〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩

文字の大きさ
上 下
24 / 208

23 祭りの後に少し変わったこと

しおりを挟む
 そして合同祭は、盛況のうちに終わった。
 ヒドゥンさんはもうそこいらの女を超越した美しさで、それこそ第一の女子がうっとりするやら自信を無くすやら。
 マリナさんのゆったりとした美男子ぶりには本物の男より黄色い声を上げる第一の女生徒も居たし…… 
 第五の男子も「あのひとになら抱かれたい!」「踏んでください!」などとなかなか訳の分からない声を掛けていた者も居た。
 相手が第五ということもあって、普段なら厳しい第一の教師達も仕方ないとばかりに見逃していた。
 いや、それだけではない。
 私は見た。
 第一の教師の中にもこの逆転主役達にうっとりしていた方は居たのだ。
 そしてその後。
 普段は男女問わず外との交流が無い第一女学校も、少しの出会いはあった様だった。
 脚本担当の一人となったエンジュは、脚本の形というものを教えてくれた第五の男子生徒と文通をし始めた。
 セレには第五の女子から「また今度出演して頂戴!」という手紙が沢山来た。
 当人は「やなこった」と、それでも全てに返信しているだけ律儀だ。

 ちなみに私は何故かヒロインをやっていたヒドゥンさんと手紙を交換している。
 と言うのも。
 このひとが叔母様同様「卒業は近いけど、俺結婚する気は無いなあ~」と口にしていた時、つい「そーですよね」と反応してしまったのがいけなかった。

「何で?」

と重力の無い声で聞いてくるので。

「よく分からないんで」
「何が?」
「両親が一緒に仲良くしてる姿見たのが殆ど無いんで、自分がそれで上手くやってる図が想像できないんですよね」

 そう返したのだ。
 すると。

「あー奇遇だな俺も」

とその綺麗な顔でぽん、と言った。

「え、ヒドゥンさんも無視されてたんですか?」
「も? あれ、キミもずいぶんな家に生まれたねえ」
「いや無視されてただけですがー」
「そっかだったらまだいいかもね。俺さあ、ともかく家庭教師に襲われまくっててさー。いや俺生まれつき可愛いっていうのでね」

 いやそれ笑い事じゃないでしょ、と私は言いかけてやめた。
 どうやら私の境遇も傍から見れば笑い事ではないらしい。
 のだが、当人からしたらどうなんだろう? ということは往々にしてある。
 だからこう返した。

「そーですか。まあちゃんと今元気に生きてるんならいいんじゃないですか?」

 するとヒドゥンさんはにいっ、と口元を上げた。

「キミなかなか面白いなあ」
「人のこと言えた義理ではないと思うんですが」
「いや、俺が会った中で一番面白い。だから、キミ、もし三十になっても結婚してなかったら俺としない?」

 はあ?
 思わず私は目を丸くした。

「や、俺ウチから見放されてるし。キミにはきっと縁談が来るだろうけどな。それでも何やかんやで色々おじゃんになった時になーんとなく居心地悪かったらな」
「そんなまだ遠い話を」
「うん、だから文通からよろしくー」

 そんな経緯で私には文通友達ができてしまった。
しおりを挟む
感想 209

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

蜜柑
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

処理中です...