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第20話 4/21-B 寒天とゼリー

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「ねーさんは何で牛乳寒天の方が好き?」

 ふと気になって聞いてみた。

「え? 美味しいじゃない」
「ミルクゼリーより?」
「うーん」

 義姉さんは料理が上手い。というか手際がいい。それこそ蒸しパンだのプリンだの、一気に沢山できるもののレパートリーが広い。もの凄く助かってる。

「やー、その代わりヨツバちゃんの様には力無いからね」

 あはは、と笑ってアタシの前にその牛乳寒天を置いた。
 ミルクゼリーとの違いはやっぱり舌触りだ。歯応えだ。
 それとスプーンで取る時の感触。
 寒天がさくっ、ふるふるっ、ほろり、という感じだとすれば、ゼリーはぷぬっ、ぷるぷるっ、ぷるり、とつけたくなる。

「まー、昔よりずいぶん作るの楽になったなー」
「? 粉溶かしてその中に牛乳と砂糖だよね?」
「いやー、あたしの小さい時はうちのおかんが棒寒天使うひとだったんだよねえ」
「棒寒天?」
「スーパーでさ、乾物のとこに無え? 半透明でかさかさした感じの……」
「ごめん覚えてない」

 まあそんなものだよね、とねーさんはうなづく。

「いちいち寒天を水につけてふやかす手間が要るんだよね。あ、ゼラチンもクックゼラチンみたいのじゃなければ今でもふやかすんだよ。時間は寒天ほどじゃないけど。でも今じゃ寒天のもと自体が粉の簡単な奴出ててさー。んで、寒天でもゼリーの様な感触に近いものもできてさー。うーんだから何っていうか、あたしにとって慣れ親しんだ味なんだよね。あのさっぱり感は」
「なるほど」
「……ってお義母さん、作らなかったっけ?」

 こそっ、とねーさんは声を潜めた。

「蒸しパンはよく作ったよ。あとその『ポットのお湯で溶ける』寒天ゼリーはね。何せウチきょうだい多かったしさ」
「たーしかに」
「そのうえ時々あいつが来るし」
「逆はなかったの? ユクちゃんとこは」
「あそこのおかーさんは何というか、紅茶にクッキーのひとだったんだよなあ……」
「作らないひとだったんだあ」
「作らない訳じゃないんだけど、何かこだわりがあるらしくって。蒸しパンだったら普通にホットケーキミックスでやればいいじゃん、ってアタシなんか思うんだけどさ、いち黄身白身分けて泡立てて作った生地を蒸すんだよね」
「……それシフォンケーキの作り方と違う?」
「そのへんはわかんね。ただウチの蒸しパンと味は違うなー、とは思ったけど。でもその都度腕が痛そうだったよ」
「……ハンドミキサー使ってなかったの?」
「だからこだわるひとだったんだってば……」
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