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第50話 5/10-B 日焼けの季節

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「見てよぉぉぉぉぉぉ」

 そう言いながら奴が傘さして離れにやってきて、ずいっ、と手の甲を見せてくる。

「おお、真っ赤になってるのー。見事な細かいぶつぶつ」
「とうとうこの季節が来ました」
「遅くね?」
「や、陽が出ている時には隠してたんだよ。昨日曇りだったんで油断した……」

 こいつは紫外線過敏症を持ってる。小さい頃からやたら肩こりとかで貼ってた湿布のせいなのか、単にアレルギーなのかは知らないが、まあこの時期になるとそう言って泣きついてくる。

「だったらいい加減日焼け止めちゃんと使えよ」
「あのぬるぬるとてらてらが嫌でさあ」

 まあそれは判る。そもそも紫外線反射する様にできてるんだから、てらてらするのは仕方ないだろ。
 アタシはともかく焼けるに任せる。そのうちむけるが、かゆくはならないし。

「どれ。見せてみ」

 そう言いながらよいしょ、と来ていたすっぽりかぶる上着を勢いよく抜く。

「垂れるからブラつけろとあれほど」
「でかけないからいいじゃん」

 むむ。首周りに沿ってぶつぶつがやっぱりできてる。

「仕方ねえなー。軟膏出しな」
「ほい」

 ちゃんと持ってきてる辺りなー。髪をかき上げてみると、うなじも結構やられてる。言っておくが何ってことないオロナインだ! 特別な薬じゃねえぞ。
 だいたい何でこれは良くて、UVカットのローションは嫌なんだ?

「いや、普通は服で隠すからいいじゃん」
「その服がコットン一枚では足りなくてかゆがってたのは誰だよ」

 言いながらアタシはこいつのうなじから肩にかけてぬりぬり。
 ま、この辺りにかかってるならブラしてくるのが面倒だというのは判らないでもない。
 なんだが、アタシはこいつの丸い胸が好きなんだよー。どうせいつかお互い垂れるのは判ってるけどよ、それまではこのとんがらない丸みを愛でさせて欲しいんだけどー。

「おい何処まで塗ってんだよ」
「はっつい考え事してたら指が自然にっ」

 その胸の方までぬりぬりしていたじゃんか。どうせならとそのままちくびも指の関節で挟んでくりくり。むむむ、と堪える顔もええのぅ。

「そっちはもういいから! 腕も見てよ!」
「腕」
「ほら!」

 確かにこれは酷いわ。

「つかお前多少はかきむしずにいられない?」
「仕方ないじゃん。皮膚の下からむすむすする感じなんだもの」
「むすむす」
「おめーそんなこと無いんか?」
「残念だが、無い」

 現実とは、斯くも非情だ。
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