お隣まで何百メートルな地方のだらだら百合ライフ。

江戸川ばた散歩

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第64話 5/25-B やっと解除。

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「おー、全国的に解除されたな」

 メシを口にかっこみながら兄貴が言った。

「何かほっとするわー。ここいらのど田舎に何かあるとはまあ思ってなかったけど、何っっっっかどっか行っちゃいけないんだろなー、とか県越えたら空気が悪くなるんじゃないかって思いすぎでさー」
「確かに」

 時々かーさんを車で隣の県の病院に連れてくたび、そう思った。

「まあだいたい健康で喉とか悪くないなら元々いいんじゃないかとは思うけどさ」
「おかげでお義父さん煙草やめてくれたし?」

 ねーさんはかーさんに向かって言う。当の本人はまだやり残したことがあるということでビニルハウスに居る。
 ということでさらっと口に出してみた。

「ところでさー、ユクの奴と一緒に暮らそうと思うんだけど」
「へ? あんた等今も一緒に住んでるようなもんだろ?」
「まーそうなんだけど」

 かーさんの反応にねーさんが苦笑いする。アタシの言いだしたさげなことを半ば予想してるとみた。

「いやまあずっと暮らそうかなあと」
「あー」

 あー? 大きくうなづきながらのその反応に娘達も息子も嫁も皆一斉に微妙な顔をした。

「まーあんた等ならいいんじゃね?」
「いいんかよ」

 兄貴がそう言いやがる。

「いやだってお前、これが男に興味あったことあったか?」
「……ねーな」
「小ちゃい頃からユクちゃんユクちゃんで、どっちも戻ってきたらべったりで、時々とんでもない声出してるくらいだし」
「かーさん……」

 知ってたんかい、このひと。

「まあ養子縁組の籍入れる方法は知らんけど、もし保証人必要ならこっちにしときな」

 そう言って兄貴達の方を指す。

「俺等かい!?」
「悪いかい?」
「悪くはないけどさ」
「まー父さんも今っ更あんたに夢なんか持ってないけどさ、まあ一応。気がついたら向こうの籍に入ってたー、くらいにしときな。こういうの結構男親の方がショックだよ」
「ういっす……」
「けどヨツバちゃん、それもうユクちゃんに言ってあるの?」
「まだー。まあ完全に断らないとは思うけど。生活が変わる訳じゃないし」
「つかお前等相変わらずここにメシ食いに来る予定だろ」
「つか生活は変わらないし」
「そんじゃ何でわざわざ?」

 そう聞いたのはイツハだった。

「んー。やっぱあいつが今本当に一人だからさあ、何かあった時に怖いなーと思って」

 ああ、と皆うなづいた。
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