お隣まで何百メートルな地方のだらだら百合ライフ。

江戸川ばた散歩

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第53話 5/12-A ミステリが最初から読めない理由

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「いやーだって、先に犯人が分かってた方が安心して読めるし」

 言うが早いが、にーさんは「いかーん!」と珍しく拳を握って力説しだした。

「事件の謎を探偵達と一緒に考えながら追っていって、自分も推理してくんだよ! そこがいいんじゃねえか!」
「えーそう言われても」
「あかんわこいつはミステリーとホラーは映画でもびっくりするのが嫌で映画館じゃ見ようとせんし」

 そう。だからこいつがホラーを観に映画館に付き合わせようとする時には、断固拒否する。基本はびっくりするのが嫌なのだ。

「え、だってお化け屋敷系平気でしょ?」

 ねーさんも聞いてくる。

「だってあれはネタがあるものって判ってるじゃん」
「まーこいつも古畑とかコロンボなら好きって言うんだから許してやってー」

 何となく不服。だけどしゃーない。ともかくワタシは筋が好きなだけで、別に一緒に謎解こうなんて考えることができないんだし。だから「理由」な倒叙形式は好きなんだ。
 研究とかで謎を見つけてそれを解いて~というか、推論を立てるのは好きだよ? そりゃ研究なんだから答えは出ないんだけど。でも自分にとっての「これ」は出るじゃん。

「にーさんは一緒に推理しようとしてるってことは、ミステリ読んで絵が浮かぶんだよね?」
「は? そらそーだろ」
「だからだよー」

 これがまたワタシの滅茶苦茶苦手なとこで。
 ミステリは無論、ある程度読者を誘導する様に作られてはいるんだよな。特に売れる様なものは。そんで無論、「そうきたかああああ」というのも、そこまで「想像させる」からなんだろーけど。残念ながらワタシにはその絵が浮かばないんだよなあ……
 だから筋しか追えないし、筋しか楽しめないってことなんだけど。
 研究対象が古典だったのもそのせいだろなー。
 国語国文学を学びたかったけど、研究となると、近代以降のものってのは何かワタシの思うとこの研究とは違って「どれだけそれっぽい感想文が書けるか」ばっかりやってるようだったもの。
 だから古典の方に走って、文章表現とか文化とかそっちの方がワタシの思うとこの課題と推論を出すの判りやすかったんだよな。

「ねーそんで、枕草子ってどういうの?」

 しまったそもそもそこだった。

「……平安時代の『これが好きあれが好き!』や『こんなことがあったの!』を宮中につとめてた女の人が書いたもんだよ」

 間違ってはいないと思う。
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