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9 寮の生活は色んな意味で容赦が無い

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 ともかくこの寮は生活に容赦が無い。
 朝食時間が決まっているし、それまでにベッドを整え、軽く自室の掃除。
 寝坊している暇もない。
 リューミンは私より朝に強いらしく「時間!」と私を揺さぶって起こしてくれる。
 そして朝食。
 揃って食べるメニューは、私達裕福な貴族にはごく普通のものだったが、左隣のセレ・リタにとっては感涙ものだったらしい。

「嗚呼! 気がつくとパンを持ち出したい衝動にかられる!」

 部屋の並びで席が決まっているので、彼女のつぶやきが時々聞こえる。
 パン一つ取っても、彼女からしたら美味しすぎるのだそうだ。
 そしてジャムや蜂蜜がかけ放題という辺りも。
 おかげでよく入学したての頃の彼女は加減を忘れてジャムや蜂蜜をかけすぎて皿をパンで拭っては周囲から「それは駄目!」と言われたものだった。

「どうせたっぷりつけるなら、こんな風に」

 と一つのパンにこれでもかとばかりにジャムを乗せる技を示したのが、侯爵令嬢のヘリテージュだった辺り驚いた。

「甘くない焼き菓子にジャムを乗せる時の応用よ」
「こつを是非!」

 そこでまたこの二人がすんなりとその技について語るものだから私はつい笑いがこらえきれなかった。
 そう。
 第一に集う女子は、家格や身分についてさほど気にしない者が多かった。
 家格が上の者はできるだけ第一に入るために家で厳しく教えられてきた者ばかりだし、下の者ならより努力か才能が必要なことを皆知っていたのだ。
 そしてこの時代だけは、そんな色んなところから来た者達とざっくばらんにやっていけることも。
 それを理解できる要素があるからこそ、第一に集められたと言っていい。
 第三、四となると、……本当に家格別クラスを作らないといけない程らしい。
 面白いことに、そんな第一の者ほど、自室の掃除も文句を言わずにこなすのだと。

「いやどうしてもうちの兄の中で出来がいまいちなのが居てね」

 リューミンはやはり官立の男子校の方に通っていたという兄のことを話したこともある。

「当初第三に配置されちゃったのね。だけどそこの雰囲気が悪すぎたので、猛勉強して第二に編入したのよ」
「それはそれで凄いわね」
「別に実家に戻ってもいいとは言われていたんだけど、まあ、うちの辺りの風潮が『負け帰るのかお前は』だったし」

 北の人間強し、と私は思ったものだ。
 逆に南のキリューテリャの方では「駄目だったらさっさと戻ってらっしゃい」だそうだ。
 南は国境線の関係で、常に防衛に関する人材が欲しい。
 駄目ならとっとと戻ってそれ相応の訓練をするから、ということらしい。
 帝都近郊の領地住まいからすればびっくりすることだらけだった。
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