしゃいまし! お父様かお母様のお客様でしょうか?」
また実に通る声が聞こえてきた。
それに対して馬車の中の相手がどう答えているのかまでは聞こえなかった。
「ど…… どう致しましょうか」
「まあ、ゆっくり待ちましょう」
「良いのですか?」
ジョージは私と向こうを交互に見ながら冷や汗をたらたらと流していた。
「ああいう状態のアンジーを誰が止められるっていうの? ああ、お母様は今日は?」
「特に御用事も無く。ですからアンジー様が飛び出したということは」
遠くから妹の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
母もまた、東の対から出てきた様だった。
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