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第33話 4/27-A 竹やぶ

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 マスクやっとできたー! しかも三枚ー!
 ちくしょー絶対縫う作業手伝ってくれなかったぜあいつぁー!
 いやもう昔っからそうだった。小学校でも中学校でも家庭科の時、ミシン作業が手間取って残らざるを得なかった時も、横で見ててくれるけど絶対に代わりはしてくれなかったものなー!
 ミシンはあまり好きじゃねえとか言ってるけど、動かせばできるってことワタシは知ってるんだせえ!
 とか何とか眠い目をこすりながらのたのたしていたら、離れに奴が戻ってきた。

「竹採りに行くけど来る?」
「え、行くの?」
「まあだいたい注文のは済んだし。竹藪の状態も見たいし。ここんとこ雨と一緒に風酷かったじゃん。あれで結構ばきばきやられてるからなあ」

 ふう、と奴はため息をつく。まあ確かに。時々見に行くけど、選ぶ時の目は厳しいんだよな。真っ直ぐであるか、下手に傷ついて茶色くなっていないか、節が出っ張っていないか。とかとかとか。

「行く行く。でもだいじょーぶ? 結構地盤が緩んでね?」
「うん、その辺りも見たくてさ。来るなら滑らない靴でな」
「へいよっ」

 ワタシはそう言って一旦戻った。裏山なんだけど、採る時には数本なんで軽トラに乗ってく。

「一本なら持って来れないことないんだけどさ」
「いやワタシにゃ無理だ」
「まーそうだな、お前のその腕じゃ」

 ひょい、と取るワタシの腕には筋肉が実に少ない。ぱちぱちキーボードを叩くばかりの手だから仕方ない。
 奴の手は固くて筋肉がついていて、傷を治した跡ばかりだ。
 軽トラに乗って行くと言っても、すぐそこだ。ただ藪の中の道には入っていけないので、道の端に止めて。
 背負ってる袋には滑り止めのついた手袋と鉈と鋸。

「今日はねーさんから頼まれた籠用だから、ざっくり採ってく」
「いいの?」
「うん。ウチのが壊れそうだから、ってことだから早く作ることのほうが大事」

 そーいうもんか。
 それにしても竹藪というか竹林というか、その中に風が吹くと本当にかちかちかちかちと音が凄い。

「いい音してますなあ」
「倒れてなけりゃいいんだけどな」

 ここは冗談の通じないところだったらしい。
 太さとか節の長さを見ながら奴はこれ、と決めた竹を切って行く―――んだが、かなり下の方で鉈を振るっている。

「切った後をちゃんと腐らせないと、次のが出てこれない」

ということで、できるだけその切った後の部分を蹴散らせる程度に刃を入れるとか。
 いやもうこういう時には何も言えんわ。惚れ直すぜ。
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