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第31話 4/26-A マスクを作ろう

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「という訳でマスクを作ろう」
「という訳って何じゃい」

 という訳で今現在居るのは奴の離れでずらずらと布と裁縫道具を座卓の上に並べられてしまっている。

「型紙はねーさんにもらってきた。一応一つ作ってもみた」
「……う、お前器用じゃんか…… 手縫いでこれかよ」

 結局空色に白い糸でステッチする感じで縫ってみたという。悪くないと思う。

「あれ、これ耳にかけるタイプじゃないんだ」
「あー。うん。昔っからホムセンでも頭かぶりの奴買ってたんだよな。工場用だわ。別府に居た時に、時々バイトに行った時があってさ、そういう時に覚えた」
「へー」

 ちょっといい? と聞いてかぶってみる。確かに楽かもしれない。
 耳にかけるのが「両側」にゴムがつく様になってるのと違って、四角形の長辺の端と端にゴムがついてる。少し長めのゴムが必要らしい。

「何で工場で?」
「工場ってのは、男も女も小さいひともでかいひとも居たからねー。皆に適当に配らなくちゃならないから、こういうのが良かったんだよ。アタシもこの方が耳が痛くならないし、メシ食う時だけ下げるとしても、ずりさげればいいだけだし」
「へー」
「ということでこれで作ることにする」
「作ってくれるんじゃないんかよー、お前ワタシが小学校の時からの不器用だって知ってるだろに」
 
 自慢じゃないが、家庭科は小学校の頃から常に「がんばりましょう」とか「2」とかばかりだ。うちの母親は肩代わりしてくれるひとではなかったし。

「たまにはいーだろ。共同作業」
「こういう時に使う言葉じゃねー」

 そう言いつつも、ともかくこーやってこーやって、とべたべた接触しているんだから我々も何とやらだ。

「上手く糸が通らないー」
「こっちの針使いな」

 穴の端がちょっとだけ開いている針。お、確かにこれだと糸を滑らせれば入る。
 奴は何か糸通しを使っているらしいが。

「何お前、そんないいもの使って」
「おめーに使わせたら壊すだろ。つかアタシでも時々引っ張りすぎて壊す。今これ一つしかねーんだ。ダメ。その代わりそのラクラク針はどんだけ使ってもいい」

 そう言ってパックごと渡してくれたぜ…… 喜んでいいのか何なのか。

「波縫いでいいよー」
「なみぬいって何だっけ」

 このテンポで果たして我々は今日どれだけのマスクを作ることができるのだろうか!
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